死のカウントダウンは突然に①
「……うぅぅぅ。」
世間は夏休みだというのに、なぜか学校の教室で勉強している人が1人。
「……百寺。補習の後居残りって一体何やらかしたんだ?」
大山先生は教室のドアに、もたれかかりながら呆れたようにみやびを見た。
「補習の最後にあるテストで半分とれんかったんや…。だからこのプリント全部終わるまで居残りやねん…。」
みやびは期末テストがすこぶる悪かったため、夏休みは補習を受ける羽目になった。
本当は午前中に終わる予定だったが、居残りでする課題が終わらず、もう午後3時である。
「大変だねぇ。ちなみに、教科は?」
「……数学や。ほんま、何回教科書読んでも理解できんわ!」
「じゃあ、頭いいやつ呼べばいいじゃん。月城とか、数学なら潤もわかるだろ。」
みやびは力なく首を振った。
「誠也は電話してもいっつも来てくれへんの!潤に関しては居残り勉強でこの夏もう3回は呼び出してしまって、なんか申し訳ないし。」
「おいおい…。居残り、初めてじゃないのかよ。」
大山先生はドン引きしている。
「うっさいわ!……あ、せんせ!数学教えてくれへん?先生頭いいやん!」
みやびは希望の光を見つけたようにキラキラとした目で大山先生を見つめた。
「ごめんねぇ。先生、陰陽師のお偉いさんに呼び出されてるから、今から東京なんだよ。」
「えええー。じゃあ、なんでここに来たん?」
「うん?まぁ、補習の後居残りになった伝説のアホがいるって噂に聞いたからさ。顔を拝みにいこうかと思って。」
「……大山先生なんか嫌いやぁ!!!」
へそを曲げたみやびを大山先生は慌ててなだめる。
「すまんすまん。…じゃあ二階堂呼べば?彼女、数学は得意ではないけど、基礎はおさえてるとかいってたぞ。」
「……茉莉花ちゃんかぁ。誠也みたいに断ってきそうやけどなぁ。友達になったとは思っとるけど、いつでも呼び出せる仲じゃあない気がするし。」
みやびは何となく、茉莉花との間に壁がある気がしていた。
茉莉花はよく1人を好むため、なんとなく、ぐいぐいと近づくのはいかがなものか、と思うこともある。
また、出会った当初は彼女を殺そう、だなんて考えていた罪悪感から、親しくするのはどうも都合が良すぎるのではと考えることもあった。
「彼女は面倒くさがりなところがあるから、強引にでも誘わないと応じてくれないかもしれないけど、本質はお節介焼きで優しい子だと思うぞ。まぁ、呼ぶか呼ばないかは百寺に任せるけどね。……じゃ、先生は東京行ってくるね〜!頑張ってー。」
大山先生はヘラヘラと笑って出ていった。
みやびはポツンと1人になる。
「……なんで、あの人茉莉花ちゃんにも詳しいんや…?……まあ、いっか。」
携帯をとりだし、電話帳から二階堂茉莉花の名前を探す。
プルプルプル……プルプルプル……
「……もしもし。」
茉莉花は寝起きの目を軽くこする。
今日は朝から読書をして、お菓子も作って、そしてお昼寝までして、とても平和な休日を過ごせたように思う。
しかし、この電話はその平和を壊すきっかけであった。
「茉莉花ちゃん!!!勉強教えて!!!」
……みやびか。そういえば補習三昧だって言ってたな。
「えー……今から?」
「お願い!茉莉花ちゃんしか頼れる人おらんねん!」
なんだか、すごく切羽詰まっている感じだ。
大方、月城には断られ、潤には頼みづらいといったところだろう。他のみやびの友達はほとんど補習組だったし。
「……はぁ、しょうがないなぁ。」
「ほんと!?ありがとな!急がんでええからな!!」
「はいはい。」ピッ
…………まあ、今日はどうせ暇だしね。
部屋着から制服に着替えた後、茉莉花は家を出た。




