呪いの村⑥
「っ…………!?」
私の、お父さん?
「……なぜ、先生が私の父を知っているんです?」
先生は少し笑った後、茉莉花に言った。
「……まあ、ゆっくりと座って話そう。」
先生を部屋の中に入れ、私はベッドに座った。
先生は1人がけの椅子に腰を下ろす。
先生は持ってきた缶コーヒーを一口すすると、話を始めた。
「……俺は、、、二階堂のお父さん、鬼門院蓮と友達だった。」
「………………!」
茉莉花は目をパチクリさせた。
「って言っても、年の差はひと回り違うんだけどね。……10年前のことだった。…………」
当時18歳の大山覚は、陰陽師の上層部からとある任務を言い渡された。
「……鬼門院蓮とその家族の捜索及び殺害、か。」
歩きつつ、そこらへんで拾った小石を真上に投げてはキャッチする動作を繰り返す。
さすがに殺害命令が下ったのは初めてなので、慎重に計画を進める。
彼の目線の先には、鬼門院蓮、妻の鬼門院鈴音、そして娘の鬼門院茉莉花の姿。
そう、彼は数多の情報網と、持ち合わせた分析力によって、"捜索"の任務は完了していた。
あとは、あの家族が人目につかない場所を訪れる機会を待つだけ。
一見普通の3人家族の尾行を続ける。
……そして、ついにチャンスが訪れた。
鬼門院一家は、どの時間帯でも人目の少ない通りへ曲がっていったのだ。
大山もその後に続き、曲がり角で曲がる。
「……な!」
しかし、曲がった先で、鬼門院蓮がニコニコ笑ってこちらを見ていた。
「おまっ……気づいて、、、!」
「……やあ。少年。」
「あら、知り合い?」
妻の鈴音が首を傾げる。
「うん。ちょっと先に行ってて。すぐ戻るから。」
蓮はひらひらと手を振る。
「おとーさん、はやく帰ってきてよ!」
娘の茉莉花は鈴音に手をひかれ、どんどん遠ざかっていく。
「はーい。」
蓮は優しい声で返事をした。
……しばらくたって、辺りは鬼門院蓮と大山覚だけとなった。
鬼門院蓮は大山を見て、こう言った。
「君は…………陰陽師、なのかな?……そしてー僕らを殺しに来た。」
どうやら何もかも筒抜けのようだ。
「……そうだよ。なぜわかった。」
「僕は育った環境がら、殺意には敏感なんだよ。……君はこういうことをするのは初めてかい?」
「……スパイ活動のようなことはこなしてきたが、殺害命令は初めてだ。」
それを聞くと、鬼門院蓮は少し下を向いた。
「そっか……。君の事情はよく知らないけど、そういうことはやめておいたほうがいいよ。」
「ふん、命令を破ることはできないんだよ。それに妖魔師なんて、この世の秩序を乱す存在なんだから、誰かが殺らないと。」
「……なんで妖魔師が悪だと思うんだい?」
鬼門院蓮は大山の顔をじっと見つめて言った。
「……だ、だって、妖怪を使って人殺しや盗みを働くんだろ?今までそんな事例が数えきれないほど報告されてる。」
鬼門院蓮はそれを聞くと、眉を下げて困ったように笑った。
「……実はね、そういうことをする妖魔師はほんの1部なんだよ。」
「……は?」
「妖怪と契約することで、陰の気が体に溜まる。だから、あまり妖魔師に向いてない体質の人は精神状態が不安定になり、そういう事をしだすんだ。……でもね、多くの妖魔師はその力を良い事にしか使っていないんだよ。」
「そんなの信じられるわけ、、、」
「じゃあ、実際に調べてみてごらん。僕らの居場所をつきとめたみたいに、ね!」
「……。」
今まで妖魔師は悪だと思っていたから、殺すという行為に罪悪感なんて持っていなかった。
しかし、本当に彼の言う通りだったら、、、更に彼も彼の家族も善人だったら、、、彼らを殺害する意味なんてあるんだろうか?
「……来週のこの時間、この場所でまた会おう。もし、調べた結果、妖魔師や僕が悪だと思ったのなら、僕は無抵抗で君に殺されてあげよう。」
そう言って彼は笑顔で去っていった。
「…………。」
大山覚は、呆然と彼の背中を見送ることしか出来なかった。




