終わらない夏祭り⑱
「では、術を解きますね。」
剣人はパチン、と指を鳴らした。
すると瞬きした次の瞬間には縁日の世界に戻っていた。
「よかった。本当に戻れたんだ。」
茉莉花は胸を撫で下ろす。
「……安心している場合じゃないですよ。」
「え?」
剣人の言葉に茉莉花は慌てて周りを見る。
どうやら、周りを縁日で楽しんでいた妖怪たちに取り囲まれてしまっていたようだ。
「マサカ、アイツガ、シクジルトハナ。」
「シンニュウシャハ、ワタシタチデ、ハイジョ、シナイト。」
アイツっていうのは、紳士の妖怪のことか。
やはり、さっきの紳士を含め、縁日の中にいる妖怪達は、ルネ様によって侵入者排除のために連れてこられた妖怪たちなのだろう。
しかし、どうしようか。
周りにいる妖怪は全部で数十体。
瑠璃の目で対応していてもキリがないし、たぶん頭痛の方で先に自分の限界が来る。
「僕に任せてください。」
「え、1人で勝てるの…?」
剣人が茉莉花の前にさっと立つ。
「やってみせます。あなたには助けていただいた恩がありますから。」
剣人はそう言うと、バチバチと青く光る刀を作り出した。
たぶん、陰陽師が陽の気で武器を作り出すやつの陰の気バージョンだ。
彼はその刀を武士のようにピシッと構えた。
「ふぅ……。」
剣人が息を吐いた次の瞬間、四方八方から妖怪達が飛びかかってきた。
彼は全く動じず、近づいてきた妖怪の攻撃を華麗に避け、順番に切りつけていった。
しかし、妖怪達も負けじと剣人の死角を狙い、回りこむ。
「危な……」
茉莉花は危険を知らせようとしたが、言い終わる前に、死角にいる敵もあっさり排除してしまった。
背中に目でもついてるんだろうか。
とにかく強い……。
……
…………
………………
「これで最後です、ね!」
剣人は言い終わると同時に最後に残った妖怪の核を破壊した。
「……お、お疲れ様です。」
茉莉花はとりあえず感嘆の拍手をおくった。
彼はとりあえず安堵した様子で、刀を体に吸収した。
「なんとかなってよかったです。では、このあとは……」
「!!!剣人さん!後ろ!」
茉莉花はとっさに大声をだした。
完全に気が緩んだ剣人の背後に、やられたフリをしていた妖怪が急に襲いかかってきていたのだ。
「くっ、まだ残って…!」
剣人はあまりに咄嗟な出来事だったため何も対抗できなくなり、目をつぶり、受け身の姿勢をとった。
「…………。な、なぜ?」
だが、予想された衝撃は数秒経っても感じられなかった。
彼がゆっくり目を開けると…
「ま、茉莉花さん!?」
そこには、大きな陰の気の壁を瑠璃の目で作り出した茉莉花が立っていた。
「だ、だい、大丈夫で、すか……。」
「そういう貴方こそ!体が痙攣してます!」
顔も真っ青で、具合が悪いのは一目でわかる。
「頭がすごく痛、くて、す、すみませ…」
そう言うと茉莉花はばたりと地面に倒れた。
そして同時に陰の気の壁も形を保てなくなり、スっと茉莉花の体へと戻っていった。




