血の繋がりなし
第七洞窟の奥深くの穴から落下。現在助けが来るのを待っている。
だが果たして彼らがよそ者を本気で助けに来るだろうか?
たとえ穴だとしてもそれは仮な訳で彼らの本心は測れない。
よそから来て引っ掻き回すただの迷惑な奴としか思っていない恐れもある。
だがそれでもマキナさえいれば本気で救出に来てくれるはずだ。
天女の生まれ変わりであるマキナを見捨てはしないだろう。
今は体力回復と情報収集の時間だ。
「マキナはマキナだよ! 」
向き直ってニュウニュウを見せつけるから危うく引き込まれるところだった。
危ない危ない。邪な感情を持ってはいけない。これも彼女の作戦だろうし。
「そうじゃない。マキナのその神聖な輝きは何だと聞いてるんだ」
「さあ…… 生まれた時から。マキナの時はいつもそう。だから分からない」
マキナはどうにか追及をかわそうとおかしな返しをする。
見極めようと目を見つめるが逸らすことはない。ただかわいいなとため息が。
まずい。またマキナにいいようにやられている。これは相当だぞ。
「マキナじゃない時は? 」
「だからマキナはマキナだよ! 」
またしてもかわされた。見た目に騙されてはけいない。彼女は知能を有している。
それとも単に口癖? マキナはマキナだよ。確かに言いたくなるよな。
おっと…… 関心してる場合じゃないか。では次に行こう。
「なあマキナ。一つでいいからトワナについて教えてくれないか」
自分のことを言いたくないのは分かった。だから今度は姉について知りたい。
お付き合いすることも考えればあらかじめ知っておいて損はない。
「うーん…… 」
そう言って人差し指を咥える。
これはお腹でも空いたか? だが生憎食いものなどどこにもない。
甲斐性のないお兄ちゃんでごめんよ。
うん? 虫が這って来た。これはダンゴムシ? いや違うな。
この島の固有種の可能性が極めて高い。
何と言ってもミハマ島の中でも中島は独特の生態が広がっているからな。
自然は人間の手でどうにかできるものではない。
そのダンゴムシの仲間がちょうどいい具合にマキナの前に。
待て…… いやこれ以上は考えたくない。でもこの島の主食は虫だからな。
「頂きます! 」
そう言うと何のためらいもなく口に入れるマキナ。
多少これで飢えが凌げるのだろうが絶対真似したくない。
どうやらまだ私はこの島の住民になり切れてないのだろう。
と言うよりも全力で拒否しようとしてる。
フィールドワークでは考えることもなく博士に早くしろと促された。
当然その時は自分だけが食べて博士は見守るだけ。
ずるいよな。でもそれが助手だと言われたら従うしかない。
今はある程度拒否できる立場だが最悪食べれなくもない。
「トワ姉はたまに島を離れてどこかに行ってるよ。
お出かけの時は大体いつも連れて行ってくれるけどそうじゃない時もある。
これでいいお兄ちゃん? 」
腹が膨れたはずもないがマキナは素直に教えてくれた。
しかしトワナが島を離れることもあるとは意外だ。
マキナが説明下手だからかイマイチ理解しづらいが。
「マキナ? 」
「マキナたちは本当の姉妹じゃないんだ。マキナとトワ姉は赤の他人だと思うの」
どんどん爆弾発言が飛び出てくる。
これはマキナをうまく誘導すればこの島の真実にたどり着けるかもな。
「へえ姉妹じゃない? どうしてそう思う? 」
トワナとマキナは姉妹ではない。すなわち血のつながりがないことになる。
それをなぜマキナは知り得たのか? 村の者は姉妹だと疑わない。
そもそも天女の生まれ変わりである彼女たちに疑問を持つ者など存在しない。
「だってトワ姉がそう言ってたから。マキナは悲しむだろうけど仕方ないって」
簡単に秘密をばらす。私を信じてだとすると心が痛む。
だがそれでいいんだマキナ。それでこそ私の見込んだスポークスマンだ。
問題は記憶力と再現力。
大事なところを間違えそうで当てにならない。そこがマキナらしいとも言える。
「初めに聞いた時は悲しくなかったのか? 」
「ううん。だってトワ姉とはいつも一緒だから。そんなこと関係ないよ」
強い子だ。本当かよ? 私を惑わそうとしてないか。
結局あの神聖な光はどう言うことなんだ?
「マキナは強いんだな。そして頭がいい」
煽てればもっとたくさん情報を与えてくれるに違いない。
すべてはマキナ次第。さあもっと優しくしてやるか。
「かわいいよマキナ。まるで天使のようだ」
おっと言い過ぎた。これではさすがにやり過ぎか。
「ありがとうお兄ちゃん。でもマキナは天使じゃなくて天女だから」
もう生まれ変わりでもないと堂々と言ってのける。
若干ニュウニュウが盛り上がった気さえする。
「お兄ちゃんのそこが大きくなったみたい。どうしたの大丈夫? 」
そう言って小さなニュウニュウをぶら下げて笑う。とんでもない奴だ。
「ははは…… 気にするな」
「お兄ちゃんには兄弟はいないの? 」
突然の質問に戸惑う。
「さあな…… 昔のことだからもう忘れたよ。でもいた気がするんだ」
何を言ってるんだろう? これではマキナが機嫌を悪くするじゃないか。
「そうなんだ。大変だね」
ただ心配してくれただけだ。いい子だなマキナは。
それにしても姉妹じゃないとは衝撃的。二人はよく似ていると思ったのに。
確かにいつも大体一緒にいるならこだわることもないのか。
でもこの話どこかで聞いたのような……
「両親とは血のつながりはありません! 」
突然降ってくるミコトの声。ああ懐かしいな。
そう言えばミコトも両親とは血のつながりはなく育ての親だとか。
でも感謝しているとも言っていたな。
そうか。これは似ているような気もする。でもどこにでもあるような話。
イチイチ気にすることでもないか。
「他には? マキナの知ってることはすべて教えてくれ。
それが信頼関係を築くことにもなる」
こんな風に頭の回転の悪いマキナを騙して情報を得ようとする。
悪い気もするが弱点を突くのも戦略の一つさ。決して悪いことではない。
だから罪悪感でいっぱいになることもない。それなのになぜか辛い。
どうしたんだろう? マキナを見ているとそんな風に思えて来る。
それはきっとマキナが私を信じ切っているからだろう。
もう少し粘ればこの島の秘密に迫られるはず。
だが耐えられない。あの純粋なマキナを裏切りたくない。
続く




