ココからの予定
朝。
マキナと奇跡の生還を果たしたがあまり覚えてないんだよな。
あれ自体が夢だったというのはマキナが隣にいる以上あり得ないし。
すると何らかの力が働いたか。まだ私には利用価値があるのだろう。
それとも単純にマキナを救うついでに私を助けてくれたのかもしれない。
奇跡のからくりを暴かない限り私はいつまで経っても後手に回るだろう。
いつの間にかマキナも姿を消していた。
「なあ何か言ってみてくれないか? 」
ココに無理強いする。ははは…… 悪いご主人様だな。
「ですがそんなこと突然言われましても…… 」
焦ってる様子。適当は意外にも難しいのかもな。
「好きですご主人様! どうぞこの想いをお受け取りください! 」
「うーん。どうしようかな。考えておくよ」
「そんな…… 」
ココも本気じゃない。ただ慕ってくれてるは分かる。
第一洞窟から付いて来てくれたニュウニュウのかわいい真面目な女の子。
この島に来て初めての信頼の置ける人物。
そんな彼女を裏切りも失望させたくもない。
「まあいいや。それで今日の予定は? 」
「第六洞窟で午前十時から会議。十二時に第三洞窟の穴のハイド様とお食事。
二時に第七洞窟の入居者の選別。四時から見回り。六時よりココスペシャル」
どうやら今日は日程が詰まってるらしい。マキナと遊んでる暇はなさそう。
とにかく早めに済まして空いた時間でマキナの相手をするか。
効率的に情報を得られるはずだ。マキナはそれほど頭がよくないから。
恐らくまだまだ隠してるはずだ。それこそとんでもない秘密をな。
「ではさっそくお食事です」
泉で取れた小魚の塩焼き。それと砂糖水に虫団子。デザートはココミルク。
「美味いね。虫団子以外はどうにか食えるよ。
虫団子も食感と臭いと味をどうにかすれば食える」
これが貴重なたんぱく源ですからと圧が凄い。
「お口に合いましたでしょうかご主人様? 」
「いつもだけど野性味あふれると言うか食べたのを後悔したと言うか。
何とも表現しにくいんだが褒めるのは無理」
正直に伝えるのがいい。まさかこれが本気で喜ばれとは思ってないはず。
でも慣れてしまえば分からないか。
「そんなことおっしゃらずに。どれも絶品ですよ」
「ああ…… そう言うことにしておこう。それでココミルクとは? 」
「はい。ニュウニュウを使いまして…… 」
「いやいい。それ以上は結構。想像すると何かとまずいことになりそうだし」
こうして予定通りに第六洞窟で会議に参加する。
「それでは仮穴の承認に賛成の方は挙手を」
穴全員の賛成があり全会一致で仮穴に承認された。
「それで新穴の歓迎を三日後に開催したいのだが」
議長のアナログが進めるがそんなことはどうでもいい。
自由に動き回れ中島から退場せずに済むのと引き換えに参加させられている。
もちろん強制ではないが評判が悪くなってはまずいので大人しくしている。
そろそろ天女の生まれ変わりが判明し島の真実に迫りたいんだけどな。
どうもおかしな方向に進んでいる気がする。
「異議なし! 」
「ではアキラは三日後にまたここへ」
議長の挨拶で閉会。役目を終える。
次はハイドとお食事だな。
彼は穴に推薦してくれた恩人。ただ何らかの意図がないとは言えない。
「どうだ? 」
「いや美味くもなく不味くもなくと言ったところ」
ハイドの誘いを受けるが結局何がしたいのか?
お近付きの印にとよくしてくれるのは嬉しいが食事の不満は止まらない。
この島に来てからの課題だがもう諦めている。
よくこの島の人はこのような粗末な食事で我慢してるよな。
フィールドワークの経験がなかったらもう逃げ出してるところさ。
よくて泉で取れる小魚ぐらい。
それにしても二つの泉はどうやって生まれたのか?
伝説を真に受けるはずもないが知識もないので考えが及ばない。
「そうではなく例のは見つかったのか? 」
ハイドは大穴と天女の生まれ変わりについて聞いてるよう。
だがその話をしたか? 大穴はまだしも天女の生まれ変わりはしてないはず。
どこかで情報を共有してるとしか思えない。
「ああ…… 大穴は穴である君が一番詳しいだろう? 」
「確かに。するとどうやらそろそろらしい。こっちも準備を始める頃か」
意味深なことばかりで決して具体的には教えようとはしない。
まったく生意気な。そもそもが子供だからな。
穴は子供にもできるしよそ者にもできるとさ。
仮とは言え私も第七洞窟の穴だからな。今はもう対等な立場だ。
ただ推薦した訳だから恩義はある。
あのままではどこにも自由に出入りできなかった。
それほど人材が不足していたんだろうな。
「おい何を言ってるんだハイド? 」
「ふふふ…… ごちそう様。楽しかったよ」
不敵の笑みを浮かべて去っていく。
「ハイド! 」
だが相手にされずに姿を消す。
結局探りを入れて来たんだろうな。それなら監視役から聞けばいいだけ。
ココでもいいし今ならマキナでも。それをしないかできないのは機能してない?
要するにココもマキナもあちら側の人間ではないのか?
私のただの思い過ごしの可能性もある。
そもそもそんな風に考えてるのは自分だけであちらが言って来たのではないのだ。
中島には監視など置かずともどうにでもなると考えてるのかもしれない。
ハイドとのお食事を終え第七洞窟へ。
本当だったら今日ぐらいは休みたかった。
昨日のことを考えれば近づくのも中に入るのもためらいがある。
いくら鈍感なマキナだってそれは同じだろう。
しかし仮とは言え穴。ここで逃げ出せば島民からの尊敬を失う。
「アキラ様! 心配しておりました。もうよろしいのですか? 」
こちらに気づき寄って来る。どうやら思っている以上に慕われてるようだ。
では予定通り穴として入居者の選別を行うかな。
あれ…… あの白く輝くのはトワナ?
「済まない。少し待っていてくれ」
選別を遅らせてでも優先させること。
昨日の件もあるし夢のことも気になる。
それにマキナと違いトワナは消極的。
すぐにどこかへ消えてしまう。だからその前に話をしておく。
「どうしたのこんなところで? 」
そう言いながらついニュウニュウに気を取られてしまう。
しかし当然視線に敏感なトワナは睨みつける。
これが見つめ合う二人ならまだ格好がつく。
ただこれだと覗きを咎められてるようにしか見えない。
続く




