死のカウントダウンは突然に⑤
「どっちに行ったの…?」
茉莉花の現在地は学校の校門前。
小野さんの姿はとっくに見失ってしまった。
「ハク。」
鬼火の中から白いキツネが現れる。
「はい。茉莉花様。」
「小野さんを追いたいんだけど、なんか方法ない?」
「小野さん…ですか?まぁ、彼女の陰の気は独特なので、恐らく辿ることはできると思いますけど。」
「じゃあ、今すぐ追って!事情は走りながら説明するから!」
「は、はい!」
茉莉花の気迫に押され、とりあえずハクは走り出した。
「……なるほど。そんなことが。しかし、意外ですね。茉莉花様は他人に無関心な方だと思っていましたが。まさか、こんなに必死になられるなんて。」
ハクの言葉に茉莉花は一瞬動揺した。
確かに。陰陽師の誰が死のうと自分にはまるで関係のない話じゃないか。
面倒事には関わらない、というのが茉莉花の座右の銘である。
しかし、今の自分は誰かのために自ら面倒事に首を突っ込んでいる状況だ。
普段ならこんなことゴメンだけど…。
「私さ、久しぶりだったんだよね。友達ができたの。」
出会い方は最悪だったけど。
「みやびは他人じゃない。理由はそれだけ。」
「……そうですか。陰陽師っていうのが少しアレですが、お友達ができて何よりです。」
なんだか、つい小っ恥ずかしいことを言ってしまった気がして茉莉花は頬を赤くする。
「そ、そんなことより!煙丸についてどう思う?」
「……。まぁ、怪しいですよね。何を企んでいるのかわからないですし。」
「そうなの。小野さんの目的はわかりやすいんだよね。陰陽師を殺すこと。死印をつけて間接的な殺害を狙う理由も恐らく、警察とかが介入できないようにする為だと思う。」
「ですね。」
「でも、煙丸は私達に死印を解除する方法を教えた。しかも、その方法は契約相手である小野さんの命を危険にさらす行為になる。」
「つまり、煙丸氏の魂胆は小野氏を殺すということですかね。」
「そういうことかねぇ………………はっ!」
「何かわかったんですか?」
「うん、、、あくまで仮説だから、なんの根拠もないんだけど、一応、辻褄のあう説を思いついた。」
「時々思いますが…さすが鬼門院の血筋ですね、茉莉花様。鬼門院の人は賢い人間が多いと聞きますし。」
「うーん。そうなのかねぇ。」
正直、鬼門院の血筋で得をしたことなんて1度もなかったからか、全く嬉しくない。
そういえば、煙丸はお父さんのことを知っていたんだよね。果たして鬼門院ともどう関係しているのか。謎は深まるばかりだ。
しばらく走っていると、急にハクが止まった。
「茉莉花様!小野氏の陰の気が濃くなりました!おそらく、あの建物にいるかと。」
茉莉花とハクの視線の先には、小野さんと初めて会ったあのマンションがあった。
前来た時よりも、取り壊し作業が進んでおり、立ち入るのも危険な感じがする。
「まーたここか。」
「……危なそうですけど、本当に入るんですか?」
「みやびの命がかかっているからね。」
今、みやびの死印がどれだけ残っているのかわからない。一刻も早く何とかしないと。
茉莉花は躊躇なく、マンションの入口へ再び踏み入れた。




