第三の穴
白熱の一戦!
一枚の葉を奪い合ってのバトルロイヤル。
醜い押し合い投げ合いを経てついに最後の戦いへ。
相手の男はひょろりとしたせこくてずるい男。不純な動機で参加している。
私のように穴への挨拶と言う崇高な目的とは格段の差がある。
これなら天女の生まれ変わりの居所を教えてもらってもいいよな。
「待て! 両者引き分け! 」
なぜかハイドは勝手に決めてしまう。そんな権限ないだろう?
再開したばかりなのに何を考えてる? 白熱の一戦に水を差す真似は頂けない。
まさか私に勝たせたくないから無理やり引き分けにした?
と言うことはこの結果は想定外? 意外にも私は強すぎたかな。
「待ってくだせえ! 俺の妻は? 」
「よかろう。お前の好きにするがいい。ただし相手の気持ちを無視できんぞ。
それでもいいと言うなら選べ。契りを結んだ暁には祝福してやろう。
まさかとは思うが第二の者ではなかろうな? 」
「いえ…… 第四の娘です。二人で幸せになろうってずっと話してて…… 」
この島ではどちらかの了承を得れば仮にもう一方で反対されても問題ない。
ただその場合は許された方に移ることになる。祝福を受けるからには当然か。
果たしてこの男が幸せになれるかはその娘次第と言うこと。
一緒になろうが男の妄想でなければきっとうまく行くさ。妄想でなければね。
引き分けとは言え一つの収穫があった。
この第三と第二には何らかの因縁あるいは確執がある様子。
ただ洞窟があって穴がいるだけではないらしい。単に仲が悪いだけとも取れるが。
まさかその争いに巻き込まれることはないよね?
「ちょっと待ってくれ! そっちはいいが私だって大事なんだ。だから…… 」
つい駄々をこねる。しかも相手は審判とは言え子供。
この洞窟を案内してくれたいい子だ。それなのに…… 恥ずかしいったらない。
「ははは…… そうだったな。だったらお前の願いを叶えてやろう」
どんどん生意気になっていく。もう審判じゃないんだからさ。
いい加減きちんとしてくれ。こっちは遊びじゃない。
「それで用件は何だ? はっきり頼む」
「だから穴だよ。ここのトップと話をさせてくれないか」
引き分けなので言い辛いし自信がない。
だがあいつだって叶えたんだからこっちだって当然叶えるべき。
それがこの戦いに参加した者への敬意だろう。子供に言っても無駄だろうが。
「悪い悪い。それで? 」
「だから案内しろっての! 聞こえなかったのか? 」
悪いと思いつつも我慢し切れずについ声を荒げてしまう。
どうして理解してくれないんだよ? それともまさかいないのか?
穴など存在しない。あれはココが適当に作った話で……
「そうだったなアキラ。お前にはまだ真実を話していなった」
生意気にも呼び捨て。大人でしかも会ったばかりの目上の者を呼び捨てに。
どこまで舐められてるんだ? いやよそ者は人間じゃないとか?
「おい! 」
「この私が穴だ! 初めから案内してるだろう? 」
ついに穴を発見。まさかこんな小さな男の子が穴?
何かの冗談? 毎年クジで穴を決めてる? それくらい信じられない話。
「まさか君が…… でももっと爺さんが穴になるのでは? 」
思ってもみなかったことで混乱中。
「いやそうでもない。指名制でな。前の穴がこの私を指名したんだ」
ハイドはどうやら真実を語ってるらしい。
しかし子供だぞ。くじ引きよりはましだけど指名するなよ。
それ以上に引き受けるなよ。拒否できない訳じゃないだろう?
「おいハイド? 」
「済まなかったアキラ。試すような真似をして悪かったと思っている」
どうやら本気らしい。でもやはり信じられない話だもんな。今も多少疑っている。
そうするとずっと無礼な態度を取っていたのはこの子ではなく私の方だった。
でも知るはずがない。初めての者にはどう考えても見抜く手段がなかった。
とは言え穴に会えたんだからこれでいいか。
切り替えてポジティブに行こう。
「よし誤解も解けたようだしそろそろ本題に入ってくれないかアキラ」
こうして穴に挨拶をする。
「ああ恥ずかしい。いくら知らないこととは言え穴に入りたいよ」
「ああどうぞ」
そう言って空いてる穴に入れようとするから困る。
それは比喩な訳で。伝わるのかな。
「済まない。私はそうでもないがこの島の者は基本的に恥ずかしがり屋だ。
だから知らない者に会おうとはしない。だから見つけるには手間がかかる。
アキラも大変だな。この後も穴を探すことになるとな」
そうは言うがこの島で生きていくには穴の許可がどうしても必要になる。
トップの許しを得るのがこの狭い中島攻略の最短ルート。
そんなに同情するなら有益な情報をくれよな穴さん。
「そうだ。仲のいい穴もいて。第六の穴とはよく話す仲なんだ。
もし第六の穴に行く時があれば私の名前を出していい。
きっとすぐにでも取り次いでくれるはずだ」
意外にも役に立つ。ただのガキではなさそうだ。
「そう言えば穴には妻はいるの? 」
対戦相手の男のこともある。興味は増すばかり。
「当然いるが紹介はできない。きっとアキラを気に入るからな。
するとこの私の威厳が保てなくなる」
そんな風に本気とも冗談とも取れる返し。まさかこんな私を褒めてくれるのか?
「最後に一つ。天女の生まれ変わりがどこにいるか知らないかな? 」
せっかくだから一応聞いてみる。
「当然知っている。だが教えられない。分かってくれアキラ」
どうやら立場上簡単には言えないらしい。そう言われたら引き下がるしかない。
「アキラ君…… 」
穴との挨拶を済まし男たちともしそれなりに交流を果たした。
フィールドワークの経験が生きたことになる。
ナガレに呼び止められたと言うことはもうここまでと言うことだろう。
「ナガレさんにダイボ。それにココも」
「行きましょうアキラさん。今日は後二つ回る予定になってます」
ココはまるで私のすべてを理解してるかのよう。
まあいい。それならついて行けばいいさ。
第三の洞窟から第二の洞窟へ。
果たして第二の洞窟には何が待ち構えてるのだろうか?
続く




