苦悩と焦燥③
パチリ。目を開けると見知らぬ天井。そして見知らぬソファーの上で寝ていた。
一瞬、頭が混乱するが、すぐに一連の出来事を思い出す。そうだ、私、頭を強くぶつけたんだった。
「気がついたか。」
陽道君が私を見つめる。私はゆっくりと身体を起こす。
「うん。……あ、あの、私はプリントを届けるためにここに来て、鍵かかってなかったから、ドアを開けて、すると、、君の姿が見えまして、、えっとぉ、、、」
こういうとき、なんて言えばいいんだ?ドラマの熱血教師とか、熱血刑事って自殺しようとしている人になんて声掛けてたっけ?
「……悪かった、あんな姿を見せて。」
陽道君は素直に謝った。その顔は無表情で、心の中は全然読めないけど。
「いいよ。……それより、そうなったのって、陰の気のせいなの?」
陽道君はコクンと頷いた。
妖怪と契約すると、身体に陰の気が溜まる。普通の人は陰の気が溜まると、精神に悪い影響が出てしまう。
でも、だとしても、心が病んでしまうのは彼も承知で妖怪と契約したはずだし、自殺までしようとしたのは、重かれ軽かれ、悩みの種があったはずだ。
「ねえ、ここまでなったのって何か理由があるんじゃないの。」
「…………。」
陽道君は下を向いて黙る。……まあ、赤の他人に、ましてや、怪しい妖魔師に弱音なんて吐けるわけないよね。
「……じゃあ、みやびに連絡いれとくね。このまま放っておいて帰るのは心配だし。」
すると、陽道君は焦ったように私を見る。
「待って。話す……。2人には変な心配をかけたくない。」
「はあ。」
そういえば、2人がお見舞いに行った時、もうすぐ学校に行けそう、とか言ってたんだっけか。この精神状態で。
仲間には心配かけたくない一心で、何かと強がってたんだな。この人。
彼は少し黙った後、自身の過去について話し始めた。




