体育大会の裏事情⑨
……まずいことになった。
数分前の出来事だった。応援合戦は審査員の評価により、私達の青ブロックが1位となり、ついに赤ブロックと同点まで追いつくことができた。
あとはブロック対抗リレーの結果次第で優勝が決まる、ということで、皆のテンションも上がっていた。
だが突然、放送で私の名前が呼ばれた瞬間、皆のテンションは一転する。
「二階堂茉莉花さん、ブロック対抗リレーの出場選手の人数が足りていないので、入場門へ来てください。」
……え?私、この競技参加しないはずだけど。
誰もが私のことを見る。え、二階堂さんが補欠?って感じの目で。
皆も混乱しているが、1番混乱しているのは私だ。
オロオロしていると、後ろからは、成瀬先輩の声がする。
「やあ、補欠君。」
「……もしかして、先輩のせいですか。」
成瀬先輩は小声で話す。
「そうだよ。名簿をすこーし書き換えたんだよ。補欠ともなると、誰も書き換えに気づかなかったしな!」
「いくら勝ちたいからって、さすがに酷すぎじゃないですか!?」
「これは個人的な仕返しだよ。この前のな。」
「……。」
あれか。先輩の急所を蹴ったやつか。
「とにかく、これで俺の優勝だな!お前もよく頑張ったよ。」
そう言って、気分良さげに先輩は帰っていった。
「…………。」
「……お前、大丈夫なのか?」
月城が声をかけてくる。
「大丈夫じゃないに決まってるでしょ。目立つのは嫌いなのに、勝敗の決まるリレーに出場なんて…。」
そして、応援合戦を終えた潤やみやび達も応援席に帰ってきた。
「茉莉花ちゃん、補欠やったんやなぁ。足が速いなんて以外や。」
「はあああ……ちがうんだよ。」
茉莉花は今回の成瀬先輩との1件について、月城とみやび、ナギに話した。
「……あー。だから、競技中セコいことをしてたのか。」
月城が納得の表情をする。
「……重々承知してますが、改めて言葉にされると傷つきますね。」
「僕も茉莉花ちゃんって意外と負けず嫌いなんだな、って思ってたけどそういうことかー。」
ナギはのんきに笑っている。
「だから、もしうちのブロックがリレーで勝てば、成瀬先輩とは敵対しない事になるし、負ければ敵になるってこと。」
「なんか、成瀬先輩も適当やなぁ。体育大会でそんな大事なこと決めるなんて。」
それは少し私も疑問に思っていたことだ。
……内心、彼も方針に迷いがあったのかもしれないな。
「……まあ、とりあえず、リレー行ってくる。名簿に名前が書かれていた以上、出場しない訳にはいかないし。」
とぼとぼと入場門へ歩きだす。
「茉莉花。」
振り返ると潤が心配そうに私を見ている。
「……緊張しているのか。」
茉莉花は苦笑いを浮かべる。
「さっきとは状況が逆だね。」
「……。」
茉莉花の冷たい手を潤がそっと握った。
「え、、?」
「緊張のとれるツボ、だろ?」
「あ、うん。……ありがとう。」
……動悸がすごい。体もあつい。やっぱりこのツボって緊張を増幅させるツボなんじゃないか。
茉莉花はぎこちなく踵をかえし、入場門へ向かった。




