ナガレの苦悩
トワナとマキナ姉妹に会うつもりだと言うとナガレの顔が険しくなる。
「危険だ。まだ君は人間ができてない。下手すると取り込まれるぞ」
忠告するナガレ。まるで子供の脅し。そんな単純な手に引っ掛かって堪るものか。
早く会って天女の生まれ変わりなのか確かめる必要がある。
仮にそうなら半分目標を達成したことになる。
後は大穴と呼ばれる中島の支配者を見つければいい。
そしてこの島だけでなくミハマ島全体の秘密に迫れればきっと天女伝説も自ずと。
たとえあの二人が天女の生まれ変わりでなくてもそれが分かっただけでも収穫さ。
「その言い方だと私がまだ未熟だと言ってるようなもの。
いくらナガレさんでも言っていいことと悪いことがある」
ナガレはさっきからずっとおかしかった。まるで私の計画を邪魔するかのよう。
それでもこの島では唯一の理解者。厳しい言葉も受け入れようと思う。
でもやっぱりどこか不自然なんだよな。一体どうしたんだろう?
「いいか! 幻想を抱くな! 簡単に見つかるとは思わないことだな」
もはや喧嘩腰。ありがたい言葉も受け入れにくい状況。
何だよナガレさん。人の気持ちも知らないで好き勝手抜かしてさ。
それは確かに初めは財宝目当てでそのことは島長にも伝えた。
だけど今は違う。ミコトの思いに応えるためにもこの島の真実を暴くんだ。
それはこの島に行く前にナガレにもきちんと伝えといたはずなのに。
「いないかもしれないんだぞ? 」
「分かってます。亡くなった者は決して戻って来ない。きちんと現実を見てるさ」
「いや…… そうではなく…… いるかな」
「はあどっちなんですか? 生まれ変わりはいるんですかいないんですか? 」
「そうだな。生まれ変わりについては残念だがいない可能性もあるぞ。
特に君の言を信じればいないことも充分考えられる」
ナガレの予言だろうか。なぜ今になってそのようなことを言うんだ?
知ってるくせに引っ掻き回して何がしたい? それがナガレの役割か?
「いない? まさか天女の生まれ変わりがいないと? それはあり得ない。
そうだよなココ? 」
ココを見るがただ首を振るだけ。
まるでナガレの役割を受け継いだかのような錯覚を覚える。
とにかく今はあの姉妹に会うことが先決だ。
「済まないアキラ君。つい血が上ったようだ。だが慎重に頼むよ。
それとこの俺の苦悩も少しは理解してくれ」
「ナガレさん…… 」
「あらご飯は食べれますか? 」
突然女性が勝手に話に割り込む。様子を探りに来たんだろうな。
当然か。ここは男子禁制の花園。そこに二名もいては穏やかではいられない。
「いえ…… 食欲はあるんですが苦手で…… 」
虫料理はもう限界。茶碗蒸しなら食べれるけどこれ以上はハードすぎる。
体だって本調子とは言えない以上無理して食べないようにする。
下痢や食中毒にでもなったら大変だ。無理して食べない。それが生き残る術。
「悪いね。彼はまだ食欲がないらしい」
ナガレが補足する。断り辛かったので助かった。
「それは残念。前島から取り寄せた高級シーフードですがでは次の機会に」
「いや…… 待って…… 」
つい声が出てしまう。
「はい? 」
「いや何でもない。行ってくれ」
私のために特別に取り寄せたであろうご馳走を下手な言い訳で台無しに。
「はい…… そうだ。トワナとマキナさんたちはどちらに? 」
「二人は現在泉で…… 役目を果たしてます」
そう言ってそそくさと戻ろうとしたところで付け足す。
「ああ泉と言ってもあちらではなくこの洞窟の奥に進むとあるんですよ。
誰か手の空いてる者に案内させましょうか? 」
これはラッキー! 探し回らずに済む。せっかくなので好意に甘えるとするか。
ココもナガレも当然ついてくるそう。これなら安心だ。
だがバックスが客人以外は招待できないと頑な。
では泉に向かいますか。
バックスと言う多少大雑把で激しい感じの女性の案内を受ける。
「あの…… 一つ聞いても? 」
格好つけるつもりはないがどうしても若い女性には格好をつけてしまう。
これでは博士じゃないか。でもこの島に来てから自分が変わってる自覚ある。
「どうぞ。でも言われてるからな…… いえこっちの話です」
ココとナガレは同行拒否され二人きり。だから何でも聞けるしやれもする。
特にバックスはオヤスやココとは違って口が軽そうだしいい加減だ。
もしかしたら本当に天女の生まれ変わりに会えるかもしれない。
「天女の生まれ変わりが誰か知ってるの? 」
まずはシンプルに聞く。それからもっと詳しく丁寧に聞こうかな。
「はあ知る訳ないでしょう? 興味ないし」
おっと…… おかしな返しをするバックス。どう言うつもりだ?
この島の者は当然誰が穴で大穴で天女の生まれ変わりか知っている。
聞かされてるし話にも出るのだから知らないはあり得ない。
そういう意味でバックは答えを間違ってしまったらしい。
「バックスさんあなたが知ってるって聞きましたが」
少し汚いが情報収集など所詮は騙したり信じ込ませるもの。
果たしてバックスは一体どこまで知っているのか?
「いやだから…… 」
慌ててもう次の言葉が出て来ない。可哀想な気もするがこれも戦略。
罠に引っ掛かって全部吐いてくれるといいんだがそう簡単でもないか。
「バックスさん? 聞いてるんですか? 」
「もうバックスでいいから。それで何が聞きたいの旅の人」
どうにかごまかそうとするがこれでは時間稼ぎにもならない。
らしくなく口と尻の軽い女を寄越したものだ。
だがこれでさえ奴らの思惑の可能性もある。
とにかくここはありがたく頂くとしますか。
「だから天女の生まれ変わりはどこに? 」
「それはミハマ島には四名いると聞きました」
どうやらまだシラを切り通せると思ってるらしい。私も舐められたものだな。
「そう。ミハマ島には四名。前島にはミコトが。だからこの中島にもいるはず」
「確かに…… 」
困ったと急ぎ足になる。だが逃して堪るか。
ここは何としても彼女から教えてもらわないと。
「だからどこに」
しつこく聞く。続ければ相手も折れるに違いない。
「間もなく泉です。すべてはあなた自身が確かめることです」
どうやら逃げきれないと踏んで適当に誤魔化したらしい。
本当に困ったな。でも泉まで案内してもらう約束だったからな。
まずはこれでよしとするか。
続く




