絞られた天女の生まれ変わり
バックスの案内でついに第五洞窟の奥にある泉へ。
ここは天女が天界から降りたと言われている神聖な泉。
外にある泉は実はただの泉だと第五の住民は考えてる。それが争いの火種。
外の泉も第二と第四洞窟の住民が互いに譲れないと争っている。
その上でこの泉だから。一歩間違えれば何が起きてもおかしくない。
水の独占と天女伝説発祥の地を巡ってプライドとプライドがぶつかっている。
ただここは本物で未だに天女が棲まわれていると信じて疑わない。
だからそれをお守りする神官がいるのだとか。それが彼女たち。
そう生まれ変わりだけでなく天女もお守りする任務がある。
「もうお判りでしょう? 」
そう言って前方を指さす。バックスだけに後方に控えようとそこを動かない。
一人で行けとつれない。少しやり過ぎたかな。
だがこれでまた一歩この島の真実に近づいたことに。
ではこの目で確かめて来ますか。
前方には確かに泉が。そこには素っ裸の女性が二人。
何て大胆なんだ。どうして無防備にすべてを晒そうとするのか?
ニュウニュウだけならまだしもすべてだからな。
沐浴とは本来そう言うものか。それを見れるのだから光栄なことだ。
あれ…… 光が? 何となく光が見えるぞ。光を纏っているよう。
神秘的に輝く二体の天女が泉で戯れる。まるで別世界のような芸術的光景。
その近くには衣が。先ほどまで纏っていたであろう衣が置かれている。
その衣は恐らくあの相談役が言っていた天女の衣に違いない。
問題はなぜこんなところにあるのかだ。
いやもう魅入られてどうにもならない状況。
これくらいでいい。刺激が強すぎて心臓に悪い。
ここは思い切って話しかけるか。それとも……
バックスを見るが何も発さずひたすら待機している。
「なあ…… 」
あれ…… 私は何をしようとしているのだろう?
まさか穢そうとしてるのか? 邪魔しようとしてるのか?
ただそれ以上何も発せられない。これでは戯れてる二人には到底聞こえはしない。
「お待ちください。終えるまでは何もせずお願いします! 」
堪らずにバックスが声を上げる。
結局どうにもならなくて注意するなら最後まできちんと案内頼むよ。
私だって穢すようなバカな真似するはずない。常識ぐらいあるさ。
バックスに言われるまま引き返す。
「すると天女の生まれ変わりは彼女たちだと? 」
「はい。ですが彼女たちのどちらかがです。マキナ様かトワナ様か。
それはあなたが見極めること。これ以上は受け付けません」
バックスはもう知らないと投げやり。
自分のせいで正体が発覚したことを後悔している様子。
少し悪い気もするがこれもきっと予定通りなんだろう?
それに私には早く見つけることが何より大事。
「もちろんバックスはどちらが天女の生まれ変わりか知ってるよね? 」
素直で口が軽い彼女がどこまで耐えらえるか試す。
悪いなと思いながらもそれでもここでしか手に入らない情報もある。
「はい。当然。あなただって今までのことを振り返れば必ず分かること。
ちなみに二人に聞いても教えてはくれませんよ。
残念ながら本人たちも知らないことですから。初めはね……
島民たちもどちらかだと言うだけで本当のところは聞かされてません」
バックスはとんでもないことを言う。
今までのことを振り返ればどちらが天女の生まれ変わりか分かると断言する。
しかしそれはどう言う意味だ? まさか天女の生まれ変わりには共通点がある?
要するにそれはミコトと比べればいいと言うことか?
それとも別の意味があるのか? とにかく記憶がポイントになるだろう。
するとまさか…… いやあり得ないか。これは私のただの妄想さ。
自分の罪を軽くするためにこじつけたに過ぎない。
何だって自分の都合のいいように組み立てればすべてハッピーエンドさ。
それにもしそうなら後島に行く必要さえない。だからこれは心に留めておこう。
ただどうであれ今自分はこの島の真実に迫ろうとしている。
「するとマキナかトワナのどちらかが天女の生まれ変わりだと」
「はい。ですが言った通り本人さえも知らないこと。
できればそうっとしておいてあげてください」
頼み込まれては弱い。しかしそうはいかない。
ここまで来たらどちらが生まれ変わりか特定してやる。
ふふふ…… 中島には天女の生まれ変わり候補が二名いるらしい。
収穫だ。大収穫だ。これで天女伝説と金銀財宝にまた一歩近づいたことになる。
後はゆっくり見極めればいい。時間はたっぷりあるのだから。
第六洞窟へ。
第七洞窟では現在中島の者たちが力を結集して新たな洞窟を作ろうと奮闘中。
私も手伝わされた。明日もまた手伝うかと思うと憂鬱だがそうも言ってられない。
「ここが第六洞窟です。どうぞ中へ」
そう言って相変わらず遠慮がちの二人。いい加減一緒に付いて来てくれないか。
あれ…… 目つき悪い二人組が槍を手に睨みつける。人相も悪く血色もよくない。
これは何かしらの重い症状を患っているのでは?
「何だお前は? 」
「それが…… 旅の者でして。現在この中島にて滞在しているアキラと申します」
丁寧に対応して決して怒らせないようにする。
それにしても厳重だな。何かある?
「聞いている。だがここは通せない。大人しく戻るがよい」
槍を突き立てて脅しをかける。いつでも攻撃できるんだぞとまるで子供。
相手にするのも馬鹿らしいが入口が塞がっていてはそうもいかない。
「ですが私は大切な用がありまして」
「うるさい! お前のことなどどうでもいい。この島から追い出してやろうか?」
ダメだ。あまりにも頑なでどうにもならない。ここは一度出直すか?
しかし日を改めてもどうせ通してくれないだろうさ。
それにしてもこの第六洞窟では何が起きてる? 起きようとしてる?
「ううん? これ以上抵抗するなら力づくで排除するぞ! 」
そう言われては渋々下がるしかない。
入口を塞がれて結局ココたちの元へ戻る。
「ココ? 」
何か知ってる様子。この第六洞窟では何が起きてるのか?
だがココは何も知らないと首を振る。
仕方ない。自力で突破するか。大丈夫。今までが異常に運がよかっただけ。
得体の知れないよそ者を穴の前には引き連れて行けない。それが常識。
だからってこれで第六洞窟を諦めて堪るか。
監視の目はまだこちらに向いている。しつこい。
とりあえず大きな第六洞窟を一周してみるか。手掛かりがあるかもしれない。
続く




