白熱の戦い
中島・第三洞窟。
まずは穴を探さないといけない。それには詳し仲間が必要。
そこにいい具合に男の子が。興味深々だ。せっかくなので手伝ってもらうことに。
子どもだからと侮ってはいけない。当然この子だって穴は知ってるだろう。
ハイドと呼んでくれと多少生意気だが構わない。逆に頼りになる。
「そこの人。あんたはここに何しに来た? 」
私を試そうとするかのような物言いの男。
ここで正直に言うのはあまりにも危険。でも無駄に時間を使いたくない。
「穴だ! 島長の許しがある。だからお前たちも素直に従い早く穴を出せ! 」
多少強引だが交渉するのに怯んではいられない。
島長のお墨付きがある。困ったりトラブルになったら名前を出して構わないと。
だからここは厳しく。何と言っても自分はあの島長に認められたんだから。
「何のことだ? 穴とは? 」
惚ける男。意外にも演技力がある。時間の無駄だからやめるんだな。
「いいから言われた通りに出せ! 」
ハイドを巻き込むのはなるべく避けたいが今はそんな悠長にしてられない。
すぐにでも穴を見つけだし話を聞く必要がある。
聞けばきっと私のやるべきことも自然と見えてくるだろう。
今のところ穴に挨拶して大穴を紹介してもらう。
そしてこの中島にいるとされる天女の生まれ変わりを探すこと。
すべて達成されればきっと道も開けるはずさ。
「はいよ」
後ろを向いて尻を出す困った男。
まさかこれがこの洞窟での挨拶なのか? いや誰一人してなかったぞ。
フィールドワークをしてればこのようなかなり特殊な持ち主もいる。
だから気にしないが何も自分の尻を出すことはない。
それにいくら気にしないと言っても無礼な振る舞いは許さない。
「よしあんたも忙しようだから勝負して我々に勝てば教えるでどうだ? 」
条件を付けて来た。確かにノロノロするよりよっぽどマシだ。
ただ我々と言うのがどうも気になる。一人じゃないのか?
一対一でないとさすがに不公平。戦えるものも戦えない。
「そうだね。だったらこの島に伝わる神事で決着をつけようか。
僕がしっかり判断するから。さあ始め! 」
ハイドが勝手に盛り上がる。おいおいこれは遊びじゃないぞ。
こうして男五人と対決することに。
何をするか知らないが本当に勝てるのか?
島の若くて体力のあり余っている男たちと戦わないといけない。
外に会場を作る。
「よしこれくらいでいい」
砂地に円を描く。そこに私を含め六人で衣に見立てた葉を奪い合う。
ルールは簡単。この円に出るか転ぶか葉を奪われたら負け。
逆に奪ったら勝ちだが制限時間も決めておく。
十分間耐えた者が勝者となる。
これは歓迎の儀式だと男が本気とも思えない言い方。
「では始め! 」
衣に見立てた葉は一番若い者の手。
そこから奪えば衣は自分のものに。
「頂き! 」
一対五の不利な団体戦と言う訳でもないらしい。
あれを奪えば願いを一つ叶えてくれるのだとか。
だから盛り上がっていて男たちも妙に張り切って観客も大興奮。
若者から奪おうと二人の爺さんが結託して押し出しにかかる。
さすがに二人から本気で来られたら逃げ切ることは不可能。
もはや抵抗せずに円の外に押し倒される。
「クソ! 卑怯だぞ! 」
若者は捨て台詞を吐くがまずいと思ったのかすぐに離れどこかへ。
これで一人目の脱落者。
「おいそれは俺のだ! お前は引っ込んでろ! 」
「うるさい! この爺が! お前こそすっ込んでろ! 」
白熱する爺さんバトル。すでに醜い争いが始まっている。
そう言えばこれって願いが叶うから全員真剣なんだよね。
自分はただ穴に会って挨拶がしたいだけなんだけど。
一緒に男を押し出した爺さんたちは醜く奪い合い同時に倒れ込む。
これで二人消えて合計三名が姿を消した。
がめついとこう言うことになる。もう少し冷静になればって…… 無理な話か。
願いを叶えると言われたら誰でも興奮するもの。でも一体誰が叶えるんだ?
穴が? それはまだ確認が取れてないはず。するとまさか……
おっと…… 今は余計なことは考えないで集中。
隙を見せたら一気に攻められる。
バトルロワイアルでは強い者が弱い者から集中砲火を浴び負ける。
だからこの手のゲームは意外にも情けなくて頭のいい奴が残る。
私がそうと言う訳では決してない。
六名による戦いは現在三名までに絞られた。
「おいお前! 一緒にどうだ? 」
見るからに弱そうなヒョロヒョロ男が耳元に囁く。
どうやら奴がターゲットにしてるのは前大会王者。
こいつを倒さない限りたどり着けないなら協力するか。
こうしてヒョロリに合わせてパンチを繰り出す。
しかし奴は卑怯なのでパンチした瞬間にこちらまで当てようとする。
ダブルパンチ攻撃で前大会王者は円の付近で堪える。
そこにすかさず止めの一発を。
こうして場外に出た前大会王者が消え二人による最終決戦へ。
卑怯でセコイ上に慎重だからなかなか隙を見せない。
開始から十分が経ちシケた試合に観客も離れていく。
「やめ! 」
子供なのにしっかり見ているハイド。
別にいいがこれは願いを叶える戦い。お互いにどうしても引けない。
だから慎重にもなる。だがそれでは興覚めと審判が止める。
「おい! お前の負けだ! とっとと帰れ! 」
まさか互いに健闘を称えるのではなく貶して来たぞ。
それほど人間ができてない証拠。でも負けない。
私だってどうにかして穴を突き止めて挨拶しないとならないからな。
「それでお前にはどんな望みが? 」
「俺か? そうだな…… 妻を早く迎えたい。独り身だと何かと大変でね」
共同生活を送ってるはずなのになぜそのような問題が起こる?
結婚適齢期になればお節介にも仲介してくれるんじゃないのか?
それともそれが嫌で別の子を求めてるのか? そうだとしたら強欲だぞ。
面はここでは普通ぐらいだろう。ただ目立ってはいなそう。
「それがお前の希望か? まあいい。だったらそろそろ再開しよう」
相手の思いも聞けた。こっちだって負けられないさ。
「待て! 両者引き分けだ! 」
なぜかハイドが勝手に決めてしまう。そんな権限ないだろう?
続く




