終わらない夏祭り⑮
新聞の内容をまとめると、こうだ。
御堂理斗には玲奈という姉がいた。
3年前の11月、彼らは突如姿を消した。そして3日後に理斗は重症で、玲奈は遺体で発見された。
……そして、事件の手がかりは一切無し。
これは勘だが、きっと鬼門院が関わっているのだろう。
御堂くんと初めて出会った時、鬼門院というだけで酷く私を毛嫌いしていた。
成瀬先輩を含め、殺意のこもった目で見られたものだから、妖魔師に家族でも殺されたのか、と思ったものだが……おそらく本当にそうなんだろう。
「……。では、この2つの記事をください。」
茉莉花は両親の記事と、御堂姉弟の記事を買うことにした。
「そうだねぇ。どっちも売りたいのはやまやまなんだけど、お嬢さんじゃ1つしか買えないみたいだからねぇ。」
紳士の妖怪は腕組みをする。
「え、、もしかして、かなり高い感じですか?じゃあ、こっちの方ください。」
誰にもお土産なんて買う気もないし、宿泊代、交通費代を除けば少ししかお金持ってないからなぁ。
とりあえず、御堂姉弟の方を貰っとこう。両親の記事はあまり情報を得られなかったし。
「いやいや、取引としてお金は頂いていないよ。……貰っているのは”命”だからね。」
突如、彼の雰囲気が豹変した。
「……はい?」
たじろいだ様子の茉莉花を見て、楽しそうに紳士の妖怪は近づいてくる。
「いやぁ、命は1つしかないからねぇ〜。」
茉莉花は後ずさりしたが、すぐに壁にぶつかった。
「まだ若いお嬢さんを手にかけるのは心苦しいんだけどね。これも主の命令なんですよ。」
「や、やめてくださいよ!死にたくないです。」
「ははは、すまないね!」
「嫌っ!!!」
そう言っても彼は全く静止せず、茉莉花の首に手をのばした。
「…………なーんてね?」
ギリギリまで紳士の妖怪が近づいた瞬間、茉莉花は瑠璃の目を使い、陰の気を鋭く尖らせた。
「……ぎゃっ!」
真っ黒な陰の気は妖怪の腹部を貫いた。
「助かりました、近づいてくれて。おかげで狙いがさだめやすかったです。」
陰の気を緻密にコントロールすればするほど、頭痛は酷くなるから、少しでも距離があると困るんだよなぁ。
「き、貴様…!瑠璃の目を持っているのか!?何者だ!」
彼は膝をついて、体を震わせた。
「それはこっちのセリフですよ。ってか、キャラぶれてません?紳士キャラどこいったんですか。」
「…………私が敵である事に最初から気づいていたのか?」
「そりゃね、警戒はしてましたよ。この世界にいる妖怪が親切なはずないでしょう?だってこの世界は作られたもの。じゃあ、この世界に存在する妖怪は元の世界から来たということ。そんなことできるのはルネ様に認められた妖怪だけ。」
「……。」
どうやら図星みたいだ。
「それと、少し気になったことがありまして…新聞を読んでいる時に、あなたの事を瑠璃の目で観察してみたんです。すると、不思議なことに気がつきました。なぜか、あなたの体には陰の気が濃い所が2つあった。」
妖怪を瑠璃の目で通して視ると、必ず陰の気が濃い場所が1つある。
これは、妖怪の核ともいえる構成要素、死者の魂だ。
それが2つ、存在するということは…。
「あなたは、その体の持ち主ではない。持ち主の体を乗っ取っている。……違いますか?」
茉莉花は鋭い視線を紳士の妖怪に送った。




