深刻な水不足
中島・一日目。
ココに誘われて夜の散策に向かう。
と言っても明かり一つないところで何を楽しめと言うのだろう。
言われるままついて行ったがまさか例の化け物の生贄に?
ご主人様と慕いよく尽くしてくれるココを信じ過ぎてないか?
中島にはこの島独特の穴と大穴と言う制度があるそう。
ココに詳しく解説してもらうことに。
懐かしいな。こう言うのがフィールドワークの醍醐味ってものだよ。
ワクワクして来た。おっと…… いけない。
「穴とは先ほど乾杯の挨拶をした者のこと。私たちのリーダー。
この洞窟の者をまとめ上げる大変立派な方です。
それで大穴とは本命とか対抗とか…… 」
ふざけるココ。それは競馬だろう?
どう考えてもこの島にはそのような文化はなさそうだが。
まさかよその地域から伝わって来た?
でも今はその経緯はどうでもいい。聞きたいのは中島の独特の制度さ。
「それで大穴とは? 」
「はい。穴を支配する者。この中島のトップです。
中島には七つの洞窟があります。その一つ一つに穴が。
この第一洞窟から始まったとも。オヤスさんから何も聞いてないんですか? 」
どうやらもう知ってるものだとばかり思っていたそう。
オヤスは自分の言いたいことしか言わずにすぐ第一洞窟へ。
だから私が穴制度など知るはずがない。
「ちょっと待って。穴制度についてもう少し詳しく頼む」
とても大事な話なので一言も漏らさずに頭に叩き込む。
こうして穴制度とこの島の歴史も僅かながら理解した。
大変興味深い。これはいい体験をしたな。
おっと…… いけない。またやってしまった。
これでは本当にフィールドワークではないか。
私はここに島の財宝を探しに来てる。そこは間違えないようにしないと。
「それで大穴は現在どちらに? 」
グルグルと同じようなところを回ってる気がする。
暗くてよく分からないが夜はただの気分転換に夜風に当たるだけで充分さ。
迷って化け物にでも出くわしたらシャレにならないからな。
「大穴? それは七つある洞窟のどこかにおられます。
そこがどこかはよその方には教えられない決まり。
それと中島の人たちは物凄くシャイで消極的なんです。
大穴も自分が大穴であるとは決して言いません。それどころか他の穴さえ不明。
いいですか。無理して穴や大穴を探そうとなさらないでください」
ココの話はまだ信じられないがそれでも確認する手段がある。
明日穴を探し出し直接聞く。そうすればココがからかってるのか本気か判明する。
いやご主人様に嘘を教えるはずないか。
それでもあまりにもふざけた感じがするから。
「それから…… ここ中島にも天女様の生まれ変わりがいると」
穴・大穴制度ついでに聞いてみる。これなら自然だからココも口が滑るだろう。
そう私はこの島に天女の生まれ変わりを探しに来たのだ。
財宝へとつながる天女。それにつながるだろう天女の生まれ変わり探し。
「ええ…… その通りです。ただシャイですから。自ら名乗られるのは稀かと」
どうやら思ったよりも簡単ではないらしい。これは長くなりそうだぞ。
こうして中島二日目へ突入。
まずは第二洞窟を探すところから始めよう。
この旅も間もなく中盤だろうか? さすがに序盤ってことはないよな?
中島に渡り間もなく今日中にでも島の全容が見えてくるはずだ。
もし私の仮説が正しければ…… いやよそう。
ただの自分に都合のいい話でしかない。
これは仮説などではない。あり得ないことをどうにかありそうに見せてるだけ。
それは冒険者とは呼べないない。ただの情けない男さ。
それにしても暑かった。いくら洞窟内でも暑いものは暑い。
冷え冷えするような理想の洞窟ではないのだ。
だからナガレも汗だらけ。ダイボだって無口だが暑さで今にも泣き出しそう。
ココに起こされ朝飯。中身が何かさえ聞かずに無心で食う。
大丈夫。まずかろうが全部食べることが大事。昨夜の宴でそれを悟っている。
ううう…… もう限界。トイレを我慢できるレベルにない。
この島にはトイレなど当然無い訳で中でやると臭くて堪らない。
だから外でやってその都度埋めるようにしてるのだとか。
おしっこは飲み水の代わりにもなるから捨てるなと。
いや捨てるなとか捨てないとかじゃないと思うけどな。
それだけこの辺りは深刻な水不足に陥っている。
海水は汚染され泉はあるが往復するには遠すぎると。
「ナガレさん…… 」
「いや待ってくれ! 冗談だろう? 」
だが当然首を振る。彼女は本気だ。
だからってハイどうぞとはならない。気持ちの問題。とにかく受け入れ難い。
これではいつまで経っても島の者から受け入れられない。
一昨日までの前島での生活が懐かしい。輝いてさえいた気がする。
ここ中島は文化レベルが一気に落ちた印象。
フィールドワークではこんな風になることもたまにあった。
貧しい国ではそれはあるがでも野菜にせよ果物にせよ魚にせよ豊富な食糧。
その料理はくせがあるものの食べれないこともない。
だがここにはよくて虫だから。
もし肉が食いたいと我がままを言ったらどうなるだろう?
客人のためにと今まで飼っていた家畜ではなく……
いややめよう。これ以上はダメだ。想像してはいけない。
不意にニュウニュウを拝むよりも何倍も危ない。
無闇に実験するのはあまりにも危険過ぎる。
「では参りましょう」
ココも暑さに参ったのか喉が渇いたと。まだまだ子供さ。
「どうしただらしないぞ? 」
「それは朝一番のですよね? 」
「ああ捨てて来てくれ。さすがに邪魔だからな」
紙コップに入ったおしっこの処分を任せる。
こんなことさせていいのか若干気になるが暑いからな。
「では遠慮なく頂きます」
そう言うと何のためらいもなく飲んでしまった。
いや水ぐらいその辺にあるだろう? ある訳ない?
もうココを見れない。いやらしい想像をしてしまう。
だって今さっきのあれだぜ? どうしたって意識しちまうだろう?
それにココはまるでご主人様のように慕ってくれるしな。
これが普通? この島では常識なのか?
どうやら我々は極限状態にいるらしい。
続く




