仮穴
第六洞窟では現在第七洞窟の穴決めが行われている。
ハイドの推薦で穴の候補者に。
冗談かと思いきや議長のアナログが反発する穴たちを説得してしまう。
これはもう逃れられない。大人しく従うとするか。
ここまで来たのは何も穴になりたかったからではない。
ただ第六洞窟の穴に挨拶すること。
できたら大穴の紹介と天女の生まれ変わりについて意見を伺えればなと。
それがどう言う訳か島の重要イベントに巻きまれた。
ツイてるんだかツイてないんだか。
メリットがデメリットを上回っている以上成り行きを見守るしかない。
「ではアキラ君。決意を述べられよ」
議長に促され一言述べることに。
だが想定外でいきなりのことで固まってしまう。
「待った! やはり彼には荷が重いのでは? 」
第六の穴が能力を疑う。彼こそ四年前に同じように穴に選ばれた者。
これでは先が思いやられると疑問を口にする。
「大丈夫。多少緊張してるだけ。まだ候補に過ぎません。
それと正式に候補となった者に疑問を呈するのはおやめください。
一応彼は私の付添人。これ以上の侮辱は控えて頂きたい」
誰にも怯まないハイド。
さすがは第三洞窟を支配するだけのことはある。
「では一言頂きます」
第六の穴が黙ると一気に視線が注がれる。
「私はこの島の真実を追求しよりよい世界を作って参ります! 」
随分と抽象的でおかしなことを言ってるなと自覚がある。
でも仕方ない。急な話だからな。ただの悪ふざけだろうがまあなるようになる。
「よし彼はどうでしょう? 」
「うーん」
「もう少し見ないことには判断がつかない」
どうやら未知数だと不安がる声が多数。
「三名の候補者が選出されました。
第七の穴に相応しいと思う者に投票してください! 」
投票タイムに突入。
候補者は順にオヤスに相談役に私だ。
一人一票。穴に相応しい者を書いてもらう。
「では皆さん投票を終えましたね? 結果発表です! 」
議長が読み上げる。
一人一票で第六までの穴だから六名で投票。
並んだ場合は二人による決戦投票となる。
「オヤス一票」
「おお! 」
どうやら第一洞窟の穴だけのよう。ちょっと恥ずかしいな。
待てよ。私も同じだったらどうしよう? 急に自信がなくなる。
「相談役に二票」
「おいおい嘘だろう? すると第七の穴はあいつでは…… 」
「これは面白くなって来た」
ざわめき出した。もうすでに決してる気もするが……
一応は最後まで見るとしよう。
「アキラ三票」
「うおおお! アキラ! 」
「おめでとうアキラ君! 君が第七洞窟の仮穴だ」
議長の言葉でようやく実感が湧く。
拍手で称えられる。
こうして第七洞窟の仮穴はこのアキラに決定した。
「ありがとうございます。完成までの短い間ですが穴を全うさせて頂きます! 」
つい興奮して真面目な挨拶をするがでもこれって嵌められてないか?
「アキラよかったな。推薦した甲斐があった」
ハイドが本気とも冗談とも取れる感想を述べる。
とは言え彼のお陰に違いない。これである程度自由に動き回れるぞ。
今までは見知らぬよそ者。島長のお墨付きがあってもまだ認められてなかった。
それが第七の穴になれば穴様として敬われるはず。
「ハイド…… でも私に務まるかな? 自信はないんだ」
「おいおいもう自信をなくしたか? 大丈夫。穴など誰がやっても変わらない。
問題は自信を持つこと。真面目に務めることが求められる」
ハイドから穴の心得を学ぶ。しかしいい加減であまり当てにならない。
会議を終え第六洞窟の穴が参加者のお見送りをしている。
「先ほどは失礼したねアキラ君。私は第六洞窟の穴のロークだ。以後よろしく。
今日はここで泊まって行くんだろう? 手の空いてる者はお供を早く。
アキラ君を困らせてはいけません」
静かで懐の深い立派な男。さすがは穴。
先ほどまでのわだかまりを捨て歓迎の姿勢を取る。
これでほぼすべての穴との友好な関係を築けたかと。
ただ穴活動に力を注ぐあまり目的を失っては本末転倒。
おかしな穴に祀り上げられて浮かれていてはいけない。
「お構いなく」
「そうは行かない。第七洞窟の穴だからね。楽しんで行ってよ。
明日にでも一緒に大穴のところへ参りましょう」
ついに大穴までたどり着いた。恐らくこれで上手く行くはず。
残すは天女様の生まれ変わりだが…… うーん。どうするか?
マキナとトワナのどちらかだと判明した。
第七洞窟の穴にまでなったのだからもうゴールも間近。
さあ第二の島・中島を完全攻略と行こう。
第六洞窟では新しい穴の歓迎に大忙し。
ハイドもアナログもオヤスも相談役もどうやら自分の洞窟に戻ったよう。
ココとナガレと共に盛大にもてなされる。
とは言っても食いものは泉で取れたマス尽くしだが。
それでも虫や幼虫でないだけどれだけマシか。
水も心配ないから自分のおしっこを飲むことはない。
ココに飲ませられないのが残念だがそれは人間的に終わってる。
それにしてナガレも嬉しいだろう。ココはもう言葉も発せられないぐらい。
この中島では穴はたとえ自分の穴でなくても憧れの対象。
恐れ多い存在だとただ頭を下げ続ける訳の分からないココ。
「ははは! 愉快だ。ではミビ茶で乾杯と行きましょう! 」
ついに調子に乗ってミビ茶で満たされた杯を捧げる。
「おう! いいですねアキラ様! もっと」
つい言われるまま羽目を外し遅くまで飲んで食って踊ってのバカ騒ぎ。
乗せられてしまったがこれくらい当然許されるよな。
「アキラ様! 私舞います! 」
ココがこの島に伝わる舞を披露する。
まずは目をつぶり一分近く微動だにせずしてると突然どこからか太鼓がドンと。
それを合図にココの目が開き体ををクネクネして左に右に。
それを終えると今度は前に後ろに。腰を振り手を頭に上げ回転。
目が回らないかと思うほど。徐々に早くなっていく。
そしてゆっくり回転を落としパッと姿勢を正しピンと胸を張ってストップ。
こうしてココは舞を終える。
「ふう…… いかがでした? 」
「よかったよ。まるで女神様が降り立ったかと思ったよ」
多少大げさに褒めるがこれは島民を侮辱したことになるかもな。
何と言ってもここには天女伝説があるからな。
ただそれほど素晴らしかったのだが。
続く




