復活のナガレ
第四洞窟。
アナログが我々を自慢の部屋に招待してくれた。
そこには貴重な蔵書が何冊も。これは凄いお宝かもしれない。
一冊の本を取り出すアナログ。ホコリだらけで吸うとむせる。うわ最悪。
「これがこの島の郷土史だ。どうだいアキラ君?
フィールドワークするほどだから興味があるんだろう? 」
詳しく聞くものだからつい正直に答えてしまう。
博士がいてフィールドワークによく行くことを伝えた。
ただ助手だと言うと舐められそうなので一応は共同研究者と濁す。
でもアナログのあの感じだと簡単に見抜かれそう。
「はい…… ですがもっと興味があるものがありまして…… 」
つい話の流れで。もう少し慎重にすべきだった。
鋭い視線が突き刺さる。
でも今は本当に郷土史はどうでもいい。島の財宝が載ってるなら別だが。
アナログは立派な穴で信用も置ける。
それに引き換え私はどうだろう? ノコノコやって来たよそ者。
信じてくれと言ってもそもそもが島の財宝を奪うためにやって来た訳で。
アナログにはすべて見透かされている気がする。
これは対応を間違えれば大変なことになるぞ。
それが分かってるからめったなことは言えない。
つい視線を逸らしてしまう。
「何だ言ってみろ? 今更隠すこともあるまい。
お前は島長からのお墨付きを得たのだろう」
アナログは興味津々。これなら私に協力してくれるのでは?
そんな幻想に憑りつかれる。だがそれほど甘くない。
この島に来ればそれがよく分かる。
「いえ…… 伝説や伝承に興味が…… 」
「濁さずともよい! はっきり申さぬか! 」
アナログはどうやら最後まで言わないと許してくれないよう。
いい人で物分りもよく上に立つには理想的だが厳しい側面もある。
アナログからの追及を逃れそうにない。
仕方ない。ここは彼を信じてすべて吐くか。島長に告白したように。
「財宝伝説! 財宝伝説がどうしても気になるんです! 」
「ほお…… あの海に沈んだ財宝を探すと? やめておけ。無駄になるだけだ」
具体的に財宝の話が出たのは今回が初めて。参考になるかと言えばどうかな?
島の宝を奪われたくないからそのようなことを言うのだろう。
今の彼の意見をそのまま受け取れはしない。
「アナログ様! 」
ついにタブーを破ってナガレが口を開く。
劣勢に立った私を見かねての勇気ある行動。
「黙れナガレ! お前は何もしてはいけない。経験者なのだからな!
それとも裏切る気か? この愚か者めが! 」
アナログからストップがかかる。どうやらこれ以上余計なことは言うなと。
いくらナガレの暴走とは言えせっかくの貴重な情報を無理やり抑え込むとは。
これなら本当に金銀財宝の在り処が分かるかもしれない。
ようやく手掛かりが見つかったか? 手応えありだ。
「失礼した。それで聞きたいこととは? 」
「金銀財宝はどこに? 」
「海の底にあるとしか言えない。しかし君には何の価値もないと思うが。
これが一種の金持ちの道楽なら反対はしない。しかし君はただの貧しき者」
失礼な発言。私を馬鹿にしてるのだろうか?
「では私には無理だと。初めから諦めて帰れと? 」
「そうは言ってないが…… まずは島の秘宝天女の衣を見つけ出すことだな」
そう言えばそんな話を聞いたな。当然それだって頂いて行くさ。
ではそろそろ本題に入るか。
「天女様か? それは私にも分からない」
どうやら知ってるからあえて教えない。この島の根幹に関わる問題なのだろう。
「では天女の生まれ変わりは? 」
「それならば第六洞窟までには必ずいるはずだ。当然どこの誰とは言えないが。
ただ名前だけ… いや行ってみれば分かる。楽しみは後に取っておくものだ」
こうして穴との会談を終え今日はここでお世話になることに。
客室だと言われ何もない部屋へ三人一緒に押し込まれる。
「ちょっと待ってくれ! ココは別の部屋の方が…… 」
交渉するが客室はここ一か所だけだと頑なだ。
「ご主人様! ココは構いません」
偉いと言うかあまり気にしてないと言うか。
まあいいか。ココがそれでいいと言うならこれ以上何も言わない。
でもふいにココを見ると興奮している自分がいる。気をつけないと。
慣れないんだよな。どうしてもニュウニュウに目が行ってしまう。
それに気づいたココは笑う。いや笑いごとじゃないんだって。
どうしよう? どうすればいいのだろう?
「ココ。ナガレと話しておきたいことがあるから外してくれないか」
「はい。ではお先に浴びてきます」
顔でも洗うのだろう。イチイチ言わなくてもいいんだけどな。
どうもココは嬉しそう。何でだろう?
ココを追い出して平静を保つ。
まったく何を考えてるんだろう?
前をはだけた状態ではいつ自分が狂うか分からない。
これでは当麻博士と変わらない。私は変態なのか? いや違うぞ。
紳士だ。紳士でいたい。せめてこの中島では。
ご主人様と慕ってくれるココに応えられる立派な人でありたい。
その他のことはもうどうでもいい。
ふふふ…… ミコトの傷が癒えることはないがココは守ってやらないとな。
「ご機嫌だね。アキラ君」
監視の目が消え恐らく緊張が解けたのだろう。元のナガレに戻った。
と言っても最初に出会ったとんでもない近寄りがたい存在ではない。
もう身なりを整えたナガレ。この中で一番変わったのは彼だろう。
私も成長したし随分と変化したと思うがそれでも彼には敵わないと思う。
「相棒の…… ダイボは? 」
危うく恩人のダイボの名前を忘れるところだった。
なぜかこの島に来てから物忘れが激しくなっている。
だからなのかなかなか思い出せない。何度も助けてくれたのに酷いものだ。
「彼か…… 分からない。いつの間にか姿を消していた。
恐らく何かまずいことを言ったか言いそうになって排除されたか。
島民にはそこまでのことはしないと思うがちょっと心配だ。
そして俺もきっと明日にでも消えるだろう。だから今君に伝えておきたい。
だがその前に相談事があるだろうから答えられる範囲で教えよう」
まるでどこかの学者みたいだ。生き生きしている。
ナガレの完全復活だ。
続く




