妖怪の住むマンション③
例のマンションの前。
古いマンションだからか、いかにも出そうな雰囲気だ。そして、立ち入り禁止の看板を無視して侵入したため、罪悪感がすごい。
三人衆の中で唯一、連絡先を交換したみやびに電話をかける。
プルルルル プルルルル プルルルル ……ガチャッ!
「もしもし、どうしたんやー?」
「今、どこにいる?」
「東京やー。でも、もうタクシーで帰ってるところやで。横浜まではもう少しかかるな。」
「そういえば、潤の契約の破棄上手くいった?」
「もちろんや!上手くいったで!……もしかして、潤のこと、心配やった?」
なんでこんなウキウキした声で聞いてくるんだ?
「いや、まあ上手くいくだろうとは思ってたから、そんなに。」
「はー。ソウデスカ、ソウデスカ。」
なんかガッカリされたんだけど。
……ってそんな場合じゃないんだった。
「そうそう、実は今日かくかくしかじかで………………」
5分後。
「なるほどな。了解。なるべくはやくそっち向かうわ。じゃあ、茉莉花ちゃんは危ないからそこで待機して、、」
「私がマンションから出てこなかったら、骨は拾いに来てね。」
「あ、、ちょっ、、、」ブツッ ツー ツー……
ごめん、みやび、時間が無いんだよ。
実はマンションに行った3人、ちょっとやばいかもしれないのだ。
というのも、ここに向かうまでの間に、ナギが何回も電話をかけたのだが、誰とも繋がらなかったのだ。
「……じゃあ、行こうか。」
ナギは引き締まった表情でコクンと頷いた。
エントランスは思ったより広い。
「ネコさん、そういえば、もともとここら辺にいたんですよね?なんでですか?」
「ここは、陰の気が豊富でのう。妖怪にとっては居心地が良いんじゃ。」
「陰の気が豊富……かなり強い妖怪がいるということですか?」
「妖怪とは限らんぞ?」
……妖怪とは限らない?
陰の気は生物が死んだときに発生するから…。
「何者かの手によって、ここで生物がたくさん殺されている……?」
「もしくはその両方じゃな。」
どの場合でもやばいじゃないか。
「ねーねー、茉莉花ちゃん。」
ナギの声が弾んでいる。
「なんか、僕の肩にぼんやりと影がみえるようになったんだけど!それに、ボソボソだけど声も何となく聞こえる!」
「そ、そう…。」
だから、なんで嬉しそうなんだよ!
「とりあえず、1階を探そうか。3人が1階を動き回ったのは確かだと思うし。」
「うん。」
私たちは101号室、102号室、、と順にドアを開けて中を確かめる。
そして、1階の1番奥、104号室の扉の前まで行くと、嫌な気配を感じた。
「ここの部屋の陰の気は格別に濃いぞ。気をつけるんじゃ。」
「……わかった。」
私は扉をゆっくり開けた。
「!!!!」
短髪、色黒の男子の佐藤光太の周りにたくさんの妖怪がまとわりついている。
もちろん彼は妖怪が見えないが、苦しそうに地面をのたうち回っている。
「ハク!」
鬼火が出現し、中から恒例の白いキツネが登場する。
「こいつら、全部やっつけて!」
「わかりました。」
そう言うと、ハクは妖怪たちを次々と爪で掻っ切っていく。
おお、意外とやるじゃないか!
前回はかなり役に立たなかったのに!
あっという間に仕事を終えハクが私のもとへ戻ってくる。
「終わりました。」
「ナイスだよ!ハク!」
「……意外と役に立つな、とか思ってますよね?」
おっと、するどーい。
「……。」
「はあ。今のは全部雑魚でしたからね!これくらいならやれますよ、私だって!」
「はは、ごめんごめん……。」
ナギは急いで佐藤君の身体を起こしあげる。
「大丈夫か!?」
彼の首や身体のところどころに強く押さえつけられた跡が残っている。
「う、うん、、平気だ…。」
私は佐藤君のもとへ近づき、彼を睨む。
私は目つきがもともと悪いから、睨むとかなり恐ろしい形相になるらしい。
佐藤君は震えだし、なぜかナギもダラダラ汗をながしている。
「行くな、って言わなかった?私。」
「ごごごご、ごめん、こんなことになるとは思ってなくて、、」
「ほ、ほら、コータも反省してるから、ね?」
ナギがあわててフォローに入る。
まあ、起きてしまったことはしょうがないんだけど。
「はーーー。とりあえず、間に合ったからよかったけど。で、今の状況を教えて。」
「は、はい!」
佐藤君はこれまでの経緯を話し始めた。




