終わらない夏祭り⑫
一行は見晴らしの良い高台へ場所を変えた。
こうして世界を一望すると、異世界に来たことがヒシヒシと感じられる。
なぜなら、この世界は果てしなく屋台や提灯が並んでいて、まるで終わりのない縁日の世界だったからだ。
茉莉花は移動中に考えた作戦を2人に提案することにした。
「まず、一旦状況を整理するね。私たちの1番の目標は生贄、そして奴隷になった人々の解放をすること。…だから、ルネ様とやらとの戦闘は二の次よ。わかった?」
茉莉花と陽太は御堂くんを見る。
「……わかってますよ!しかし、どうやって元の世界に戻るつもりなんですか。」
「それはね…剣人を探すの。」
「でも、彼はこの世界の主ではなかったんですよね。」
「うん。そうだけど、こんな世界を作り出せるのは鬼しかいないでしょ。」
「それはそうですけど…。陽太さんは男の鬼とかみたことあります?…というか、そもそも妖怪なんて視えるんですかね?」
御堂くんが聞くと、陽太は顎に手を当てた。
「こんな環境にいるもんだから、最近妖怪は視えるようになったよ。それまでは妖怪なんて空想上の生き物だと思っていたけど。でも、うーん……鬼なんてみたことないなぁ。」
「そうですか。仮にいるといても、探すのに苦労しそうですね。」
「まあ、瑠璃の目もあるし、それは私が探すよ。この世界に関与している以上、この世界のどこかにはいるはず。見つけて出口を聞き出したいところだね。だから御堂くんは、私が探している間にお城の方へ行って欲しい。」
「……はあ、別にいいですけど。元々そうするつもりでしたし。」
「…………あのー、それでですね、いきなり乗り込むよりは、少し動向を伺った方がいいと、思うんですよね…?だから、その、1度奴隷として潜入してもらえないでしょうか、、」
茉莉花は御堂くんの様子をチラチラ見ながらお願いした。
「奴隷に!?アンタ、さっきの話を聞いておいて、よくそんな酷いこと言えますね!」
御堂くんは茉莉花を睨んだ。
「も、申し訳ないと思ってる…。本当は私が年上としてそっちの危険な方をやるべきなんだろうけど…。私じゃ、おそらく奴隷になる条件を満たせない。」
「俺もそう思う。気持ち悪いことに、ルネ様は20歳前後の容姿の整った男子ばかりを引き抜いている。間違いなく理斗なら彼女に選ばれるんじゃねえかな。」
陽太が茉莉花をフォローする。
「…………。はいはい、やればいいんでしょ。…………ですが、僕に屈辱的なことをさせるんですから、絶対あなたは自分の仕事をしてくださいよ。なにも進展しなかった、なんて聞いたあかつきには即、首を掻っ切ってやりますから。」
こ、怖い…。しかし、別の案を散々考えたけど何も浮かばなかったのだ。
もう覚悟を決めるしかない。
「うん。全力で頑張るから。……御堂くんも気をつけて。」
「ふん、意地でも死んだりしませんから。もう行きますね。」
そう言い、彼は高台から坂を下って、城へと向かいだした。
「陽太、……御堂くんをお願い。」
心配そうに御堂を見送る茉莉花に、陽太は笑いかけた。
「大丈夫だ、俺が理斗のことを守るからさ。……茉莉花も死ぬなよ。縁日は妖怪のたまり場になってるからな。」
「うん。ありがとう。」
茉莉花は延々と広がる縁日の世界を再び見下ろし、ゴクリと唾を飲み込んだ。




