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妖魔大戦  作者: 香織
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呪いの村⑪


獣道を歩いて1時間弱。ようやく祠にたどり着いた。



茉莉花はふと思った。



ここから村まで往復2時間。そして、この山を下りるのにかかる時間も2時間。ならば、1人で帰った方がよかったのでは……?



今更気づいても、もう遅いんだけど。



「どうした?そんな絶望した顔をして。」



今回の大戦犯、大山先生がのほほんとした声で聞く。



みぞおちを思いっきり殴りたい気分だったが、そんな衝動を抑えて、平然と答える。



「……いえ。なんでもないです。それより、祠は見つけましたけど、日津村の呪いを解決する手口になるんですかね?」



「とりあえず、百寺に調べてもらおう。百寺は感知に優れている陰陽師だから。」



「そうなんですね。すごい、みやび。」



みやびは照れくさそうに首を振った。



「うちは、妖怪との戦闘が得意やないし、こういう事にしか役に立てんからな。」



そう言うと、古い小さな祠に手をかざした。



「うーーん……。陰の気が溜まってる。でも、長年の蓄積っていうより、最近急に溜まったみたいや。やっぱり、千代ばあさんのお供え物が途絶えた事が原因で間違いないんやと思う。」



月城は顎に手を添えて祠をじっと見る。



「つまり、お供えが止んだ途端、村に被害が出はじめたということは…」



「妖怪との契約、だろうな。」



潤が確信を持った声で言った。



契約…?妖魔師と妖怪の契約のこと…だよね?それが日津村とどう関係するんだろう。



「その通りだよ。」



「!?」



急に、聞き覚えのない女性の声が聞こえた。



全員がその声のする方へ振り向く。



そこには、鮮やかな着物、豪華な装飾品、そして神秘的な羽衣を身にまとった、天女(てんにょ)のような女性がふわふわと浮いていた。



その瞬間、月城は双剣を、潤は刀を、理斗は弓を出して、かまえた。



天女はそんな3人を見て、眉間に皺を寄せる。



「ふん、血気盛んな奴らだ。まったく。……こうも優秀な陰陽師が揃っていたら、さすがに勝ち目が無いことくらい、あたしにもわかるよ。あたしはあんた達に情報をやるためにここまで出向いてやったんだから、感謝してほしいくらいだよ。」



うわぁ……。ずいぶん強気な天女さんだなぁ。



「情報、くれるんですか…!ちょっ、武器おろしぃ!ばかばか!」



みやびは慌てて武器をかまえた3人をたしなめる。



「……。」



すると3人は素直に武器をおろした。

意外とみんな、みやびには弱いのかも……。



大山先生も申し訳なさそうに謝りながら、天女に話しかける。



「うちの仲間が失礼しました。……で、情報というのは?」



「あたしは日津村が過去に交わした契約について知っている。……まあ、契約の相手がこのあたしだから当たり前ではあるが。」



「な…!当事者!?」



みやびは目を丸くする。



「そうだ。当時、日津村は盗賊による被害に悩まされていた。そこで、村の者はあたしにお供えを毎月する代わりに、村を盗賊から守ってほしい、という契約を持ちかけた。だが現在…」



潤が神妙な面持ちで言葉を紡ぐ。



「…お供えをする人がいなくなった。」



天女は頷いた。



「そういうことだ。人間は忘れていく生き物だからな。まあ、契約からもう200年近いから仕方がないのかもしれんがな。」



成瀬先輩は天女に尋ねる。



「じゃあさ、仕方ないと思うんなら、村の人間を許してやってよ。契約を無かったことにしてさ。」



すると、天女の眉毛がピクっと動く。



「……あんた、かすかだけど陰の気が溜まってるってことは妖魔師なんだろ?契約はどちらか一方が消えない限り、続行する。妖魔師の常識だろ?

そしていっとくけど、あたしが村の人間を消しているんじゃない。『契約が』村の人間を消しているんだよ。」



「へ?はぇ?」



成瀬先輩は全然理解してない様子だ。…正直、私も理解してないんだけど。



見かねた大山先生が解説する。



「んー……だからね、簡単に言えば妖怪と人間の契約っていうのは、人間同士の契約とは比べ物にならないくらい厳格なんだ。どちらかが消滅するまで続行し、どちらかが破れば、破った方に必ず罰がくだされる。村の人間は契約の力で、存在を消されたってことだよ。」



「ほんと馬鹿ね。あんた。」



本当に天女なのは見た目だけで、中身は辛辣なおねーさんだな。



成瀬先輩がズタボロに言われているのを、月城は悪い笑みをうかべて見ている。



……茉莉花は己も無知だったゆえに笑えなかったけど。



成瀬先輩は顔を赤らめて少しムキになる。



「……。じゃ、じゃあ!俺らは結局どうすればいいわけ!このまま何もしないわけにはいかないしさぁ。」



「それは簡単ですよ。」



「……!?」



今までほとんど口を開かなかった理斗がそう言ったあと、オレンジに光る弓を天女に向けてかまえた。



「こいつを消してしまえばいい。」

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