苦悩と焦燥④
「……俺の家は日本で1番伝統のある陰陽師一家だ。この家に生まれたからには、強い陰陽師になるための教育を受けされられる。
……俺の兄は家の期待に完璧に答えてみせて、最強の陰陽師となった。兄に勝てる人も妖怪も存在しないほど、…強かった。妖怪を祓うだけじゃなく、勉強や運動も何でもできた。」
へぇ。そんな完璧人間っているんだなぁ。陽道君と同じDNAだから、顔立ちも整ってるんだろうし。
「そんな兄の弟だったから、俺に対するプレッシャーもすごかった。そして、俺は、、その期待に答えられなかった。陰陽師としてはもちろん、勉強も運動も兄には遠く及ばなかった。そんな俺に母と父は失望し、ほとんど話をすることはなくなった。」
「そんな……。あんなに強いのに。」
「兄と比べれば、本当に大したことないんだ。兄が恐ろしく強いから、八岐大蛇は再封印ではなく、討伐する計画がたっていたほどだ。」
……お兄さんの話が全て過去形だ…。
私はゴクリと唾を飲む。
「……だが、今年の3月のことだった。兄と買い物をするために駅前で待ち合わせをしていた時、突然近くの道路を走っていたトラックが暴走しだした。そのとき俺はイヤホンをつけて動画を携帯で見ていたから周りの状況が見えてなくて、、、気がついたら、トラックから俺を庇った兄が血を流して倒れていた。」
「……お兄さん、大丈夫だった?」
陽道君は肩を落とす。
「一命は取り留めた。……しかし、意識が戻らない。医者曰く、これから意識が戻るかは運次第らしい。」
とりあえず、生きているのならよかった…。
「兄に重症を負わせてから、八岐大蛇討伐の計画も大きく変わってしまった。母と父の風当たりも以前より強くなった。
…………俺は何としてでも今の任務ぐらいは確実にこなさなくてはならない。失敗は兄に重症を負わせた俺に許されるわけがない。
だから、母のすすめで強い妖怪との契約もすることにした。……その結果がこれだ。」
実の息子に妖怪との契約をすすめるなんて、、
「……なんか、腹が立つ。」
胸糞悪い小説を読み終わったあとの気分だ。
「……?」
私のコメントに、陽道君はキョトンとする。
「才能なんて、生まれたときから決まっているし、事故なんて起こしたトラックの運転手が悪いんじゃん?陽道君もなんで自分が悪いみたいに思ってんの!?なんかもう、理不尽すぎて腹立つわ!」
「……」
「それにさ、別に封印失敗してもいいじゃん。なんか、日本大混乱とかになったとしても、どっか遠い島とかにみやびと月城と逃げたっていいと思うし。楽しいんじゃない?それはそれで。」
「……ありえないな。」
声色はさっきと変わらないままだけど、ずっと硬かった表情が、若干、やわらかくなった気がした。
「……じゃあ、帰るからね、私。
とにかく、気負いすぎないでよ?みやびも月城も心配してたんだから。君は何も悪くないし。」
「……ああ。」
私はよいしょ、と立ち上がった。
すると、チラッとキッチンが視界に入る。
カップラーメンのゴミがゴミ箱いっぱいに溜まっている。キッチンの奥にある燃えるゴミの袋にもカップラーメンばっかり。
「………………はぁー。こんなご飯ばっか食べてんの?死ぬよ?そのうち。」
「…………。」
陽道君は恥ずかしそうにうつむく。
「……しょうがない。私の家来て。ここの4階だから。」
ほんとに世話のやけるぼっちゃんだ。




