マキナと第七洞窟へ
マキナの潜り込みの件もどうにか無事解決した。
それでもココはまだ疑っている気がする。
大丈夫。これはそう見えるだけ。恐らく罪悪感から来るものだろう。
では刺激的な朝のご挨拶をしてくれたマキナから話を聞くとしますか。
「それでマキナちゃんは何の用? 」
それとなく聞いてみる。朝に人の寝床に侵入するおかしな子供ではないはずだ。
見た目のかわいさに惑わされてはいけない。
こちらの動きを探ろうとしていた?
私が寝ぼけてるのをいいことにココの振りをした。
だとすれば私は間違ってない。彼女の思惑通りに動いただけ。
たとえ事実がどうであれそう思えればまだ気持ちが楽になる。
「そうそう。お兄ちゃんと一緒に第七洞窟に行こうと思ってさ」
どうやらココもマキナも目的は同じ。
よそ者を使って一日でも早く洞窟を完成させようって魂胆。
だが私はただの助手で学者でもない上に体力自慢でもない。
フィールドワークをいくら繰り返したからって筋肉がつく訳ではない。
「いや…… まだ眠くてさ。どう一緒に寝ない? 」
懲りずに誘うとココがご主人様と睨みつける。どうやら冗談は通じないらしい。
「ご主人様? 」
お兄ちゃん…… 」
「分かったって! 行きます。行かせて頂きます」
危険を察知し従うことに。これ以上ご主人様像を壊してはまずいよな。
「よし行こうお兄ちゃん! 」
そう言うと着替えもロクにさせずに引っ張っていく。
どうせT-シャツとズボンのセットだけど。
これが最後の替えだから多少もったいぶっている。
「待ってくれよマキナ! 後のことは頼んだぞココ」
マキナに引っ張られながらもどうにか。そう言えばナガレはどうしてる?
「お待ちください…… マキナ様に手を出してはなりません。
それだけはご理解下さい。大変なことが起こります」
大声で言わなくても理解してるっての。
心配性のココの見送りを受けて第七洞窟へ。
はあはあ
はあはあ
もうすぐにでも息切れすると言うのにマキナは元気だ。
ほらこっちだよと笑う。うん何てかわいらしいのか?
こんな娘がいたらな…… つい理想的なマキナに心を奪われる。
もちろんこれは愛や恋と言ったものではない。
元気で明るく素直でかわいらしいマキナは私の理想の娘なのだ。
ただ私には少々手に余るニュウニュウの小さな大き過ぎる娘。
さすがにこの年の娘を持つには早過ぎる。
お兄ちゃんと呼んでくれるけど妹には年が離れすぎている。
「おいマキナ! もう少しゆっくり。急ぎ過ぎると転ぶぞ! 」
「お兄ちゃん早く! 」
気にすることなく走って行く。
すっかり人見知りもなくただ自由気ままに走り回るマキナ。
ははは…… まだまだ子供だな。
「あれ穴様ではありませんか? 」
昨日まで一緒に土を運んだ者たちが駆けよって来る。
そう言えば昨日の会議で第七洞窟の穴になったのだった。
男たちがこうなら女たちはもっと熱烈な歓迎をしてくれるのでは?
邪な心が芽生える。でも大丈夫。私は当麻博士のようにはならないさ。
だからあちらからすり寄られても自分を保つ為に無視すると決めている。
でもそれが上手く行くかと言えば分からない。
ココのように人が変わったような対応されてはどうにもならない。
ただココの場合は元からご主人様と慕ってはいたのだが。
穴は一体何をすればいい?
まだ完成されてない第七洞窟を見て回るぐらいしか思いつかない。
できれば一人や二人ではなく大勢で見て回れたらな。
そうすれば迷ったり落ちたりしないだろうから安全で楽しい。
やっぱり一人では心細いよな…… いやそれでは穴としてあまりにも情けないか。
これでは奴らに舐められてしまう。
「ほら行こうお兄ちゃん! 」
ワクワクが堪らないとはしゃぎ続けるマキナ。
いや少しは落ち着けよ。穴の中なんてどこも似たようなものだろう。
違いと言えば土とか砂とか。作者の想像力任せ。
「マキナちゃんはここ初めて? 」
「うん。一人で勝手に動くなって。だから見学も危ないからさせてもらえないの」
第五洞窟で大切にされている。言い方か。これでは幽閉されてるようなもの。
必要だから…… 大切だから厳しくされてしまうマキナ。
それを理解するほど知能が発達してるとは思えない。
可哀想に。もっと自由に遊ばせてあげても…… いや余計なことか。
島のことに口出しするのは最も嫌われることの一つ。タブーだ。
フィールドワークでもそれだけは避けるように博士から口を酸っぱく言われたな。
注意されるまでもなくそこまで込み入った話には関わらにようにしていた。
ただこれはフィールドワークじゃない。自分の価値観で考えて問題ない。
もう私はよそ者でもない。穴としてバンバン余計なことも言おうと思ってる。
「ここで大人しく…… 」
勝手はできない。危険な目にあわせたら責任は取れない。
どんな仕打ちを喰らうか分かったものじゃない。
「いや! お兄ちゃんは穴でしょう? だからマキナを案内してよ! 」
どうやらそこまで頭が悪い訳でもないようだ。
子供だと思って舐めたら痛い目に遭うぞ。でもかわいいからつい……
「よしではマキナお嬢様どうぞこちらへ」
紳士に対応する。それが男と言うものだろう。
マキナのご機嫌を取り情報を得るのも悪くない。
ただ適当でいい加減な感じがするからあまり信用ならないが。
「それでお姉さんのことなんだけど…… 」
マキナもかわいいがトワナの方が気になるからな。
初対面で思いっきり睨まれたと思ったら突然好きだともはや意味不明。
でも告白されて嬉しくない男はいない。
できるならその真意が測れればな。マキナから聞くのが一番いい。
「もうマキナだけ見て! 」
まるで大人だ。我がままだがそれも悪くない。
「マキナはかわいいけどまだ子供だから…… 」
つい否定的なことを言ってしまう。
気にしてることなのにデリカシーが無さ過ぎるよな。
「子供じゃない…… 立派だもん」
おっと泣き出しそうになる。いややり過ぎたか?
「でもほらそのニュウニュウが…… 」
まずい。余計に追い詰めてしまう。私は一体何をしてるんだろう?
マキナをいじめて楽しんでるガキかよ?
「確かにニュウニュウは小さいよ。でもそれは関係ない! 」
ダメだ。ついに怒ってしまった。
止めるがどんどん先に行ってしまう。
それではマキナと短い間だが父と娘の親子プレーでもしますか。
続く




