死のカウントダウンは突然に④
「死印をつけた人を殺す……?」
つまり、小野さんが命を落とせば、みやびは助かるということか。そんなこと実行するかどうかは別問題として、無いよりはマシな情報である。
…しかし、この鬼の言うことが信用できるとは思えない。
「……あなたは何者なの?小野さんとはどういう関係なの?」
茉莉花は鬼に問い詰める。
鬼は口角をつりあげたまま言った。
「俺の名は煙丸。ねーちゃん達も知ってる妖怪だと思うぜ。」
「知って…いる?」
煙丸……そんな有名な妖怪だっけ??
茉莉花が首を傾げていると、煙丸はため息をついた。
「はぁ、別名ぬらりひょん。そっちの方なら知ってるだろ?」
「ぬらりひょん!?」
確かに日本に住んでいれば1度は聞いた事がある妖怪だ。いつの間にか家に入り込んだり、人をからかったりする、掴みどころのない妖怪で、捕まえようとしてもスルリとすり抜けてしまう厄介な奴。……って感じだっけ?
だけど、イメージとしては、坊主頭のおじさんだと思ってた。
「俺、この呼び名嫌いなんだよね。文献に残した俺の似顔絵も、その滑稽な呼び名にしても、俺を疎ましく思った陰陽師が気晴らしに作ったものだし。世間からは気味の悪いハゲオヤジの妖怪と思われているのが気に食わねぇ。」
煙丸のコメカミに血管が浮きでる。
そして、そんなぬらりひょんも、実際見てみると鬼であるとは。
大山先生いわく、鬼というのは情報が少ない。
私が契約している天音輪道鬼でさえ、私自身何者なのか、よくわからない。
いくら妖魔師として優秀な小野さんであろうが、いきなり鬼と契約することなんてできるだろうか。
「……小野さんと契約しているの?」
「うん。そうだけど?」
だとしたら、なんで契約相手が不利になる情報を教えるんだろうか。彼の魂胆はなんだろう。
「……。」
茉莉花は、いつになく辛そうなみやびを見て、拳をギュッと握った。
「……考えてても仕方ないよね。…よし、私はとりあえず小野さんを追いかける。みやびは潤と月城に事情を説明して、ここで待ってて。」
「……茉莉花ちゃん、うち…死ぬんかなぁ?」
みやびは死が迫っているという現実に怯えているのだろう。唇が微かに震えている。
茉莉花はそんなみやびの頭をポンと叩く。
「ばか。弱気になってどうすんの。私が絶対何とかするし、絶対死なせないから。…だからー、、みやびもやれることをやればいいの!」
そう言った後、茉莉花は教室のドアを開けた。
「へー。さすがは鬼門院の娘。威勢がいいねぇ。……さてさて、俺もあの人の所にでも行こうかなぁー。」
すると、煙丸の体が徐々に煙に変わっていき、教室から姿を消した。
なるほど。煙丸、ぬらりひょんと呼ばれる所以はこの能力か。
「じゃあ、またね。……諦めないでよ。」
「……うん。」
少し笑顔になったみやびが頷いたのを見たあと、茉莉花も教室を後にした。




