妖怪の住むマンション⑦
再び戻ってナギのサイド。
隣のクラスの学級委員、小野百合は細い目を更に細くして、ナギを睨む。
「彼女たちが死んでくれたら、もっと強い妖怪が呼び寄せられたかもしれないのに。」
「君、人を殺そうとしたの!?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?殺すのは私じゃなくて、妖怪たちよ。
それに私は、このマンションに幽霊が出るっていう噂をながしただけよ。」
「…………!」
ナギはあまりの倫理観の違いに言葉が出なくなった。
「あーあ、せっかく下準備に時間かかったのになあ。餌にかかった3人も逃がされちゃったし。」
彼女の目がカッと開く。
「……ってことで、あなた、代わりに死んで?」
「……っ!!」
妖怪を召喚しようと小野が口を開きかけた時だった。
バン!!!
扉が勢い良く開く。茉莉花は小野を見て驚いた顔をする。
「小野さん……?」
「……また邪魔が入った……!」
「……あなたがあの時ヒトガタ妖怪を召喚したのね!?」
小野は少し黙った後、眉間に皺を寄せる。
「……あの口軽男!本当に使えないわ。」
「あのヒトガタ妖怪の行動は確実に陰陽師を殺しにきてた。あなた達の目的はなんなの?」
一応、同級生が3人、あの件で危険な目にあったし、ちょっと腹が立つ。
小野は冷ややかな目で茉莉花を見る。
「そりゃあ、陰陽師を殺すっていう目的よ。」
……そのまんまだ。
そして、小野は扉の前に立つ。
「じゃあ、質問には答えたんだから、私は帰らせてもらうわね。」
「……へ?」
意外な発言に拍子抜けした声になる。
「あなたの陰の気からして、なんの下調べもせずに戦いを挑むバカなんていないわよ。」
「はあ。」
……さっき挑んできたチャラ男がいた気がするけど。
小野はドアノブに手をかける。
「じゃあね、二階堂さん、藤崎くん。
……これ以降、私の邪魔をしてくるんだったら、潰しにかかるから。」
バタン!!!!!!
大きい音をたてて扉がしまった。
「お、おっかない……。」
茉莉花とナギは、しばらく身体が固まったまま動けなかった。
……………………………………………
「……ほう、そんなことがあったのか。恐ろしいのー。」
マンションから出た後、心身共にズタボロな3人を帰らせて、さっきの小野百合の件と、この前起きた事件についてネコさんに話した。
あと、ついでではあるが、ナギに陰陽師やら妖魔師やら、陰の気やら…この前みやびに教えてもらったことをまるまる伝授した。
「じゃあ、茉莉花ちゃんが転校生たちと仲良くなったのって、その事件があったからなんだね。」
「……いや、仲良くはないです。」
茉莉花は急に真顔になった。
「あ、、そう?」
「……ところでナギ、儂と契約せんかの?」
ネコさんはナギの肩に飛びのる。
「つまり、僕も妖魔師になるってことだよね!」
「いいの?陰陽師三人衆に目をつけられるかもよ?」
「んー、まあ、大丈夫でしょ!」
「楽観的だなぁ…。」
よって、ナギも妖怪と契約することになった。
妖怪との契約は至って簡単。
①お互い契約の了承を得る。
②妖怪は契約の条件を言う。
③人間は契約の条件をのんだ上で、妖怪に名前を与える。
というスリーステップだ。
ちなみにだが、ハクと契約する条件は毎月3枚の油揚げを報酬として与えることだ。(安い。)
「ネコさん、契約をするにあたっての条件は?」
「それは、儂をナギの家に住まわすことじゃ!」
「うん、全然いいよ!」
ナギはこころよく承諾する。
「あとは、ナギがネコさんに名前を与えるだけだよ。」
「うーーん。そうだなぁ。………………じゃあ、猫太郎!」
…………。
その場にいるナギ以外の皆が凍りつく。
ネーミングセンス、だっさっ……
……こうして、ナギの契約の儀式は終了したのであった。




