洞窟奥深く
マキナと第七洞窟の秘密に迫る。
「お兄ちゃんの馬鹿! 」
叫び声は聞こえるがどっちに行ったか不明。
道が三つに分かれていてもうどうすればいいか分からない。
急がないとマキナが危ないと言うのにもうパニック寸前。
いやどうせマキナのことだから何も考えずに真っすぐ進んだに違いない。
本当に困った娘だ。親子プレーせずに勝手に先に行きやがって。
「おい! それ以上進むんじゃない! マキナ戻って来い! 」
まずいぞ。ちょっと目を離した隙に大変なことになったぞ。
これは大失態。トワナだけでなくココにも会わせる顔がない。
初めての場所でこれ以上のリスクは取れない。
ここは一旦戻って態勢を整えるべき? それとも先に進むべきか?
ダメだ。どれも選べない。これでは穴どころか保護者失格だ。
きゃああ!
叫び声? 当然これはマキナの声だ。何かあったのだろう。
ただ興奮しただけならいいのだがそんな訳ないし。
クソ! 急ぐなと勝手に先に行くなとあれほど注意したのに。
どうして守ってくれないんだよ。これだから子供は……
急いで叫び声のする方へ。
「おいマキナ…… 」
恐る恐る先に。あまり見たくない光景。まさか穴にでも……
「階段があるよお兄ちゃん」
あれだけ叫んだのにケロッとしてる。
「大丈夫か? どこも怪我してないな?
ほらニュウニュウが汚れてるじゃないか」
優しく叩いてあげようとしのになぜか嫌がる。
「もうお兄ちゃんのエッチ! 」
「いやお前が自分でできないから…… 」
あれ何だか言い訳してるっぽいな。でもこれはとっさのことで不可抗力さ。
どうやら無事だったらしい。それでなぜ叫び声を?
いくら聞いても忘れたと言うばかり。どうせ躓いて転びそうになったんだろう。
急ぎ過ぎたら危ないんだからゆっくり頼むよ。
それが初めての場所に行く時の心構えだろう?
やはりマキナと二人きりは危険だったか?
ココも連れて来ればよかった。
今更後悔しても遅いがここで引き返せば傷は浅くて済む。
冒険にワクワクしてるマキナには悪いけどやはりここまでにしよう。
過信して道に迷えば取り返しのつかないことになる。
何と言っても私の特技は迷子だからな。
フィールドワークでも博士に頼り切りだった。迷う自信はある。
それは何も考えてなさそうなマキナも同様。
たぶん単純な真っすぐな道だろうがそれでも油断してはいけない。
初めての場所は細心の注意を払うべきだ。
「なあマキナ。お前は階段を知ってるのか? 」
「うん。マキナを馬鹿にしてる? 階段なら第六洞窟にもあったでしょう? 」
マキナはさも私も知ってような口ぶり。そう言えば裏口から侵入して階段へ。
その時落とし穴に嵌ったか何かで落下。大人しく戻ったっけ。
洞窟に階段? 珍しいと言うか違和感。
この第七洞窟はそもそも高さはさほどないはず。
あっても二階。せいぜい三階まで。
しかし地下がどうなってるかまでは外からでは一切分からない。
行ってみて初めて実感するもの。
すべて見回ればいい。全体を把握すれば分かること。
それも穴の役目の一つ。完成するまでの暫定的な穴とは言え見て回りたい。
しかしその案内役がいない。いるのは幼く頼りないマキナのみ。
大丈夫。任せてと調子のいいことを言うがどうも信用できない。
ただはしゃぎ回ってるようにしか見えない。
「どうだマキナ? 」
「暗くてよく見えないよお兄ちゃん」
この辺りで明るく照らすものはマキナの発光とランタンのみ。
「階段降りる? 」
マキナが誘う。
しかしどうせ全部見ないとならない。ならば前に進むしかないだろう。
行き止まりになったら戻ってくればいいだけ。
ただ分かれ道を直進して階段まで進んだのだから。
戻るのは難しくない。階段を上ればいいしそこから道を引き返せばいい。
ただ正直暗いのでそれでも合ってるのか間違ってるのか不安を覚える。
「よし行こうマキナ! ついて来い! 」
勇気を出して先に進む。大丈夫慎重に進めば危険はない。
先に行こうとするがマキナが先と譲らない。
おいおい穴の命令に背く気か? いくらマキナが神聖な存在でも許されない。
マキナははしゃぎながら下って行く。いや危ないって。
でもいくら注意したところで聞きはしない。
それがマキナのいいところであり欠点でもある。いやいいところは言い過ぎか。
マキナが急ぐものだから慎重に進むのがバカバカしくなる。
しかし彼女だけは守られる存在だった場合はまずい。
あるいはこの世の者ではない場合私だけが危険な目に遭うことになる。
それはさすがに遠慮したい。だから安易にはついて行かない方がいいだろう。
徐々に第七洞窟に広がる巨大迷路に吸い込まれていくよう。
「なあまだか? これ階段だよね? 」
急でもないので一気に降りてはいないがもう地下一階ってレベルじゃない。
一体ここの階段と言うかはしごは何段あるんだよ? もう疲れたよ。
「バカが! これくらいで音を上げてる奴があるか! 早く私をおぶらんか!
この世紀の大発明者であり大発見者を敬うのだ! 」
突然当麻博士との思い出がよみがえる。
こっちだって疲れてるのにおぶれだからな。どうかしてるよ博士は。
いつもの爺の我がままだけどこんな時に発動しなくても……
今博士はどうしてるのかな? 大人しく寝てくれてるといいんだけど。
まさか夜に病院のベットを抜け出してたりして。
ははは…… あり得ないか。いや博士ならあり得るから笑えないんだよな。
おっと今はつまらないことを思い出してる時ではない。
ここをどうにか切り抜けるのが先決。
「どうしたマキナ? 」
「行く? 」
いやそのために来たんだろう? いちいち聞くなよな。
早く行けと命じる。するとマキナはとっとと先に行ってしまう。
まずい。怒らせたか? まあいいや。まだ子供だし単純だから。
後でアメでもあげれば機嫌は戻るだろう。
こうして第七洞窟の地下深くまで来た。
「なあマキナ? これ以上はもういいんじゃないか? 」
穴として視察するべきだが未完成の場所。これ以上は危険を冒してはならない。
マキナだってすべて分かってる訳でもないのだから。
続く




