呪いの村⑩
翌日。
例の祠に向かう道中。
「ふぁあ……。」
成瀬先輩が大あくびをする。
大山先生は成瀬先輩の背中をパンパンと叩く。
「もー。元気だしていくよ〜!」
「元気だせるかっつーの。本来なら休日だったっていうのに、こんなド田舎の村に泊まらせられてよー、おまけに陰陽師のお手伝いかよ。」
まあ、先輩が不貞腐れるのも無理もないけど。
「あ、そうそう。先輩の言葉でちょっと思い出したんだけど……。」
茉莉花はみやび達を見る。
「前々から思ってたけど、先生はともかく、みんなって陰陽師の中でも若い方でしょ?なんでこんな大変そうな任務を任されるの?」
「言っておくけど、先生、まだ28だよ…?」
大山先生は慌てた表情をする。
「いや、若くはないだろ。……確かに言われてみれば、こういう厄介そうなことを学生に解決させるなんて、陰陽師界もブラックだよなぁ。」
成瀬先輩もうんうん、と頷く。
「それはなぁ、これのせいや。」
みやびがボワン、と光る鎖をだした。
「これは、自分の陽の気を体外に抽出して、武器の形にしたもの、だよね?」
「そうそう、陽の気=生命エネルギーっていうのは教えたやろ?生命エネルギーが1番高い時期は生まれた時なんや。そして寿命が近づくにつれて生命エネルギーは減っていく。」
茉莉花は納得したように手を叩いた。
「なるほど。若ければ若いだけ、陽の気が扱える。そして、任務遂行に必要な知能、体力を考えると…高校生が実戦において1番適齢期というわけだね。」
大山先生は不服そうに答える。
「……まあ、そういうこと。先生はもう、体外に出せるほど密度の濃い陽の気は出せない。」
それを聞くと成瀬先輩は首を傾げる。
「んー、でも、陰陽師の大半は大山先生以上の歳なんだから、その、すげー力は使えないんでしょ?じゃあ、そいつらはどうやって戦うんです?」
「そうだね。確かに陽の気の武器は妖怪に対して強い効果を発揮する。だけど、妖怪を祓う方法なら他にもあるんだな。」
そう言うと、大山先生は小型ナイフと御札を取り出した。
「このちっちゃいナイフは、陽の気が込められている。もちろん、陽の気で作られたものに比べると威力は劣るけど、急所に当てれば、ちゃんと妖怪を祓える。」
成瀬先輩はナイフを見てボソッとつぶやく。
「なんか頼りないなぁ、この武器。」
それを聞き、月城は苦笑する。
「……まぁ、陽の気がこもってる武器は希少なんですよ。もちろん、立派な矛とか剣とかありますけど、そんな代物は上層部にしか扱えないので。」
先生って、本当に陰陽師界では下っ端なんだな。……なんか可哀想になってきた。
「へぇー、なるほどねぇ。しかし、本当にこのナイフ、特別なナイフなんですかね。見た目は安っぽいフルーツナイフって感じ……うわっ!」
そのナイフに成瀬先輩が触れた瞬間、パチッと静電気のような音がした。
「ははは、お前に溜まってる陰の気に反応したんだろうね。これでこのナイフが特別な物っていうのがわかっただろ?」
大山先生は嘲笑うように言った。
茉莉花はその様子を見て、少し好奇心が沸いた。
「……私が触っても反発が起きるのかな。」
ゆっくりナイフに手を伸ばす。
しかし、ナイフに手が届く寸前でパシッと腕を掴まれた。
「……っ!?潤?」
どうして急に?
「茉莉花は陰の気が強いから、反発が強くて危険、だと思う……。」
「あ、そっか…。ありがとう。」
「あらぁ、そのまま手、繋いじゃったら?」
みやびがニンマリと笑う。
「……うるさい。」
潤は耳を赤くして茉莉花の腕を離した。
「へー、アオハルかい。いいねぇ〜。」
あーあ。みやびのせいで大山先生が勘違いしちゃった。
「はー、先生まで……。潤が困ってるので止めてあげてください。…それで、先生がナイフと一緒に持っている、その御札はなんなんです?」
「あー、これ?伍壱護符って言うんだけどね、これは妖怪一体に対して5枚、この伍壱護符を貼ればその妖怪を祓うことができる。5枚1組の武器ってやつだ。」
「なるほど。陰陽師っぽい感じですけど……他の武器より非効率じゃないですか?」
みやびは首を振って言う。
「そんなこともないで。結局、物は使いようや。稀にサイズの大きい妖怪や、複雑な術を使ってくる妖怪がいるんやけど、そういったのは魂の破壊が難しくなるんや。伍壱護符は直接魂を破壊しなくていいぶん、そういった相手には有利に働くこともあるんよ。」
「ほう。すごいなぁ…………あっ。」
「どうしたんや?」
「あれ、例の祠じゃない?」
「ほんとやな!」
「……はぁ。やっとついたか。どんだけ山道を歩かせんだよ。」
成瀬先輩が言うように、私達は村から離れ、獣道みたいな道を1時間弱進み続けた。
そうして、ようやく千代ばあさんが月に1度通っていた祠へとたどり着いたのである。




