体育大会の裏事情⑧
表情、しぐさ、汗などあらゆる面から緊張が伝わってくる潤に思わず声をかける。
「かなり緊張してるみたいだね。」
「……。」
潤はこくりと頷く。
声も出せないなんて、かなり深刻みたいだ。
やれやれ、仕方ないな。
「ほら、手を貸して!」
「?」
茉莉花は潤の手をとり、彼の手のひらの真ん中を押した。
「これ、緊張をほぐすツボなんだって。お母さんが言ってたことだから、ただのおまじないとかかもしれないけど。」
「え……」
すると、みるみるうちに潤の顔は真っ赤になる。
「あ、ああ。そ、そ、そうか。……ありがと、う。」
すると、急ぎ足でそそくさと入場門に行ってしまった。
「うーん。このツボ、もしかして逆効果だったのかな…。」
ボソッとつぶやくと、月城のため息が聞こえる。
「はー。ほんと、あれを無意識でするとか、お前酷い奴だな。」
「はい?」
「なんでもないよ。潤が可哀想だってこと。」
「はぁ?」
しかし、応援合戦が始まり、次に潤の姿を見かけた時は、すっかり緊張もほぐれたようで、応援団として、ちゃんと役目を果たせていた。
「やっぱ、あのおまじない、効いたんじゃない?遅効性だっただけで。」
「……とてもじゃないが、緊張しているどころじゃなくなったんだろうな。」
「だから、どういう意味なの。それ。」
「…………。まあ、この様子だったら、もしかしたら赤ブロックに勝てるんじゃねーの。」
確かに、赤ブロックの統一された動きも見応えがあったが、うちのブロックの応援団やチアには、なんとも言えない惹きつけるものがあるんだよなぁ。イキイキしてるっていうか。
舞をまう潤や、可愛くダンスをするみやび、ノノ、太鼓を叩くナギを見ながら、体育大会ってちょっとだけ楽しいかも…と初めて思う。
……しかし、この後、幸せの絶頂から一瞬で落とされることは、まだ誰も知らない。




