第七の穴
第六洞窟へ。
中は圧迫感もなく意外にも広い。
本来暑くもなくどちらかと言えば涼しいのだがどうも熱気が漂っている。
「どうしたアキラ? ついて来いと言ってるだろう? 」
ハイドはわざわざ付添人に任命してくれた。
本来もっと信頼の置ける者をつけていたはずで。
その者はココと外で待機。何だか凄く悪い気もするがこれもまた仕方ないこと。
割り切ってるつもりだがどうもね。
付添人の役割はただの補佐では終わらない。
ハイドの話では穴以外で唯一会議に参加できると。
ナンバーツーに当たる人物だとか。
だがそれがなぜ私になるのか? あまりにもふざけ過ぎている。
それともこれも含めて奴らの思惑通りだとしたら?
とてもハイドの思いつきには思えない。
「どうした? 聞こえないのか? 急ぐぞ」
「はいハイド様! 」
なぜ使用人のような真似しないとならない? これでは博士の助手の時と同じ。
命令されるのは楽だがどうもハイドのペースに持って行かれてしまっている。
穴たちが集う会議室なるところへ。
ここには何と一堂が会せるようにと大きなテーブルがある。
それだけじゃない。きちんとイスまであるじゃないか。
中島の島民たちはこの事実には恐らく気づいてないだろう。
ここだけはなぜか本土と変わらない。そう言えば第五洞窟にもイスはあったっけ。
まさか民は知らずにごく限られた上の者が富を独占し搾取している?
穴とはそれほど偉いのか? あまりに外の世界とかけ離れている。
するとその穴をまとめる大穴はもっととんでもない存在なのか?
「済まない遅れたな。第三洞窟のハイドだ。今日はよろしく頼む」
挨拶して席へ。
最年少のくせに生意気な口を叩く。
いくら穴が対等だとしても先輩方がいながらその態度は許されるのか?
ついハイドのことが心配になる。これも付添人として当然の感情。
ハイドが目をつけられるとこっちにまでとばっちりを喰うことになる。
潜入早々に追い出されたら努力が無駄になる。
誰もハイドを気にする者はいない。
あれ…… 知ってる顔が揃ってる。そうか穴が一堂に会したんだから当然か。
ここ数日の間に会った者ばかり。挨拶をし交流を深めておいてよかった。
どうやらただのよそ者として排除されることはないよう。
気づかれたか? しかし皆無反応。付添人などに興味ないか。
よく見ればそれぞれの付添人が甲斐甲斐しく世話をしている。
特にあの第二洞窟の相談役は優秀だ。当然私のことも一瞬で理解したらしい。
するとあの男が第二洞窟の穴? 初めて見るな。
「では始めましょう。第一洞窟の者です。それではよろしく」
よく見ると穴だ。その隣にはやる気のないオヤス。
あまり直視したくない。また会ってしまった。第一島人。
あちらは相手にもしてないよう。本当に困った。
「それでは議長は第四洞窟のアナログ様に」
「うむ。アナログである。これから第七洞窟の穴を決めたいと思う。
優秀な者をぜひ選びたい。皆協力を頼む」
こうして第一段階へ。
暇だな。今作りかけてる洞窟の穴などどうでもいい。
何だか長くなりそう。眠くなってきたぞ。
それでも付添人は基本的に穴の後ろで立っていないとならない。
まずは穴を決めてそこから第七洞窟に移る者を決める。
だとしても移る者から選ばせればいいのでは?
穴候補に第一洞窟のオヤスが推薦された。
「はいい! そうですね…… うーんとよろしくお願いします。はいい! 」
緊張したのか短い上に内容はないしそもそも話が入って来ない独特の喋り方。
私はまだ慣れたがそれでもどうもふざけてるように聞こえる。
まだ保留のよう。そつなくこなすがまだ穴としての統率力がないと判断された。
第七洞窟の長。穴選びは簡単ではなさそう。これは難航するか?
第六洞窟ができたのは四年前だから随分経っている。
そこから狭くなったのか人が増えたのか新たな洞窟を作ることに。
「よしでは次の者」
誰も手を挙げたがらない。適任者はいないかに思われた。
仕方ないと第二洞窟の穴が推薦。当然相談役を推す。
「嬉しい限りです。第七洞窟を必ずや素晴らしいものに。どうぞお力添えを! 」
相談役は隙がない。これは当確か?
だが異論が出てしまう。それはすべて相談役の年齢を憂慮して。
結局新しい洞窟の穴には年を喰い過ぎてると。
その一点のみ。とは言え致命傷な気もする。
「他には? 」
候補者の選出。だが誰も手を挙げない。
見かねた議長が皆を見回して促すがそれでも沈黙が流れたまま。
どうやら相談役ほどの適任はいないと。
穴決めは独特でまずは推薦人から候補者が。相応しければ即決。
だがまだと見たら二人目へ。それでも無理なら三人目を。
それでも不十分となったらこの三名より投票を行う。多数決で最後に決める。
だから次は最後なので慎重になって誰も動こうとしない。
「第七洞窟が完成するまでのつなぎでいい。それまでの間の仮穴を決める! 」
「待て! 待ってくれ! 」
「仮とは何だ? 聞いたことがないぞ」
議長の一言でそれぞれ意見を言うが議長が決めたことなので逆らえない。
「皆の者。仮穴の候補者三人目を選出してくれ! 」
すると手を挙げようとする者が。しかしすぐに戻す。
やはり穴決めは慎重で難しいよう。
「では私が」
静かに見守っていたハイドが手を挙げるとなぜか私を推薦する。
「この付添人のアキラを推薦したい! 」
ハイドの暴挙で私に視線が集まる。いや何だこの展開?
「待て! よそ者が穴など聞いたことがないぞ! 」
穴たちから当然の意見が。これにどう対応するのか?
「いやよそ者でも構わない。そうですね議長? 」
「うむ。私もハイドの言うように彼が第七洞窟の穴に相応しいと」
議長の一言で大騒ぎがすぐに引いて納得の表情を浮かべ賛成に回る面々。
どうやら外からの風が必要だと判断したのだろう。
これからどうなって行くことか。
第七洞窟が完成するまでの暫定的なトップ。
トップである穴がいないと動きが取れないと白羽の矢が。
いやそれでも無茶苦茶だ。
私には第七の穴など務まるはずがない。
ハイドもアナログも一体何を考えてるんだ?
続く




