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天女の衣

第二の洞窟では相談役と呼ばれる白髭の老人が穴の代わりに話を聞くそう。

話しぶりからも信頼の置けそうなので包み隠さずに話すことに。

だが本当の目的も伝えずにただ協力を求めるのは間違ってる。

身を切ってでも誠実でありたい。ふふふ…… どうやらまだ甘いらしい。


天女の生まれ変わりなど聞いたことがないとシラを切る相談役。

これは見誤ったか? それとも私を恐れてのことか?

どうであれ最終目的を果たすためにもここでのんびりしてられない。

「初耳ですか? それだとこの島の秘宝も知らないと? 」

挑発してみる。当然島の秘宝だって天女の生まれ変わりだって伝わってるはず。

ただの島民ならいざ知らず上の方は当然把握してるさ。

伝説を信じて発掘調査さえしてると考えてもおかしくない。

それほどの秘密をよそ者の私が知り得たと考えれば脅威に感じるはず。

「ふふふ…… それは天女の衣のことを言ってるのかな? 」

余裕の男から飛び出した想定外の言葉。それこそ初耳だ。

天女の衣? 博士からも調査資料にもなかったぞ。

当然極秘資料にも載ってない。島の者からだってその話は聞いてない。

一体天女の衣とはどのようなものか?


「ははは…… アキラ君だったかな? 天女の衣に興味があるようだな。

しかしそれはこの島の秘密そのもの。君が持ち帰ることは勘弁してもらいたい。

同様に金銀財宝も天女様もできるならそうっとして置いてくれんか?

それが我々中島。いやミハマ島全員の意思だと思って欲しい」

白髭を撫でながら随分とのんびりした感じ。

どうやらこの私を舐めている様子。 

不気味な笑みで見つめるので睨み返す。

大変失礼だが舐められるよりは何倍もマシ。


この中島にはサポートがいるとは言え一人だ。

もちろんこのミハマ島に来た時点でそうだったのだが。

でもサザナミもミコトも……

不意にミコトを思い出す。あれほど考えないように我慢していたのに。

それこそナガレにも頼み込んでいたのに。自分で思い出して感傷に浸ってるよ。

今はそんな時じゃないだろう? 

急いでこの島にいる天女の生まれ変わりを見つけなくてはならない。


「ありがとうございます。もう充分です」

一方的に話を終える。これ以上続けても無駄と判断し一度引くことにした。

あっちだって相談役と言うぐらいだから忙しいだろう。

ここは日を改めて出直すとするか。焦ってはいけない。

余裕を持ってことに当たればきっと幸運が舞い込んでくるさ。

「待ってくれ! アキラ君だったかな? 」

単なる礼儀のつもりが功を奏す。意外にも単純なのかもな。

それでも無視して立ち上がる。これ以上話などない。


「失礼しました。また次の機会に」

わざと時間を掛けて深く一礼する。

「おい! まさかここで下がると言うのか? 情けないの。 

お前にとっても重要な話をしてやろうとしたのに。それでいいんだな? 」

あれほど雑に扱っていたのに急にムキになる。

まさか相談役ともあろう者が感情的になって秘密を洩らすつもりか。

「重要な話? はあ…… 無理せずとも結構ですから。お体にも障りますよ」

相手を翻弄し年寄り扱いすれば余計に興奮して自分の役目も忘れ暴走する。

果たしてどこまで期待に応えてくれるか。


「いいだろう! どうせお前は大切な者を失ったんだろう? 

しかもこのミハマでな。前島で何があったかは知らないが。

お前のその表情を見ればすぐに分かるってもの。

では尋ねるがそれでも財宝にこだわるか? それが何になる? 

お前は考えたことがあるのか? 天秤にかけていいものじゃない。

財宝のために人を犠牲にするなどあってはならない。

それだけでも大いに反省すべきだろう。儂はそう思うがお前はどうだ? 」

男から引き出したものはこれだけ? 違うよな。

睨みつけ続きを促す。通常ならここでストップするがもう止まらない。


「もしお前がその子を取り戻せたら財宝を諦められるか? 」

おかしな提案をする。何を言ってるんだ?

失踪したんじゃない。目の前で崖から落ちたんだ。

それは奇跡を信じてるがだからって現実的にはあり得ない。

だからこそミコトを無理に忘れよう忘れようとしてる訳で。

そんな傷口を抉るような真似はよして欲しい。あまりにむごい。

耐えられるはずがない。苦しくて辛くて叫びそうだ。

何度も何度もミコトを呼んでしまいそう。


「はあ? もしもの話をされても困ります。

ミコトは諦めないし財宝だって天女様だって諦めるか! 」

仮にうまく行かないとしてもすべてを手に入れようとするのが人間だ。

人間とはそれほど愚かで傲慢で哀れな生き物だ。

自分は欲に忠実でありたい。それがこの島に来た意味。

当麻博士を犠牲にしてまでここまでやって来たんだ。それは譲れない。


「ミコトか…… お前の思い人で天女の生まれ変わりで哀れな犠牲者」

そんな風に挑発する。分かっていても頭にくる。

「失礼します! 」

強引に話を打ち切る。そしてすぐに洞窟を出る。


「ではまた会おうアキラ君。今日のことはきちんと穴に伝えておく。

挨拶は済ましたからもう充分だぞ」

そう言って送り出す相談役。

もういい人なのか悪い人なのか測れない。

きっといい人だろうがそれでも信用はできない。


相談役と別れココたちと合流。

「ココ…… お前は話を聞いてたのか? 」

まさか島の宝を奪いに来たとは誰も思わない。純粋な彼女なら尚更。

それは彼女だけでなくこの島の者を裏切ることになる。

私はもう覚悟を決めていたのにどうやらまた悩んでいるよう。

それが人間だろうがでもいい加減ミコトのためにも目的を果たさないと。

「ご心配いりません。ココは何も聞かなかったし見なかった。

私はアキラさんを信じています。おっと…… ご主人様でしたね」

どうも観光客相手にも偉い者と接するように従順で疑う気持ちは皆無。

だがそいつはただの島の敵だぞ。目の前の男は邪な心を持った略奪者。

よくしても尽くしても結果は島が不幸になるだけ。

それが理解できないはずないんだけどな。


まさかあり得ないとは思うけど念のため一応聞いてみるか。

ココの純粋さも気になるとこだしミコトだって案内役だった。

果たしてココは天女様の生まれ変わりなのか?


                 続く

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