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相談役

ココの案内で第三の洞窟から第二の洞窟へ。

距離は二キロはあるだろうか。

まだ慣れてない私のためにゆっくり歩いてくれたので三十分近く掛かった。

もちろん時計も測定道具もないのでいい加減ではあるが大体そんなところ。

アスファルトならここまで要しないがほぼ砂地だから。

足が取られやすく下手すると怪我にもつながる。


第一から第三に行き第二へ。

第二と第四が目と鼻の先なのでこのような順番で巡るそう。

相変わらずナガレとダイボの二人組は大人しい。

不気味なほど静かで明らかにおかしい。

これでは何かあった時に本気で私を守ってくれるか。

それでもいるといないでは安心感が全然違う。


うん? 何かが当たった? これは泥?

泥団子が飛んできた。ははは…… 子供のイタズラだろうか?

それにしては何個も何個も。

まるで手荒い歓迎を受けているよう。

「おい何をする! 」

さすがに放置はできない。ココにだって泥団子が当たっている。

いくら泥団子だって勢いよく投げれば痛いし服は汚れるんだから。

そっちはいいよ。たとえ汚れても服は着てないから洗えばいい。

飾りが穢れるけどね。それでも全然気にしてない様子。

泥が落ち切る前に連続で攻撃を受けるからもう後ろを向くしかない。

ここは一旦退散するか。


「おい大丈夫かココ? 一度態勢を…… 」

そうやって泥を取り除こうとすると疑いの目で見られる。

ナガレまでもが私を勘違いしてるかのよう。

おいおい嘘だろう? 泥を取り除いてあげるのはごく自然なことだろう?

「ダメですよアキラさん。そのようなことをされたら困ります」

ココは恥ずかしそう。許可なく女性の体を触る行為は許されてない。

「いやセクハラなの? でも泥だらけだから可哀想だと思ってつい…… 」

下手な言い訳を述べるが疑いが消えることはない。

そんな…… 面倒な世界だ。ただの親切で優しさのつもりなんだけどな。

大体ご主人様と慕ってくれるココを守るのが私の役目じゃないか。

今はつまらないことにこだわらずに泥を落とさせくれよ。

心ではそんな風に強気だが実際言葉にする度胸はない。


「どうしました? 」

騒ぎを嗅ぎつけた男が姿を見せる。

「それが泥団子を投げられて…… もう泥だらけ」

「おお可哀想に。では泉にでも行き清めるのはいかがでしょう? 」

紳士な男。まさかの穴登場か?

「あんたがここの責任者? 」

ついムッとして雑に尋ねる。だって明らかにここの者がやっている。

まずは体を心配する前にこの泥団子攻撃をやめさせるのが先ではないか?

しかしいくら何を言おうとまったく動じずに笑顔を浮かべるよく分からない男。


「ちょっと! 早くこれを何とかしてくれよ! 」

「おっと…… これは大変失礼しました。あなたはもしかして観光の方? 」

この島にもこの辺りにも観光客は来ないと疑っていた様子。

観光客じゃないなら誰だって言うんだ? まさか征服者?

あながち間違いでもない。島の秘宝を奪いに来た略奪者なのだから。

「そうですよ。穴に会いたいんですがね」

第一印象は悪くない白髪髭の老紳士。

だがまるで我々を馬鹿にしているかのようで気に入らない。

どうしてもう少しまともに対応しない。ココを見習えよ。

そう言えば進めば進むほど癖が強くて面倒だとココが注意していたっけ。


「それで穴に会いに? もう一度確認。あなたは観光客で四の者ではないと? 」

何度確認されようともそうとしか言えない。別に本当は挨拶しなくてもいいんだ。

でも見知らぬ村や隔絶された島では絶対的支配者に挨拶して話を通すのが一般的。

フィールドワークでも散々やって来たこと。右も左も分からない訳だから当然だ。

「どうぞ。中にお入りください」

ようやく歓迎を受ける。疲れたな。結局第四の者たちとはどう言う関係なんだ?

やはり近すぎるせいでいざこざが起きるのだろう。

だからって我々無関係な者まで巻き込まないで欲しい。

中はほぼ同じ作り。当たり前か。でも多少個性が見られるものだけどな。

その個性が泥団子だとしたら最悪だ。


「これをどうぞ」

そう言うと泉から汲んだであろう水を勧める。

朝のココの異常行動でも分かるようにここではとにかく水は貴重だ。

ただ第二第四付近には泉があり水に困ることはない。

だからイタズラに泥団子を作る余裕さえある。

「どうぞ。後で泉で泥を落とすとよろしいかと」

女性は甲斐甲斐しい。しかしまともに見れないから苦労する。

どこも上半身は裸だからつい目が行きがち。

それを避けようとすれば下を向くしかないがつい歓迎されると目を上げてしまう。

常識だがそれで見えてはこっちはやりずらい。


「実はこの泥団子は第四の洞窟の者からの嫌がらせだ。

ここでは昔から仲が悪くて。それは泉を巡っての争いから続いている。

同じ仲間だと言うのに情けない限り。

しかしこちらは一方的にやられているだけだからな」

そんな風に言い訳する老紳士。結局この人は何者? 

「ああ紹介はまだだったね。儂はただの相談役だ」

穴には相談役がある。穴ともなれば面倒ごとがあるのでその都度相談に乗るそう。

他のにも似たような存在が必ずあるそう。まあそう言うことなら。


「失礼ですがぜひ穴に会わせてくれませんか? 」

「ほう…… それで会ってどうする? 」

「いや挨拶をしようと…… 」

目的を伝えるがなぜか不満そうだ。

「会ってどうする? 相談役の儂に挨拶すればそれで事足りる。

しかし挨拶するだけか? お前はこの島に何しに来たんだ? 」

相談役は問い質す。しかし挨拶以外…… まずは挨拶を。

それから詳しい話を聞こうとしただけ。


「私は…… 天女様の生まれ変わりと言われる者に会いに来ました」

この島の者がよく分かってなかったので秘密にしていたがもういい頃合。

この人は紳士でしっかりしてるから信頼が置ける。

「ほう天女様の生まれ変わりがこの島にいると? それは初耳だ」

そんな風に戯言を言う。この島にだっているのは知ってるんだ。

相談役とまでなった男がまったく知らないなどあり得ない。

私をはかっているのは間違いない。

ここでおかしな回答をすれば一切口を閉ざすに違いない。

慎重に慎重に言葉を選ぶ。


現在第二洞窟の者は第四洞窟と対立している。

激化しているようで泥団子まで投げつけて嫌がらせをする。

でも敵でないと分かったんだから下手な演技せず早く真実を語ってもらいたい。


                 続く

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