助かった?
第七洞窟の奥。光の届かない場所で助けを待つ。
「おーい誰か! 」
ダメだ。これでは聞こえるはずがない。
まずいぞ。時間が経過すれば体力もどんどん消耗していく。
なるべく動かずに回復に努めたがただ待っているのは限界。
今動かなければ共倒れだ。
だからって何をするかも思いつかない。
一人よりも二人の方が何でも話せて協力し合える。
余裕だってあるはずだが何と言ってもそれがマキナではどうにもならない。
さすがに頼れないよな。元気だからそう言う面では助かってるが。
どうであれ問題は異変に気づいているかどうか。
少なくても第七の者の何人かは我々が奥に向かったのを見てるはず。
もうとっくに探しに来てもおかしくないんだが。
「お兄ちゃん」
ダメだ。それ以上顔とニュウニュウを近づけないでくれ。
「好きだマキナ! 」
「どうしたのお兄ちゃん? 変だよ? 」
マキナはなぜか冷静。やっぱりただの島娘ではない。私を虜にする魔性の少女。
そんなガキに引っ掛かる私はどうかしてる。
でもどんなに頭の中でそう思っていても逃れることはできない。
「一度言って見たかったんだ」
「冗談なの? 本気にしちゃった」
マキナは笑ってるがその顔は晴れない。こんな顔を見せたのは初めて。
「伝説の天女のように多くの女性を好きになったらしい」
素直に打ち明ける。だがマキナが気の利いた答えを返せるはずがない。
それにしてもこんな時に愛の告白ごっこしなくてもいいのに。
私はマキナを驚かせ不安にさせてどうしたいんだろう?
「もうよく分からないよお兄ちゃん! でも一つだけね。
好きって言ってもいいけど三回は言わないでね。真実に変化するから。
「そうか。ここでは割と簡単に言ってるぞ。マキナにだってそうだろう? 」
首を振るだけ。それ以上は答えないマキナ。面倒なのかな。
「お兄ちゃんは大好き。でもそれは違うの。えっと…… 」
難しい話をしようとして自分でこんがらがるマキナ。
もう少し整理してから話そうな。
「何が違うんだよ? トワナだって言ってくれたぞ。気まずかったけど」
ついマキナの前で軽はずみなことを言う。
「マキナはマキナ! トワ姉はトワ姉! 」
答えにならない戯言を言う。
「まあいいさ。それでこの島について知ってることを教えてくれ」
「おやすみ。お兄ちゃんも寝よう。そうすればきっとどうにかなるよ」
ただ眠くなっただけのくせに生意気を言う。かわいいが相手にするのは大変。
寝て解決するならいくらでも一緒に寝てやるさ。
おっと…… またおかしな願望が入り混じる。
自分がもうよく分からなくなっている。
もしかすると女なら誰でもいいのでは?
「分かったよおやすみマキナ」
体力を無駄に使うのはよくない。寝よう。そうすればここから脱出できるさ。
誘われるようにマキナと洞窟の奥に進み吸い込まれてしまった。
もう逃れる術はなさそう。だがそれはそれでいいさ。
おかしな考えが浮かぶ前に寝るとしよう。
もう……
「ほら戻ろう。手を出して。勝手に出歩くんだから」
マキナと一緒だったからかトワナの夢を見る。
夢のトワナは常に微笑んでいた。私の愚かな行動も笑って許してくれた。
どうやら私は酷い人間らしい。マキナの横でトワナの夢を見てるんだから。
それがどれだけ傷つき辛い思いをさせるか分かっていながらつい話したくなる。
やっぱり私は最低だな。だがマキナに言って反応を試すのもいいかもな。
「マキナ…… 」
ここはどこだ?
「寝ぼけて…… 大丈夫ですか? 」
ココが姿を見せる。すると今までのは長い夢だったのか?
いやそれはあり得ない。なぜなら隣にマキナも寝てるのだから。
「おいマキナ起きろって! 」
だが死んだように寝ている。まさか本当に助かったのか?
でもどうやって? マキナが担ぎ上げた訳ないしな。
こう言うおかしな現象はこの島に来て二回目だ。
「寝かしてあげてください。マキナ様は大変疲れているかと」
マキナが天女の生まれ変わりの可能性があると知ったので対応が変わった。
でもココは初めから知ってたよな? すると私が認識すると変化するのか?
「そうだな。よし私ももう少し寝るよ。おやすみ」
それからどれだけ眠ったのだろうか?
いつの間にかマキナは姿を消していた。
「どちらへ? 」
「ナガレさんを探しに」
「ナガレさん? 誰ですかその方? 」
まるでココがココでないような反応。そう言えば私も一時期ダイボを忘れていた。
「ふざけては困る! 一緒に行動を共にした大切な仲間じゃないか! 」
つい説教臭くなる。これも当麻博士の影響か? いつもいると似て来てしまう。
嫌だなと思っても自然にだからどうにもならない。
結局自分は当麻博士についてどう思ってるんだろうか?
恩人ではあるもののその異常性に嫌気が差していた気がする。
長く一緒にいると似てくる部分も。
その分しこりと言うかわだかまりもできてしまう。
おっと…… 違う違う。今はナガレの方だ。なぜココが悪ふざけに至ったのか?
「仲間? 誰がですか? 」
「ナガレさんに決まってるだろう? あの最低なおじさんだよ。
忘れたのか? ココのニュウニュウだって狙っていた」
つい思い出してもらおうと適当に話を作る。
大丈夫。誰だってニュウニュウの誘惑からは逃れられないさ。
それが男の悲しい性とも言えるかな。
「記憶にありません。これまで私は一人でご主人様のお供して参りました。
もし不手際があるのでしたらきちんと叱ってください! 」
ココは本気らしい。どうやらナガレももう一人も忘れられているらしい。
私まで救世主で恩人の一人を忘れかけてる。あれだけしてもらったのに薄情だな。
でもそれがどうした? この島にいると記憶力が低下し物忘れが発生するのか?
ならばココさえも忘れるだろう。一日経つと忘れるとは何とも都合のいい人間だ。
これなら嫌なことも辛いことも悲しいことも忘れられるだろうな。
それは人類にとってこの上ないこと。幸福かもしれない。
もしこの現象が島の風土によって起こるとしたら?
だとすれば中島を脱出しない限り思い出せないかもしれないな。
続く




