呪いの村①
ゴトゴトと揺れる車の中、茉莉花はゲンナリとしていた。車の中は茉莉花、成瀬先輩、そして大山先生の3人きり。
「……なんでこんな事態になったんでしたっけ。」
茉莉花はボソッと言う。
「………………俺もよくわからん。」
成瀬先輩も同様にゲンナリしており、大山先生の運転に身を預けている。
【1日前】
放課後、家に帰ろうとした茉莉花を引き止めたのは、担任の大山先生だった。
大山先生は、担任兼日本史担当の男性教師であり、見た目はとてもだらしない。
髪は無造作に伸びており、前髪はセンター分けしてピンでとめ、後ろ髪はゴムでくくっている。
目の下はくまができていて、常にタバコ臭がプンプンしている。
茉莉花にとって、教え方は上手いが、とくに関わり合いたくもない先生、という位置づけである。
「なんですか、先生。」
「いやぁ、陰陽師の三人のことなんだけどー。」
「…………!?」
いきなり衝撃発言をされる。
茉莉花は目を大きく見開いた。
「……先生って陰陽師関係者なんですか!?」
「あ、そうそう。聞いてなかったっけ?」
「聞いてませんよ!」
「まぁ、フツーおかしいだろ?転校生3人同じクラスだとか、あの席順を許可したの俺だし。陰陽師関係者じゃなければ、そんな融通きかんだろ。」
「……言われてみればそうですね。」
「ついでに、校長や数人の先生も陰陽師の方針に逆らわないよう買収してあるんでね。」
「うわぁ……。」
ほんと、陰陽師界隈ってどす黒い。
「そんで、本題に入るぞー。
例の3人が昨日から学校に来てないだろ?」
「あー。はい。」
おかげさまで平和な2日がおくれた。
「実はな、アイツら、上の指示で"呪いの村"に行ってんのね。」
「呪いの村?」
「……4、5日に1人、人が失踪する村。」
「へー。」
なんか、リアルホラー映画みたい。
「そして、現在、調査に行った3人が音信不通です!」
やばいじゃん。普通に。
「……それ、そんなハッキリ言うことですか?」
「まさか、死んだとは思ってないよー。先生も、あの3人の実力を買ってるからね。
……で、二階堂には俺と一緒にその村に行って欲しいんだよねー。」
「ええ!?嫌です!先生も、今がどういう時期かわかっているんですよね!?」
「もちろん!来週期末テストだよね!」
「……だったら……。」
「お願い!大事な友達の命がかかっているんだよ?」
「……。」
さっき、3人の実力を買ってるっていってたよね?
「大丈夫。助っ人もいるから。」
「助っ人?」
「そろそろ来るんじゃ…………あ、来た。」
すると、廊下の向こうから重そうなダンボールを抱えた、見覚えのあるチャラ男がヨロヨロ歩いてくる。
「……どこが助っ人なんですか。」
「ははは、ひどいなぁ。」
「そもそも、成瀬先輩と先生はどういう関係なんです?」
「んー。ほら、あの体育大会の一件あったろ?その後、成瀬の悪行の報告を受けて、罰を与えてんの。卒業するまで俺の雑用係なんだよ、アイツ。」
なるほど。陰陽師サイドと和解の代わりに雑用係か。
「それは、可哀想ですね笑」
「おい!お前、今ゲスい顔で笑ってるぞ!」
成瀬先輩が近づいてきて、こちらを睨む。
「いやぁ、よかったですね。陰陽師達に許してもらえて。」
「……っ!!」
成瀬先輩はコメカミをピクピクさせる。
大山先生はすかさず、間に入る。
「もー。喧嘩しない。同じ妖魔師でしょー?君らー。明日は一緒に行動するんだし。」
『明日!?』
茉莉花と成瀬が同時に反応する。
「明日、土曜日だしいいでしょ?一刻を争う事態なんだよ?」
『……。』
2人とも行く、とは一言も言っていないものの、勝手に行くことにされていたのだった。




