第三の洞窟
海は汚染され泉から遠く水不足に悩むこの辺りではおしっこさえ貴重な飲みもの。
ふとラボで毎日のようにカレーを食べるふっくらした奴の言葉を思い出す。
そいつに言わせればカレーは飲みものだと。驚いたものだ。
しかしここではおしっこまで飲みものとはね。驚いたレベルを超えている。
もはや理解不能。それほどこの辺りでは深刻な水不足となっているのだろう。
島と言わずこの辺りと言ったのは泉の近くに住む者たちもいるから。
彼らからすれば水不足など実感しないだろう。
いやココからすれば大切にしてるだけなのかもしれないな。
幼き頃からそう教われば自然と受け入れるもの。
私はまだその域に足してない。
「なあココ。これが普通なのか? 」
まるで上から。ただの観光客で右も左も分からない愚か者。
本来ならココに教えを乞うところだ。
「普通? 」
彼女は本当にかわいくていい子だ。だからつい気が緩んでしまう。
ニュウニュウがチラチラ見える訳で。これはどうにもならない。
ほぼ拷問と言ってもいいかもな。ただ朝から考えるようなことではない。
「それでどこに向かってるんだっけ? 」
歩いて三十分は過ぎた。喉はもうカラカラ。
ただココがそうであるように水不足は深刻だ。
どこかに飲み水はないのか? 海水にまで手を出しかねない勢い。
ただココは慣れてるようで明るい。
我慢し過ぎて感覚がどうにかなったのだろう。
「まずは第三洞窟から回って見ましょう」
「第二じゃないんだ? 」
「こちらから回るのがベスト。アキラさんは全部の洞窟を回るつもりでしょう?
でしたらこれが一番効率的かと」
回り易さから第三洞窟へ。
全部回ってどうする? 自分はどうしたらいいのか分からずただ挨拶に。
金銀財宝を得るには天女伝説とミハマ島の秘密を解かないとならない。
それには穴と会い大穴を見つけ中島にいる天女の生まれ変わりを探さないと。
そうなんだがだからって何の保証もないし時間を浪費してるように感じる。
もう少しでも手応えがあったらいいんだけど……
第三洞窟到着! さっそく挨拶する。
「あの…… 穴様は? 」
「こちらでございます」
ココがすべてやってくれるので助かる。それにして第一洞窟と似てるな。
当然か。材料が同じなら似たような洞窟になる訳だ。
「どうぞこちらに」
そう言うと私だけ通される。お供の者は外で控えよと。
忘れていたがナガレもダイボも少し離れて付いて来ていた。
するとあの恥ずかしいやり取りも聞かれていたことになる。
彼らはこの島では一切何も話さないように躾けられているよう。
プラスになることを一切漏らしてはいけない。
ただ大人しくついて来ている。今はココがいるからそれでいいが。
いざと言う時は助けてくれるんだよね?
できるならココだけでも一緒に…… どうやら無理らしい。
これはまずいか? それとも大歓迎してくれるのか?
どっちにしろ一人で対応するのは嫌なものだ。
「旅の者よ。お前がアキラか? 」
ようやくお目通りが叶った。どれだけ待たすんだよ?
一人切りで三十分近く何もないところで暇を潰す。ただの時間の無駄。
「はい。アキラと申します」
「そうか。私は第三洞窟の者だ」
そんな風にわざとなのかあまりにふわっとしてる。
この洞窟の代表じゃないのか?
「あなたが穴様ではないんですか? 」
だからサシで話し合いに応じたのでは? そうでないなら意味ないだろう?
「穴様はこの洞窟のどこかにおられる。果たしてお前に正体が見破られかな」
面倒なことを。なぜこんな回りくどい真似をする?
こっちはただ挨拶しに来ただけだぞ。
「あなたは違うと? ではお名前を伺っても? 」
「俺はドラット。しかし穴かと問われれば分からないと答える。
穴かもしれないし違うかもしれないのだ。ここの者は特によそ者を嫌ってる。
恐れている。だから穴を教える訳には行かない。見事探し当ててみよ」
わざわざここまで来たのに何て歓迎の仕方をするんだ。時間稼ぎのつもりか?
彼が穴の確率は低いか。
完全に否定しないのは逆におかしい。別に嘘を吐くことは許されているはず。
だから本当ならそうかもなどと曖昧にはしたくないだろうさ。
逆に違えば自分を囮に時間稼ぎしようとするはず。
とにかく穴らしき人物を片っ端から当たってみるしかない。
「本当にこの洞窟の中にいるんですよね? 外に出てるとかはなしですよ」
「それだけは間違いない。心配するでない! 」
自信満々。どうも信用できないが今はその言葉を信じるしかない。
穴には穴の特徴があるそうだからよく見れば気づくと。
だったら問題ない。でも手分けして探し回ることはできない。
ココも含めて他の者は全員知っている。
私一人の力でどうにか探し当てる必要がある。
さあとにかく穴を探して……
「ねえおじさん」
そんな風に興味津々の男の子が絡む。
うっとうしいが態度には出さない。利用できるものは何だって利用する。
こんな小さな男の子でも第三洞窟の住人さ。
「もしかして手伝ってくれるの? 」
「うん。おじさんは穴が知りたいんでしょう。だったら僕が後ろから」
どうやら純粋な男の子は遊び感覚で付き合ってくれるらしい。
それはありがたいが…… でもだったら直接指して欲しいな。
これだと非常に効率が悪い。
「なあ…… 」
「それじゃあ面白くないでしょうおじさん? 」
そう言えばスルーしてたがおじさんって何だよ? くそ生意気なガキだ。
でもいないよりはマシか。その程度の存在。見れば分かるなら直感でも。
「名前は? 」
「僕はハイドレック・タルム・ザイドリッツ」
長い名前で実はもっとあるそう。ハイドって呼んでよと生意気だ。
「それでハイド。この洞窟は暗いけど」
「今は昼で太陽の光だから奥に進めば進むほど暗くて分かりにくいんだよ」
そんな風に笑う。大人っぽいと思ったが無邪気だ。
どっちが本当のハイドなのか? 今が自然と見るべきだろうな。
「あれこの方は? 」
「ほらお話があった。よそから来た観光客だって」
男と遭遇。彼がまさか穴なのか?
だがその風格も威厳もない。
続く




