呪いの村⑤
時刻は6時。もうすっかり夕方だ。
千代ばあさんの家をくまなく捜索したが、カレンダー以外、めぼしい物はなかった。
「ふぁぁぁ。」
大山先生は大あくびをする。
「………………先生、もうこんな時間ですよ。帰りません?」
茉莉花は身体中の関節をゴキゴキといわせながら、ゆっくり立ち上がる。
「んーーー。どうしようかな…………おっと、帰ってきた。」
ガチャ、という玄関の扉が開く音がした後、ゆっくりとこちらに向かう足音が聞こえる。
「あー、そういえば聞き込みに行ってたんだ。成瀬先輩。」
「な、に忘れて、んだ、よ……」
戻ってきた成瀬先輩は、服がところどころ汚れて、表情もゲッソリしている。
「ちょ、どないしたん?そんなに汚れて。」
みやびは成瀬先輩の髪についた泥を払う。
「村のやつがなかなか図々しくてな。情報やる代わりに、って農業を手伝わされた。」
大山先生がニヤリと笑う。
「つまり、情報を得られたんだな……?」
成瀬先輩はムッとした表情で答える。
「まあ、そうですけど。……千代ばあさんは毎月4日に村の近くの祠へ食べ物をお供えしに行ってたみたいなんですよね。おそらく、それが途絶えたことが今回の件の原因なんじゃないっすかね。」
「祠、か。………………とりあえず、今日は時間が遅いから、明日そこへ行こうか。」
「あ、明日!?」
茉莉花は目を見開く。
「うん。今日はこの村の宿で休もう。予約はとってある。」
「……。」
……この人、最初から泊まりこみになることを想定していたんじゃないか。
はぁ、今回のテストはもうあきらめようかな…。
そして、宿に到着した。
古民家を改造した、という感じの宿で、1人1部屋用意されてて、なんか豪華。
「お、備えつけのパジャマがある。よかったー。」
茉莉花は自室のタンスを開けてほっとする。
なにしろ、泊まりになるなんて知らなかったから、着替えなんて持ってきていない。
まあ、明日は同じ服を着るしかないけど。
「ふぅー。疲れた。」
持ってきた英単語帳をベッドで寝転がりながらパラパラと眺める。
今日中に英単語、全部覚えるつもりだったんだけどな。……ほんと、私って面倒事に巻き込まれやすくないか。
コンコン
扉をノックする音がする。
「?……はーい。」
時刻は22時。非常識な訪問者だな、まったく。
扉を開けるとそこには…………大山先生。
うん、納得。
「大山先生、どうしたんです……てか、なんか雰囲気違いますね。」
「あー……。お風呂入ってきたからね!」
大山先生は普段、前髪をセンター分けして、ピンでとめ、後ろ髪はくくってある。
しかし、今は前髪も後ろ髪もおろしてあり、言いたくはないが、まあまあのイケメンである。
「髪型って案外、大事なんだな……。」
「え、なんて?」
「いや、その髪型の方がモテると思いますよ。」
「え、まじ?」
「はい。……見た目は、ですけど。」
たぶん、この人の中身を知れば9割は幻滅するんじゃないか。
「おー。んじゃ、プライベートはこれでいこうかな〜。別に高校ではモテなくていいし。……ってこんな話をしにきたんじゃないんだった。」
「なんですか。あ、期末テストの日本史についてですか!」
「あー、そういえば、そんなこと言ったね。」
「……。違うんですね。」
やれやれ、この先生はなんなんだ。呆れるのにも飽きてしまう。
しかし、先生は急に真面目な顔をしたと思ったら、こう言った。
「………………君のお父さんのことについて話しておこうと思って。」




