妖怪の住むマンション⑥
茉莉花のサイド。
304号室の扉の前に茉莉花とハクはたどり着いた。
「入りますか。」
「ちょっと待って。作戦がある。」
茉莉花はにやりと笑った。
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304号室。
兎や猫、犬といった小動物の死体がゴロゴロと転がっている気が狂いそうな部屋の中で、チャラい見た目の青年、成瀬瑠偉は掃除をしていた。
「なんで、俺が死体処理なんかしなきゃなんないんだ。殺したの百合なのに。」
そう。彼らの目的は、陰の気を生物を殺すことにより発生させ、妖怪をこのマンションに呼び込むことだった。
「あいつ、どっか行ったしなぁ。……あーもう、帰りたい。」
ガチャ ギィィィ……
扉が開く音がする。
「んー、おかえ、り、、、誰だお前!?」
扉の前には目つきの鋭い女子。来ている制服から、近くの県立高校の生徒ということがわかる。
「……どうも、肝試しをしにきた、ただの女子高生です。あなた、なにしてるんですか。」
成瀬の手には血がべっとりとついていて、どう頑張っても言い逃れはできない。
「……あはは、まあ、事情がいろいろあるんスよ!」
「……陰の気の発生、ですか。」
すると、成瀬のヘラヘラとした表情が真顔になる。
「……ちっ、一般人じゃねーのかよ。」
「なんでこんなことをするんです?」
「そりゃ、俺が妖魔師だからだよ。ここに妖怪集めて、使えそうなやつと契約してんの。」
「そうですか。……それ、やめてくれません?
同級生が被害にあってますし、そもそも動物が可哀想です。」
茉莉花が淡々とそう言うと、成瀬はハハッと軽く笑う。
「そう言われて、はいわかりました、ってなると思う?」
「やめないんだったら、力ずくでやめさせますよ。」
成瀬が更におかしそうに笑いだす。
「おじょーさんじゃ、男の俺に勝てないっしょ。しかも俺、妖怪よべちゃうんだよ?」
茉莉花の顔が呆れ顔になる。
「はー、忠告はしましたからね。」
すると、成瀬の後ろにもう1人の茉莉花が急に現れ、彼の急所に蹴りを入れた。
「ぎゃあああああああああああああああ!!!」
成瀬はゆっくりと床にうずくまった。
脂汗をかきながら、訳が分からない、という顔をしている。
「何をした……!?どういうことだ!」
彼の後ろにたっている茉莉花が勝ち誇ったように笑う。
「まさか、こんなに上手くいくとは。
……実はね、あなたがさっきまで話してたのは、私に化けた妖怪なの。」
「はぁ?」
そう。妖怪の中のごく1部は«術»というものを使える。なんと、ハクは«変化の術»を使えるのだ。
彼がさっきまで話していた茉莉花はみるみるうちに白い狐の姿に戻る。
「私が茉莉花様に化けて、あなたと話しているうちに、本物の茉莉花様が隣の部屋のベランダからこの部屋のベランダにうつってこの部屋に侵入し、あなたの真後ろに来て奇襲をしかける作戦だったんです。」
「なん、だよ、そ、れ……。」
「……あとさ、私と陰陽師3人が学校で妖怪の奇襲を受けたんだけど、あなた、それの犯人?」
「……。」
成瀬は茉莉花から目をそらす。わかりやすい。
「こりゃ、後で陰陽師たちにつき出さないとね。」
「まてまてまて、でも、俺は雑魚な妖怪しか召喚してない!マジでそれだけは勘弁して!」
成瀬は急に慌てだす。
「じゃあ、あの強い、ヒトガタ妖怪は誰か召喚したの。」
「仲間の妖魔師だよ!あいつ、急にさっきどっかに行ったんだよ。」
「へっ……?」
ハクと顔を見合わせる。
このマンション、階段が建物の端と中央にあるから、すれ違ってしまったのか…。
「まさか、ナギたちと鉢合わせしたとか、ない、よね……?」
「どうですかね……。」
茉莉花は自分のスマホを見るが、連絡は入っていない。
ちょっと不安になってくる。
「ハク、2階に行こう、ナギが心配だよ。」
「わかりました。」
とりあえず、成瀬のことは置いて行き、茉莉花たちは2階へ走り出した。




