死のカウントダウンは突然に⑦
「…………………………?」
あれ?死んだ?私。
それにしては、、、どこも痛くない。
茉莉花はおそるおそる目を開ける。
目の前には光る刀を構えた、黒髪の青年の背中。
「……潤!?」
みやびから話を聞いて、もうここまでたどりついたのか。
「怪我はないか?」
「う、うん。だいじょうぶ…。」
茉莉花がそう言うと、潤はホッとした表情になった。
「そうか。……状況を教えてくれ。」
「うん。細かいことは後で話すとして、とりあえず今は、あの妖怪を倒すことに集中してほしい。そうすれば、みやびは助かる。」
「了解。」
潤は頷くと、煙丸の方へ走る。
「はーぁ。めんどくさい奴が増えてんなぁ。」
煙丸は次々と槍を生みだし、潤の方へ投げつける。
潤は冷静に避けれる槍は避け、避けられない分は刀でバッサリ切り捨てる。
槍のスピードはもの凄く速いのに、寸分のくるいなく避けたり、切ったりできるなんて、やっぱ潤はすごい。
潤は煙丸まであっという間に距離を縮めてしまった。
「ちっ…。なかなかの実力者かぁ。…………でも嬉しいなぁ。そんな奴を今から殺せるなんて!」
煙丸は不気味なほどニヤニヤと笑っている。
なんだか、胸騒ぎがする…。
潤が刀の間合いに煙丸を入れる直前の事だった。
煙丸は突然槍を、天井へ投げたのだった。
「……!」
ミシ…ミシ……ゴゴゴゴゴ…………
やばい。天井には大きな亀裂がはいり、建物がとんでもない音をたてている。
まさか、煙丸はマンションを崩壊させるつもりなの!?
「ふっ……。鬼門院茉莉花。俺はホトンド、君の仮説通りだって言っただろ?君の推理の間違っている点は、たった1つ。俺が消したかった人物は小野百合と死印の対象者…だけじゃない。小野百合を追ってきた陰陽師達もまとめて殺っちゃおう!って魂胆だったんだよねぇ。」
「!」
最悪だ。そこまで頭がまわらなかった。
茉莉花がガックリと肩を落とす。
「ま、どのみち、ねーちゃんには不幸な未来しかないと思うよ?あの人のムスメだし。…じゃ、さよーならー。」
煙丸はそう言うと、煙となって消えていった。
「……。」
マンションはすでに瓦礫がドカドカと降りだしている。
「茉莉花!!!」
茉莉花が呆然としていると、突如、腕が掴まれる。
「走れば間に合う!出口まで何も考えないで走るぞ!」
「う、うん…。でも、小野さんが…。」
「大丈夫です!はやく走ってください!」
出口の向こうには小野さんを上に乗せたハクの姿があった。
「行くぞ!」
潤が茉莉花の手を引っ張って走る。
そして、出口に2人で思いっきり飛び込んだ。
ズザザザザザ……!
潤が茉莉花を抱きしめ、地面に滑り込む。
ガタガタガタガタ!!!
その瞬間、出入口は瓦礫に埋もれ、その十数秒後、マンションも跡形もなく崩れてしまった。
もうダメかと思ったけど、なんとか生還したみたいだ。
安堵した瞬間、茉莉花は自分の置かれた状況に動揺せざるをえなくなった。
自分のわずか5センチ先に潤の顔があって、体のところどころは完璧に密着している。
「……あっ、、え…えっ!?」
「あ…す、す、すまない!」
潤は慌てて、茉莉花から離れ、立ち上がった。
潤の顔は今まで見たことがないくらい真っ赤だ。
ドッドッドッ……
し、心臓の音がうるさい。きっと私も潤に負けてないくらい顔が真っ赤になっている気がする。まるで、ときめいてるみたいに。
……違う。違う。これは吊り橋効果だ。
さっき、死にそうな体験をしたから、脳が勘違いをしているに違いない。
というか、異性とこの距離で見つめあったら、そりゃあ、恥ずかしくもなるよね!?
これは生理現象にすぎない。落ち着け…。
「すぅ……、はぁ……。」
茉莉花はとりあえず深呼吸をして、頭を落ち着けつつ、ゆっくり立ち上がった。
「潤、ありがとう。おかげで助かった。」
「あ、ああ……。」
「でも、逃がしちゃったね……。」
「……。」
煙丸は煙と共に消え、どこに行ったのかわからない。
「みやび、大丈夫かな?」
あと、どれくらい猶予があるのか。それだけでも知っておきたい。
「みやびは月城に任せてる。…とりあえず、電話をかけてみるか。」
潤はスマートフォンを取り出し、電話をかけた。




