死のカウントダウンは突然に③
御手洗から帰ってきた茉莉花が教室のドアに手をかけた時だった。
「……っ!?」
ぞくりと寒気がして、身体が一瞬固まってしまった。
この感じは……陰の気だ。それも、かなり濃いめの。
しかも、よくよく教室を見れば、窓ガラスにはモヤがかかっていて中の様子が伺えない。
…どうしよう。すごく嫌な予感がする。
このドアを開けると、何かとてつもない悪いことが起こっているような。本能が危険サインを出しているのか、ドアに触れている手は小刻みに震えている。
でも、恐らく中にはみやびが……。それに、私が御手洗に向かってから、もう10分以上は経っているはず。
「ふぅぅぅぅ。」
息を大きく吐いたあと、茉莉花は意を決してドアを開けた。
ガラガラガラ……
「!?……みやび!!!」
ドアを開けると、そこにはみやびの他に、小野さんと1人の妖怪がいた。
小野百合。隣のクラスの学級委員長。実力のある妖魔師で、どういうわけか、陰陽師を殺したいらしい。倫理観、常識が普通の人とはかけ離れている感じがする。
そして、教室にいる妖怪の見た目は18歳くらいの青年であり、着物を着ている。頭に1つ、角がはえているので、鬼……なのだろうか?
みやびはその鬼に取り押さえられ、なんだかぐったりとしていた。
「ちょっと小野さん!何してんの!?」
小野さんは茉莉花を見てため息をついた。
「はぁ。またあなたは私の邪魔をするのね。…鬼門院茉莉花。」
「……!私の旧姓知ってたの?」
「もちろん。あの後、あなたについていろいろと調べたもの。鬼門院の血筋なら、あの陰の気の多さも納得ね。だけど……」
小野さんが茉莉花を指さす。
「なぜか、あなたは強い妖怪と契約していながら、今まで1度も召喚したことがない。どうしてかしらね。」
「……。」
茉莉花は小野さんを睨みつける。
「ふふ。まぁ、その理由はどうでも良いんだけどね。肝心なのは、あなたが大した脅威ではないってこと。…よって、彼女を助けることは出来ない。」
小野さんはみやびの方を見た。
「!?」
茉莉花は急いでみやびの元へ駆け寄る。
すると、みやびをがっちりと取り押さえている鬼が茉莉花を見てニヤリと笑った。
「ほんと、ねーちゃん、鬼門院蓮とそっくりだなぁ。」
その言葉に茉莉花は目を大きく開く。
鬼門院蓮は茉莉花の父親だ。
この鬼と、父にどんな関係があるんだろうか。
……しかし、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「…ねぇ。みやびを離しなさい。」
「ふふ。いいよ?用は済んだから。」
鬼は意外にもすんなりとみやびを離した。
足がフラフラとおぼつかないみやびに茉莉花は肩を貸し、近くの椅子に座らせる。
「大丈夫!?何をされたの?」
「うう……ん、なん…か、おでこ、触られてから、えらい…頭が、痛いんや……」
そんなみやびのおでこには、小さなひし形のマークが12個、円状に並んでいた。
「何?このマーク、、、」
「それはね、死印っていうの。このひし形のマークが12個全て消えた時、彼女は死ぬ。」
「!?どうしてそんなことを…!」
茉莉花の眉間に皺がよる。
「うっ!!!ううう……」
「みやび!」
苦しそうに呻くみやびのおでこを見ると、ひし形の数が1つ減っていた。
「あらあら。モタモタしてると、ぽっくり死んじゃうわよ。私にかまってないで、さっさといつものお仲間でも呼んだら?」
小野さんはそう言うと、教室から出ていこうとする。
「ちょっと待っ…!」
バタン!
教室のドアが完全に閉まる。
「……。」
……どうしようか。小野さんを追いかけるべきか、潤と月城を呼ぶべきか、あるいは………
この教室には鬼の青年がいる。
こいつが何をどこまで知っているのか。
そんな茉莉花の思考を読み取ったかのように、鬼は言った。
「お困りのようだねぇ。……じゃあ、1つヒントをあげよう。」
「……何?」
「死印っていうのはね、抹消する方法が1つある。」
「!?」
茉莉花は鬼の目をじっと見つめた。
鬼は楽しそうにニヤニヤ笑う。
「……殺すんだよ。印をつけた人を。」




