呪いの村⑲
「人が妖怪に……!?」
みんな衝撃の光景に体が硬直する。
「これは、妖怪として退治していい、のか……?」
月城は双剣を構えながらも、迫り来る黒い化け物から距離をとる。
「どう見ても、人間じゃないですよね。だったらいいんじゃないですか?」
理斗はそう言いながらも、化け物には攻撃できないでいる。さすがに理斗もさっきまで人間だった相手には躊躇しているようだ。
「さぁて、どうしたものかなぁ。」
大山先生は呑気な発言をしているものの、額には汗が流れている。
「……。あれ?」
皆よりも後方に下がっていた茉莉花は、あることに気づいた。
黒い化け物の集団の中に1人、苦しそうにうずくまっている少年がいる。
他の人よりも妖怪化の進行が遅いようで、まだ本来の色の肌が3割残っている。
確か彼は、妖魔師グループの中でもおそらく最年少の中学生だったような……?
「はっ……!」
その瞬間、茉莉花の頭の中にひとつの考えが浮かんだ。
「先生、あれを見てください!」
茉莉花は大山先生の肩をたたき、あの少年を指さした。
「え?…………!」
大山先生はその少年を見た瞬間、すぐに茉莉花の考えを察したようだった。
「よく気づいたな二階堂!
…百寺!あいつの動きを封じられるか!」
「え……?できるけど、なんでなん?」
みやびは意図がわからず首を捻る。
「いいから、とりあえずやってみてくれ!」
「りょ、了解…。」
みやびはそう言うと、手から光る鎖を出し、例の少年を拘束した。
すると、すかさず先生が少年に近づき、額の御札を剥がす。そして、おでこに手を当てた。
「ぐああああああ……!」
少年は少し苦しそうしていたが、みるみるうちに肌の黒い部分が消え、元の人間の状態に戻って気絶した。
「戻った!?どういうことなん?」
「先生は陽の気を流し込んだの。」
茉莉花が説明する。
「なぜかね、あの少年だけ、妖怪化の進行が遅かったから、なんでだろうって思ってたんだけど…。他の妖魔師と少年の違いは何かって考えたときに、少年が断トツに年齢が若いことぐらいしか思い浮かばなかった。」
それを聞いてみやびはハッとした表情になる。
「なるほどな。若い方が陽の気が強いもんな!」
「そ。そこで、妖怪化を妨げるものが陽の気だと仮定すると……。」
「陽の気を直接流し込めば元に戻せるんじゃないかと思ったわけやな。」
みやびが納得する。
「じゃあ、コイツらに陽の気を流せばいいんだな。百寺、コイツらの拘束、どんどんよろしく。」
一部始終を見ていた月城はみやびに指示をだす。
「人使い荒いなぁ。鎖のコントロール、結構難しいんやで?」
みやびは文句を言いながらも体のあちこちから鎖を出して次々と化け物の拘束をする。
そして、拘束された化け物は先生、潤、月城、理斗によってどんどん人間に戻されていった。
「……これで最後か。」
潤が最後の一人を元に戻し終える。
みんな気絶はしているものの、誰も傷つけることなく一件落着となった。
「ねえ、あの妖魔師たち、置いていって大丈夫なの?」
一悶着終えて、一行はまた洞窟の奥へと進み続けることとなったが…
どうも茉莉花はあの妖魔師たちが気がかりだった。
彼らに妖怪へ姿を変える御札を与えた"あの方"って誰なんだろう。闇が深そうなのは陰陽師界だけではないみたいだ。
「とりあえず、本来の目的は水晶を割って契約を破棄することだからな。気絶してるアイツらを連れてって奥へは進めないだろ。」
月城はそう言いつつ、どんどん前に進んでいく。
「まあ、そうなんだけど…………あ!向こう、なんか広い空間へ出そうだよ。」
「ほんとやん!いこいこー!」
やっと狭い空間から開放されることに、みやびのテンションが少し上がる。
長い長い洞窟の奥には高校の体育館くらいの広さの空間が広がっていた。
「……お!きたきた!おせーぞ!」
聞き覚えのある声がする。
声のする方を注目すると……
「ええぇ!?」
茉莉花たちは目を見開く。
なんと、広間の中央には成瀬先輩と天女さんが座っていたのだった。




