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幻の国

振り返ればつい一人で散策でもと甘い考えを持っていたのがいけなった。

少しだけと歩いてる内に帰り道を見失ってしまったらしい。

これは迷ったか? いやまだ迷ってはいないよな?

訳の分からない自信とポジティブ思考が地獄へと誘う。

極めつけは砂嵐。これで完全に方角を見失ってしまった。

ココが気をつけるように言っていたのに…… 今更後悔しても始まらない。


一時間後。

完全に迷ってしまった。

初めての島で初めての場所だと感覚が掴めずにおかしな方向へ進んでしまう。

そんな単純ではないと分かっていたが島だからいつかはと言う甘い考えが。

せめてコンパスと時計と笛でもあれば迷うことはなかっただろう。

島到着前に没収されてはどうにもならないか。ああどうしたらいいんだ?

これでは登山で遭難したようなもの。

違いは平坦な道で上りも下りも険しくなくいつかはたどり着ける場所。

逆にそれで大胆になり慎重さを欠いてしまった。


確か…… 橋を二回も渡った気がする。橋などあるのか?

でもそれでも中島に違いないはず。当然だよな。ここは離島なんだから。

でもすべての常識を疑うのも我々学者であり科学者だ。

きっと当麻博士ならこう言うだろうな。でも私はあくまで博士の助手。

ここでは単なるよそ者であり略奪者に過ぎないが。


水も食糧もない。案内役もいないどころか人の気配さえしない。

間もなく日も暮れる。これはある意味チャンスだがこれが最後になる恐れも。

どうしよう? やはり一人で勝手に動くべきではなかった。

隙が生まれたのだろう。何だかスムーズに事が進んだから浮かれてたんだと思う。

そもそもフィールドワークでも迷って博士に助けてもらったこと数えきれない。

お前はだから使えないと嫌味を言われながらネチネチと忘れるまで言われ続けた。


「誰か! いませんか! おーい! 」

これを五分おきに繰り返す。

我慢できずに今は一分おきぐらいに叫んでしまっている。

しかし島民総出で探しでもしない限り見つかりそうにない。

そこまでの価値が私にはあるのか? きっとない。

 

中島は私にとってスーパーハードな世界。

前島だって大変だったけどそこまでではない。

前島はハードな世界で止まっている。

前島がハードなら中島はスーパーハード。すると後島はもっととんでもない?

後悔しつつ先ほど痛めた足を引きずりながら前へ進む。


どうしよう? これは完全に迷ったぞ。

しかも中島には私を心から心配してくれる者など皆無。

ナガレだってそこまで。ココもいい子だけどそんな義理はない。

いや初めから分かっていたことじゃないか。

中島だけでなくミハマ島には誰も私を本気で助けようとする者などいない。

ただ穏やかな島の生活に土足で踏み荒らしただけの存在。

自分の身は自分でどうにかしないと。


うん? 何だあの光は? 砂埃? まさかまた大砂嵐。もう勘弁してよ。

これ以上人のせいにはできない。しても無意味。急いで自力で解決するんだ。

しかし機械音がしたのも事実。でも中島はそれとは無縁な島だよな? 

すると聞き違いか? でもこの跡は? どう説明すればいい?


あれはまさか……

乱雑に金属が捨てられてるかのよう。

これが島に伝わる秘宝であり金銀財宝?

やった! ようやく発見したぞ! うおおお!

ダメだ。もう意識が…… 恐らくこれは願望が見せた夢。幻だろうな。

いいんだ。分かってるんだから。


「もし…… もしもし…… 」

若い女の人の声が聞こえた気がした。

いい匂い…… まさか天女様が? それとも。

ダメだ。激しい眠気が…… これは危険な兆候?

ああ…… まるで天女に抱き抱えられてるようないい気分。空さえ飛んでるよう。


ううう…… 頭が痛い。

目が覚めると洞窟の中。恐らく第五洞窟だろう。

どうやら私を見つけてくれた方が親切にも運んでくれたのだろう。

「大丈夫? 」

笑顔。この状況には相応しくない元気で明るい女の子。

確か…… 姉妹の人見知りするタイプ。

昼にも姉の後ろに隠れていた気がする。


「あれ君は確か…… 」

一分ほど粘ってみるが女の子は自分から何も言わない。ひたすら耳を傾ける。

第一印象は真面目と言うかちょっと変わっている引っ込み思案の女の子。

姉の教えがなければどうにかなりそうな危うさがある。

だからこそ逆に魅力的に映る場合もある。


「お名前は? 」

昼にたくさん話したがもう一度丁寧に挨拶。子供の扱いは丁寧にを心掛ける。

「マキナ。マキナだよお兄ちゃん。もう忘れちゃった? 」

一言多いがまあこれくらいは許容範囲か。

「マキナか…… そうだマキナちゃんだったね。思い出したよ」

一応は先に礼を言っておく。それが常識。だがマキナには通じない。

それがマキナのいいところ? 


「そうだ。マキナちゃんは嫌がって恥ずかしがってなかった? 」

薄暗い中でマキナと二人っきり。間違いが起きないといいが。

無防備に覗くその小さなニュウニュウ。小さすぎて逆に気になる。

「ううん。一度お話した人とはもうお友だち」

マキナの独自の世界観に巻き込まれそうになる。


「友だちか…… 恋人ではない? 家族でもなくお友だち? 」

一応は確認だ。そもそも男女に友情は存在するのか? あり得るのか?

こんな閉ざされた島で何をくだらないこと言ってるんだろう? 

まだ寝ぼけてるのか? そう言えば足がもう痛くないや。寝て回復したか? 

「そうお友だち」

「恋人には? 」

「マキナには恋人が分からないの」

意外なことを言う。知らないはずない。この島だって愛や恋だってあるはず。

「そうか。だったら恋人が何か教えてあげるね」

実践しようとするがマキナが首を振る。


「どうしたの? 」

「お兄ちゃんが嫌らしい目をしてたから…… 」

「お兄ちゃんか? 自分にはアキラって名前があるんだけどな」

「だったらアキラお兄ちゃん」

まあいいか。おじさんと言われるよりはいい。

恋人ごっこはさすがにできないか。

「それでまさかマキナちゃんが私を運んでくれたの? 」

あの細腕では成人男性一人を運ぶのは無理がある。

それでもマキナには隠された能力があるとか? そうすれば一人でも可能。

「ううん。マキナはただ見てたの」

「見てた? 」

「そうだよ」


「それでマキナちゃんのお姉さんの名前は? 」

忘れた? いや覚えてるはずだが寝起きではうまく思い出せない。

「ああ…… トワ姉のこと? でもトワ姉は関係ない」

なぜ姉の関わりを隠そうとする? まだ私を信じてないのか?

「そうそうトワナさんだ。他にもお姉さんいるの? 」

「ううん。トワ姉だけ」

自慢げに話すマキナは何だか凄く子供っぽい。


マキナとトワナ。どうやら二人っきりの姉妹は間違いなさそう。

確かにトワナから話は聞いてるが改めてマキナに聞いてみるのも悪くない。

子供で大して理解力がなくても正直で頭の回転も速くないマキナなら信頼できる。


それにしても私を助けてくれたのは誰だったのだろう?

マキナが今世話してくれてるならその人はトワナ以外あり得ない。



              続く


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