サザナミとミコト
ココに外してもらい復活のナガレの話を聞く。
監視されていて今まで自由な発言ができなかったのだろう。
もちろん私に助言するのはご法度。しかし彼は純粋な島民ではない。
学者崩れのある意味先輩。とは言え心配ない。その境目ぐらい判断つくさ。
できるなら少しでも島の秘密を漏らしてくれたらな。
「相談事と言うかここで私はどうすれば? 穴を全部探し回ってどうしろと?
そこに突破口があると? ナガレはどう思う? 」
何だか凄く喉が渇いた。どうも渇きやすくなっているみたいだ。
自覚はあるんだが真夏などこんなものとあまり意識してなかった。
神経質になるのもまずいが熱中症になっても。一応気をつけてはいる。
「自分で考えることだ。教えればきっとミハマ島全体の秘密に近づくことだろう。
最終目標の財宝にも近づくことに。しかしもう財宝は……
どちらかを取るべき。選択するんだアキラ君! 財宝か天女様か? 」
ここでストップ。
これ以上はあまりにも有利だと思ったのだろう。
しかしよく考えて欲しい。有利だろうと不公平だろうとズルかろうと関係ない。
私がすべての真実に近づければいい。これはゲームじゃない。
いかに早く天女様にたどり着き財宝を得るか。ナガレはちっとも分ってない。
私が本当に金の亡者に見えるか? 当麻博士とは違う。違うんだ!
いつの間にか目的が変わってしまった。財宝など……
私だってもう一押ししてくれれば財宝などきれいさっぱり忘れるさ。
たった一つの願いを叶えてくれるなら。当然天女伝説解明ではない。
ミコト…… 無理だと分かっていてもミコトが戻って来てくれたら……
すべてを捨ててでもミコトを。だがそれは夢物語。奇跡でも起きない限り不可能。
それを望んでるほど私は間抜けじゃない。
消えた者は帰って来ないし死んだ者は生き返らないんだ! 事実ならね。
しかしその場面を見た訳じゃないので少しだけ希望が持てる。
ただの間抜けな願望にも満たない妄想の類。
それはきっと彼もそうだろう。私に協力しておかしなことをしてる。
「一つだけ…… 私はミコトさえ戻ってきたらそれでいい。
他にはないもいらない」
おかしなことを言って心配させてしまう。
言わずに心の中だけで留めておこうと思ったのについ堪え切れずに。
「アキラ君。てっきり君はミコトを乗り越えて中島に来たと思っていたよ。
でもまだ君の心はミコトでいっぱいなんだな。だがそれでもミコトはいない。
分かってるくせに無茶を言って俺を困らせないでくれ。俺だってそう願ってるさ。
早く戻って来てくれと。でもそう簡単ではないのは分かるだろう?
いや…… 違うんだアキラ君。でも君は…… 」
もう訳が分からくなったナガレは罪悪感からなのか謝罪の言葉を口にする。
「済まない。しかし…… これはどうしようもないこと」
「ナガレさんのせいではありません。すべて私の責任です。
あの日私は浮かれていたんだと思います。心が通じたから。
いつの間にか両想いになっていた。幸せはもう目の前。
だが離してしまった。太陽の光を浴びて目を開けていられなかった。
その間にミコトはゆっくり音も立てずに姿を消した。
もう自分でもミコトをこの手で突き落としたんじゃないかって思ってる」
堪え切れずに告白してしまう。これは恐らく罪悪感から。
ミコトを深く愛していたかと言えば自分でもよく分からないんだ。
ただあの時は本当に頭が真っ白になって何も考えられなかった。
「落ち着け! 君は間違ってない。正しい。だが結果は最悪と言うだけだ」
自分のことじゃないからってあっさり言うな。
励ましてるのか批判してるのか。
「だから辛いんです! 」
「俺だってサザナミさんが消えたら悲しい」
いきなりナガレがおかしな告白をする。
どう言うことだ? サザナミって前島の地味なお世話係だったよな。
でもたとえ地味でもナガレでは無理なものは無理。振り向くはずがない。
そんなことも分からなくなったのか? 哀れだ。私などよりもよっぽど。
だいたいあの人のどこがいい?
魅力を感じなくはないがミコトと比べてはどうにも。
それになぜここでいきなりボーイズトーク? を繰り広げないとならない?
恥ずかしくないのか? 年は関係ないけどミコトと一緒にされたくない。
「いやサザナミとは全然違いますよ。ただのホームシックでしょうそれ? 」
ミコト派の私とサザナミ派のナガレ。
ただし私たちはきちんとした恋愛関係……
恋人だったのに対して恐らくナガレはただの片思い。相手にされてなかったはず。
いわゆるストーカーだろう。サザナミに夢中ってか。
そう言えばサザナミに紹介された時のナガレは怖かったがそれってこれが理由?
ナガレが誰を愛そうとそれは自由。
でもだからって私にはそのことで何もしてやることはできない。
ただ少なくても前島に戻ればサザナミには会える。
私にはそれが不可能。いくら前島に戻ってもミコトはどこにもいない。
島を駆け巡って探し続けてもどこにも。あるのは記憶のみ。
「俺には一緒に思えるがな」
ナガレはびくびくしながら辺りを見回す。誰も見ても聞いてもいないさ。
ただのボーイズトーク? が漏れたからってお仕置きや制裁を喰らうはずない。
恥ずかしいこと言ってるなと笑われるだけ。くだらないぞ。
「それはただの錯覚ですよ。あるいはミエンさんのように目が悪いか」
ミエンにサザナミか…… 懐かしいな。
前島を離れてどれくらい経つんだろう?
「俺にはそう見えるけどな」
子供っぽく譲ろうとしない。いやまさか視力が落ちたのか?
そもそも見た目と言うか年齢も違うし何もかもが違う気がする。
それは私がミコトに夢中で他が見えてない可能性もある。
「でしたら紬さんなどは? 」
比較対象を変えてみる。とにかく冷静になってもらわないと。
「はあ? 似てる訳ない! ただの別人さ! 」
ナガレも紬とは面識があったよう。美人で人気もある紬。
おっちょこちょいで天然。似てないかな? 自信を失いそう。
どうやらナガレと私とでは見てる世界が違うのだろう。
きっとナガレの方が幸せなんだろうな。
続く




