マキナとトワナ
第五洞窟の前に透き通った愛らしい天使のような姉妹が。
これが天女の生まれ変わりか?
しかし生まれ変わりは基本的に一人のはず。だから彼女たちは違うと。
そうは思うけどミハマ島には合計四名の生まれ変わりが存在すると言う。
うーん。するとやっぱりこの姉妹が生まれ変わり?
よそ者の不審者を警戒する姉に隠れる妹。
本土じゃよくあること。でもここでは警戒する子供など珍しい。
いやそもそも子供を見かける機会はなかった。
もしかするとこの子たちも思ってるよりも子供ではないのかもしれないが。
島民は皆恥ずかしがり屋だとかで穴も大穴も生まれ変わりさえ教えてはくれない。
だから自らの手で探し出さないとならない。
とにかくこの子たちが何者かは把握しておかないとな。
まだ人間ができてないのかついニュウニュウに目が行く。
だからって彼女たちが嫌がることはない。自然なことだからな。
隠すとは本来他者の視線。もっと言えば自分を排除しようとする敵の目から。
本来なら仲間内で隠す必要などまったくない。
ここはある意味開かれた楽園なのかもしれないな。
ラボに戻れば前をはだける女性など皆無。
下着丸出しや下着のような格好はあるが裸はない。
こんなこと言ってるとただのおじさんだと思われるかもしれない。
だが基本的には服さえ着てると思われたらいい訳で。
思われたらとはあえてボディーペインティングする者もいるから。
我々は心の奥では信用してない。仲間とも友だちとも思ってないのだろう。
裸でいるのが普通で当たり前の彼女たちと異常で恥ずかしい我々。
どちらが正しいのか答えなど出るはずがない。そもそも棲む世界が違う。
中島にいて自分の感覚が狂って行く気がする。
自分はどうしたのだろう? あまりに自然。これが中島スタイル。
オヤスの野球しようぜはきっと子供を作ろうと言う隠語だったのだろう。
あの時は意味不明で反応できずにいたが今日ようやく分かった気がする。
「お前誰だ! 」
かわいい声で震えながらそれでも虚勢を張る。
誰が騙されるかってと少し意地悪になってしまう。
あれ…… もしかして私はこの子と同類ではないか? 精神年齢が……
「バリバリだ! へへへ…… お前を喰ってやる! 」
つい調子に乗ってこの島に出没すると噂の化け物の名前を出してみる。
「やめて! 怖いよ! 」
恐怖で泣き叫ぶ。おいおい冗談だろう?
すると今まで間に立っていた姉が歩いて来ていきなりビンタ。
「おい何をする! 」
「ふざけ過ぎです! だからよそ者は…… 」
厳しいお言葉を吐くと睨みつける。そして戻って妹を抱きしめる。
「悪い悪い。ちょっとふざけ過ぎた。それで君たちは? 」
仲直りの挨拶をしようとするも取り合わない。冷たい目で見る妹思いの姉。
仕方なくココに助けを求めるがただ首を振るのみ。
私は一体こんな洞窟の前で何をしてるんだろう?
ふざけてる時ではないはずだがそれでも気になる。
「それでお兄ちゃん何の用? 」
妹が笑う。どうやらさっきのは嘘泣き。
怒られた時や自分が危なくなった時に発動するもの。
だからこそもう笑ってる訳で。何がそんなにおかしい?
姉の方はまったく笑ってないどころか軽蔑の目で見て来る。冷たいな。
「ごめんごめん。私はアキラって言うんだ。
君たちがあまりにもかわいかったからつい…… 」
そう言って姉を見るが睨みつけたまま。
ああそうか。これだとただの変質者の戯言だ。
「かわいい? 」
「いや…… どうも反応が自然でさ。姉妹だろう? よく似てる」
断定するが確証はある。あの青みがかった大きな瞳は疑いようがない。
「えっと…… 」
どうやら妹の方は理解できてないらしい。
「ほらマキナ! きちんとご挨拶なさい! あげないよ」
「それは…… 」
「どうする? 」
「もう分かった。マキナ…… じゃなくて私はマキナって言うの。それで…… 」
「ほらもうちょっと。これいらないの? 」
「いる! 私はマキナです。どうぞよろしく。お兄ちゃん」
挨拶を終えると姉の手からアメを奪い取る元気な子。
「こらマキナ! では私はこれで…… 」
厳しく妹を指導する女の子。そこまで年が離れてるようには見えないが。
逃げるマキナを追いかける姉を無理やり引き留める。
「それで君の名は? 」
「もうよそ者の不審者のくせに気安くしないでよ! 」
妹の件とこれとは別だと怒っている。
「そのニュウニュウの痕は何だい? 」
拒絶されるも続ける。どうしても興味がある。
いやそもそもニュウニュウそのものに興味があるのだが。
「うるさい! いやらしい男ね。
どうしてあなたのような変態に答えないといけないの? 」
ついカッとなって我を忘れて怒り出す姉。これは本気っぽいぞ。
「ごめんなさい。言い過ぎました。でもあまり見ないでくれませんか?
私はあなたに見られたくない。どうしても見られたくないの! 」
切実な思いがあるようだ。しかしだからと言って見ない選択肢はない。
「なぜだい? 」
「なぜってそれは…… 好きだから…… 」
ついポロっと零す姉。どうなってるんだ? 妹が変だと思ったが姉もおかしい。
「待って! 最後に名前を聞かせてくれないか」
隙を見て逃れようとする彼女の腕を引っ張る。感情が高ぶってるのが分かる。
あれ…… おかしいな。私までどうかなったようだ。
「もう! 私はトワナ。マキナは私の三つ違いの妹。これでいいでしょう? 」
そう言うと振り解き走って行ってしまった。
呆然とする中でココを見る。
あれ? ココが若干怒ってるのが分かる。どうしたんだろう?
「どうしたのココ? 」
「何でもありません」
「そうかな…… 」
「いいから中に入りますよ。もうおかしな真似して怒られても知りませんから!」
どうやら私はタブーを破ったらしい。どう言うことだろう?
もし仮にそうでも初めてだから当然許されるよな?
それとも明日には八つ裂きにあうとか? それはさすがに勘弁してくれよ。
ちょっとやり過ぎた自覚はある。
続く




