地獄の陰陽師会合⑤
ピンポーン、とインターホンの音が鳴る。
茉莉花は料理の手を止め、玄関まで彼を迎えに行った。
「いらっしゃい、潤。」
玄関のドアを開けた先には、少し照れたように笑う青年がいた。
「……悪いな。わざわざ俺の分まで夕飯を作ってもらって。」
「だから、前も言ったけど1人分作る量が増えたところであんまり変わんないの。それに今日は私が誘ったんだし。…ささ、中入って!」
茉莉花は潤をリビングに案内し、料理を完成させた後、机に置いた。
「明太子パスタか。美味しそうだな。」
潤は目を輝かせて席に座る。
「よかった。これしかアレンジレシピ思い浮かばなくて…。まだ明太子あるから持って帰っていいよ。」
「そんなにあるのか?」
「うん。福岡に行って、せっかくだからと思って買ったんだけど、1人で消費するには多くって。」
「福岡……。1人で?」
興味を示したのか、じっと目を見つめてくる。
「あ、そのぅ……。」
そういえば、福岡に行くことになった理由を話すと、瑠璃の目とか鬼の話をしなくちゃ行けないんだよなぁ。
嘘をつく理由はないけど、、、それらの話をしたら鬼門院の問題に巻き込んでしまいそうな気がする。
「…旅行!せっかくの夏休みだからさ。そうそう、そこでたまたま御堂君に会ったの。」
「理斗と……?少し詳しく話せないか。」
「う、うん。会ったのはコンビニの中で………………」
茉莉花はヤマトに"偶然"出会ったことにして、理斗の呪いを治してもらったことを話した。
だが、鬼や鬼門院が関わる縁日の不思議な体験については伏せることにした。
「…………んで、たまたま出会った妖怪の力によって御堂君の呪いが治ったの。それ以降、若干不仲も解消したんだよ。…多分。」
潤はパスタを食べ進めつつ相槌をうちながら話を聞いてくれた。
「そうか。理斗の呪いが解かれた事は知っていたんだが、理由を誰も知らなくてな。でも、茉莉花が関わっていたなんて、正直驚いた。」
「ふふ、私も旅行先で知り合いに会うとは思わなかった。しかも、まさかあんな美男子だとはね…!」
その瞬間、それまで穏やかに話を聞いていた潤の食べる手が止まった。
「…もしかして、、その、ほ、、、、、」
「……ほ?」
「惚れ、たのか…?」
いつになく真剣な眼差しで見つめられる。
…なんだかすごくドキドキする。
「ま、まさかぁ!もともと印象は最悪だし、和解した今は憎たらしい後輩って感じだよ。」
「……そ、そうか…。変なことを聞いてしまったな。すまない。」
「う、ううん!全然!…………。」
…………。
………………。
それから、なんとなく気まずい空気が流れたまま夕食を終えた。
玄関まで潤を送ると、彼はしばらく黙ってこちらを見たあと、意を決したように言った。
「……もし空いてる日が有れば、どこか遊びに行かないか?良ければ…なん、だ、けど…。」
彼は自信なさげに、最後の方は消え入りそうな声で提案した。
「…え…………。…………いい、よ?」
茉莉花は咄嗟のことで頭が真っ白になったが、断る理由もないので、とりあえずYESというほかなかった。
潤は返事が聞けると、頬も耳も真っ赤に赤らめてはにかんだ。
「……よかった。詳細はまた連絡する。今日は誘ってくれてありがとう。」
そう言って、ドアを開け、彼は去っていってしまった。
……パタン。
ドアが閉まった瞬間、茉莉花は思わず呟く。
「…それって、、、デートってこと…?」
先程の潤の一言一言がフラッシュバックし、心臓がうるさいくらい拍動する。
自分が鈍感である自覚はあるが、さすがに今日の彼の言葉の裏にある真意には気づきつつあった。
……潤が?……私なんかの事を?…………いやいや、有り得ない。
もんもんと考えていると、頭がパンクして、茉莉花は床に座り込んでしまった。




