死のカウントダウンは突然に⑩
「ふぁぁぁ……。」
茉莉花はあくびをして、涙を拭う。
かなり眠いが、ホームルームを行う大山先生の目の前で寝ることは出来ない。
まだまだ夏休み、だけど今日は登校日だ。
さすがに授業はないが、半月放置された教室を掃除したり、ホームルームで宿題の回答をもらったりしなくてはいけない、なんとも面倒な日である。
……ちなみに今日は、色々あったあの日からもう3日たっている。
茉莉花は鬼門院のことや、青く光る目についてなどなど、疑問に思うことが多すぎて、しばらくモヤモヤしていた。
しかし、モヤモヤしていた所で解決する方法なんて無い。だから、とりあえず全て忘れるためにシリーズ物の本を買った。
……それがもう、どタイプの小説でどハマりしてしまい、連日の徹夜で読みきった。
茉莉花はそれで今、寝そうになりながら、大山先生のどうでも良い夏休みの思い出話を聞くはめになったのである。
「それでさ、先生、プールで姪っ子と…………そしたら、姪っ子が……えてさ、さすがに……て…………たよ。…………だった………………ね。……………………………………。」
まずい。予想以上に先生の話が退屈で眠気を誘う。
頑張っては…いるが、意識、がなく…な……。
………………………………………………。
……茉莉花はとうとう、深い眠りについてしまった。
……。
…………。
………………。
……ここは、どこだっけ?
辺りは見渡す限りの大草原。
木も建物もなんにも無い。
……この景色、何だかすごく見覚えがある。
「もしかして…天音輪道鬼と出会った場所…?」
茉莉花は独り言を呟く。
「そうだよ、久しぶり〜」
「わっ!?」
後ろにはいつの間にか、二本角の中性的な顔立ちの妖怪、天音輪道鬼がいた。
着物もダボッとしたものを着ているため、体のシルエットがわからず、男性か女性か見分けがつかない。
天音輪道鬼は茉莉花にゆっくりと歩いて近づいた。
「もー。茉莉花ったら、全然寝てくれなくて困っちゃうよ。せっかく早く夢に介入して、茉莉花が気になってるギモンを解決してあげようと思ったのに。……例えば青い目について、とか?」
茉莉花の眉がピクリと動く。
「青い目……。」
「茉莉花にはいろいろと期待してたけど、まさかあの目を発現するなんてね〜。嬉しくなって、いろいろ手助けしちゃったよ。」
そういえば、先日は謎の声に陰の気を視る方法を教えてもらったな。
「やっぱり、あの時、私にだけ聞こえてた声ってあなたの声だったのね…。この夢の介入にしても、その声にしても、どんな術を使ってんだか。」
「別に大した術じゃないよ。5000年くらい生きれば、どんな妖怪も習得できる術さ。」
「5000年って……。あなたいったい何年生きてるんですか。」
どうせ適当な冗談だろう、と茉莉花は思っていた。しかし、帰ってきた返答は思いもよらない数字だった。
「この前、10000年たったところ。いやぁ、ほんと長く生きたもんだよ。」
「いち、まん、ねん!?」
えーっと、10000年前といえば、縄文時代の中でもまあまあ初期の時代だ。ムラができて、狩りや採集をしていた、あの想像もつかないような時代から今日まで、ずっと生きてきたっていうの!?
「そんな長く生きてきて、辛くないの?」
茉莉花がその質問をすると、天音輪道鬼はヘラヘラした雰囲気のまま、答えた。
「そりゃあ、死ねるものならとっとと死にたいさ。……だから、茉莉花を妖怪にするんだよ。」
「…………は?」
茉莉花は戸惑って、動けなくなった。




