呪いの村⑮
一方、成瀬は天女の妖怪と共に罠をよけつつ、洞窟を進み続けていた。
「うん、やっぱ、集中すれば青い光も見えるもんだな!」
得意げに言う成瀬に対して、天女の妖怪は呆れたように彼を鼻で笑った。
「はっ、集中しなきゃ見えないんだろ?出来損ない妖魔師が。」
成瀬先輩はぐうの音もでないようで、ポリポリと頭をかく。
「手厳しいなぁ。俺の家は代々、こんな感じの実力っすよ。…というか、なんでこんな出来損ないの俺なんかについてきたんだ?」
「そんなこと言いつつ、お前は内心ホッとしてるんだろ?1人だと心細いから。」
「な、、、なんでわかんだよ!?」
成瀬は顔を赤くした。それを見て天女の妖怪はニヤッと笑う。
「あたしは«読心の術»がつかえるんだよ。お前の心くらい簡単に読める。」
「ど、読心!?思っていることが全部読めんの!?すげぇー。」
成瀬の素直な感想に天女の妖怪は少し驚いた表情になった。
「…………すごい、か。珍しいリアクションだな。」
「ん?そうなの?」
「心が読まれると知ったら、普通嫌がるか気味悪がるだろ。…あたしが今まで会ったやつはそうだった。」
「あー。まぁ、流石にずっと読まれ続けられるのは恥ずいけど、使い方によってすごい役立つ術じゃん。」
「……。変なやつ。だけどな、この術を使うと大抵気が滅入ることになるんだよ。あの陰陽師達の心を少し読んだが、表面上ではあたしを殺さないと言っているのに対して、内心はあたしを信じきっていない。特にあの、前髪の長いやつはあたしを殺るタイミングをずっと伺っている。」
「もしかして、俺についてきたのって……。」
天女の妖怪は頷く。
「ああ。あいつから距離をとりたかったからだよ。お前を心配したわけじゃない。」
「はいはい。そうだと思いましたよー。」
成瀬はそう言いながらも肩を落とした。
「…………なぁ。話変わるんだけど、天女さんは人間の時の記憶とかあんの?」
「あ?あるけど、なんでそんなことを聞くんだ?」
「別に、何となく気になっただけだけど。言いたくないなら全然いいよ。」
「……まあ、どうせ道中暇だし話してやってもいい。」
室町時代。
多くの大名達が各地で戦いを起こしていた時代。
そんな戦乱の世に1人の姫がいた。
彼女はとある大名の愛娘で、愛されるがあまり、屋敷から外へは出して貰えなかった。戦乱の世だったため、外は危険がいっぱいだったからだろう。
ある日、彼女が暇そうに縁側で庭を眺めていた時のことだった。
突然、塀の外から羽のついた石が飛んできた。
「な、なんだ!?襲撃……とかじゃない、よな?」
姫は駆け寄って、飛んできた石を拾い上げる。
「すすす、すみません!は、羽付きしてたらとんでいっちゃって…!」
塀の外から、慌てている男の声がする。
「ああ、いいよ。今、返してやる。」
姫はそう言うと、塀の外に石を投げた。……が、しかし豪華な着物が重いせいで、なかなか塀の外を越えない。
「……すまない。上手く塀の外へ投げれない。」
姫がそう言うと、男はくすっと笑う。
「ふふ…。もし良ければ、私めがこの塀を飛び越えてもよろしいでしょうか?」
「飛び越えられるのか!?」
「昔から木登りが好きでして、、、何かに登るのは得意なんです。」
「ああ。……ちょっと待て。この場所だと見張りの者に見られてしまう。もう少し東の方から飛び越えてくれ。そこは死角のはずだ。」
「わかりました!」
そう言うと、あっという間に男は塀をこえ、庭に降り立った。
男は姫と同じくらいの年頃で、優しそうな見た目だった。
「身軽なことだな。……はい、これ。」
「ありがとうございます!綺麗なお姫様。」
男に対する免疫のない姫は顔を赤らめながら、羽のついた石について聞いた。
「……そういえば、これは何なのだ?どうやって使う。」
「羽付き、知らないのですか?今、子どもの間で流行っているんですよ。」
「そうなのか。……あたしはこの屋敷から出たことがないんだ。そういう流行には疎くてな。」
「そうなんですね。羽付きというのは、この羽子板というもので、この石を打ち合う遊びです。……姫様、やってみますか?」
姫は顔を輝かせて、即答した。
「もちろん!楽しそうだ!」
そういうわけで2人は日が暮れるまで羽付きを楽しんだ。
「……ふぅ。こんなに楽しかったののは初めてだ。そろそろ父様と母様が屋敷に戻る時間だ。お前は早く帰った方がいい。」
「わかりました。私もこんなに楽しく遊んだのは久しぶりです。……また、姫様に会ってもよろしいでしょうか?」
「ああ!外の世界について、もっといろいろ教えてくれ!」
姫は初めての友達に心を踊らせた。
その後も2人は、姫の父と母がいない間によく遊び、話をするようになった。
お互いのことをよく知ったことで、引かれ合い、いつしか2人は恋仲にまで発展した。
姫は幸せだった。……あの夜までは。




