呪いの村⑱
一方、茉莉花たちのグループには緊張がはしっていた。
「……おそらく、10人は妖魔師がいます。気をつけてください。」
理斗はそう言うとオレンジに光る弓を出す。
『了解。』
続いて、潤、月城もそれぞれの武器を取り出した。
「じゃあ、二階堂は先生の後ろにいるんだよ。百寺は援護よろしく。」
「任せとき!」
大山先生はみやびと茉莉花を少し後ろへ下がらせた。
…今回も特に役に立てなさそうで申し訳ない。
でも、今ハクをだしても、理斗にやられそうだしなぁ。まあ、あの3人なら大丈夫でしょ。
そして、戦闘態勢が整ったところで、洞窟の向こうから数十体もの妖怪が押し寄せてくる。
見た目は様々な動物のゾンビ、という感じ。
「うーん。量は多いけど、一体一体の質が悪い。おそらく人工的につくられた妖怪だろうな。」
大山先生は冷静に分析する。
「人工的に……?」
みやびは首を傾げる。
「小動物を大量虐殺するんだよ。陰の気とその生物たちの魂がそのまま結びついて妖怪になる。だけど小動物は、未練とか想いが魂に込められにくいから、大した力は持てない。」
「ひど!ほんと、倫理観どないなってんねん!」
「ほんとほんと。」
それに関しては、茉莉花も大きく同意する。
同じ妖魔師として恥ずかしい。
そんなことを話しているうちに、優秀な3人はどんどん妖怪をやっつけていく。
潤は軽やかな身のこなしで次々と妖怪を切りつつ前に進んでいく。
月城は二刀流なので、10秒間に5,6体は軽々と殺している。
そして、2人が取りこぼした妖怪を、理斗が弓で確実にしとめる。前髪で目が隠れてるのに、なんであんなに正確にしとめられるのやら。
「……なんか、前衛陣すごすぎて、うちら後衛陣の出番がぜんぜんないんやけど。」
みやびは少し不満気な表情だ。
「まあまあ。楽でいいじゃん。てか、3人、結構先に行っちゃいましたよ。追いかけないと。」
「うーん、そうだねー……。」
大山先生は少し考え込むような表情で頷く。
「…どうしたんです?」
「いや、ちょっとね、相手の考えが気になって。
もし、先生が妖魔師で、契約した妖怪があれしかいないんだったら、妖怪に足止めさせている間に、どさくさに紛れて逃げるんだと思うんだよね。だけど、妖魔師は逃げずに洞窟の奥の方に待機してるみたいだし……。」
「…確かに奥の手があるかもしれませんね。」
茉莉花はまだまだ続く洞窟を見た。
「だったらなおさら、早く追いかけんと!ほら行くよ、せんせ、茉莉花ちゃん!」
みやびに急かされ、茉莉花たち3人も洞窟の奥へ走った。
「仕事はや……!」
洞窟を少し進んだところでは、3人が10人の妖魔師を追い詰めている。
妖魔師グループはお年寄りから中学生くらいの子どもまで色んな人で構成されていた。
「……お前たちは何をしていた。大人しく抵抗をやめて答えろ。」
月城は妖魔師グループのリーダーと思われる、最高齢のおじいさんに剣を突きつける。
おじいさんは観念したようで、静かにこう答えた。
「…………陰陽師を消す計画をたてていたんじゃよ。わしらはお前ら陰陽師から家族や恋人を殺された。」
「……!」
月城はそれを聞き、複雑そうな表情で剣をおろした。
「本当は陰陽師を全員殺すまで、死ぬつもりはなかったんじゃが………………皆、アレをやるんじゃ。」
おじいさんがそう言うと、その他の妖魔師達は頷いて、それぞれ1枚の御札のようなものを取り出し、それを自身のおでこに貼り付けた。
「な、何をする気だ!?」
潤が彼らを静止させようとしたのもつかの間、おでこに札を貼った妖魔師たちの肌が黒く変化し始めた。
「……!?」
「これは、あの御方からいただいた、人を妖怪に変える御札じゃよ。これで、わしらもお前達も仲良く死ぬんじゃ。」
そう言って、おじいさんも御札を自身に貼り付けた。
みんな驚いて、声が出せなくなる。
大山先生も冷や汗を流し、1歩後ずさった。
そりゃそうだろう。だって……
さっきまで人間だった人達の肌が真っ黒になり、体のあちこちに目がついた、気味の悪い化け物になったのだから。




