呪いの村⑰
「け、契約!?無理無理!……天女さんの強い陰の気なんて、俺にはとても耐えきれるはずがないし!」
成瀬は首をブンブン振った。しかし、天女の妖怪はそんなことを全く気にしない。
「ふっ、安心しろ。実は妖魔師にもあまり知られてない話だが、人間と妖怪の間の契約には2種類ある。1つ目が、ルイやあの目つきの悪い女がすでにやっている、互益契約。この契約は相互に利益が生まれ、また契約の強制力も強い。そして、契約者に陰の気も貯まりやすい。それに対して2つ目は友好契約というものがある。この契約はその名の通り、人間と妖怪の友好の証として結ぶものだ。人間は対価、代償なしにその妖怪を呼べるし、妖怪はその呼び出しを拒否することができる。契約の強制力が無いから、契約者に陰の気は溜まりにくい。あたしは、ルイに友好契約の方を提案しているんだ。」
成瀬はそれを聞いて目をぱちくりさせた。
「……すげぇ。なんでそんないい契約があんまり知られてないんだろ。」
「友好契約ができる妖怪は限られるんだよ。知能のない妖怪と友好を深めることはできないからな。…んで、どうするんだ?」
成瀬は少し考えた後、天女の妖怪の目を見て答えた。
「なんか、俺には身に余る契約な気がするけど…、俺なんかでいいのなら、よろしく、天女さん。」
「ルイだから、この契約を結んでやろうと思ったんだ。これからはあたしのことを杏姫と呼べ。」
「その名前って……」
「あたしの名前だよ。生前のな。」
杏姫は少し頬を赤く染めた。
成瀬は彼女の女の子らしい表情に少しドキッとする。
「…わかった。じゃあ改めてよろしくな、杏姫。」
成瀬は杏姫に手を伸ばした。
「ああ。よろしく、ルイ。」
2人はお互いの名を呼び合い、握手を交わした。
するとその握手を交わした手、お互いの右手首に複雑な印が刻まれた。
「よし!契約もできたことだし、先を急ごうぜ!」
成瀬はそのまま杏姫の手をひいた。
「ああ…!」
杏姫はあの日以来ずっとしてこなかった少女のような笑顔で成瀬の手を強く握った。




