↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/99

親愛のキス

中島・第一洞窟。

よそ者を極端に嫌ってるはずの彼らがなぜか受け入れ歓迎さえしてくれる。

ただ臆病でよそ者を排除しようとしていただけで実際は皆いい人なのかもな。


お食事は質素なものでその辺の虫だ。

砂地に隠れている虫と掘って出て来た幼虫。

それから洞窟内にいるウジ虫等をシンプルに塩だけで。

大丈夫。丹念に火を通すので美味しいかまずいかは別として食える。

それでも島の者でないと下痢は間違いないと。それで済むならまだマシらしい。


おっとさすがにこれで終わりな訳ないか。

ノロノロ歩いていたカニの仲間を焼く。

五匹ほどを全員で分ける。うんシンプルに辛いし苦しい。

これがサバイバル生活だろう。はっきり言って食に期待するのはよそう。

疲れたので部屋に戻る。


くそ…… これが毎日ならもう三日で限界だぞ。

ここの者はなぜか海の恵みにありつこうとしない。

カニだって海ではなく泉から調達したと言うし。

汚染されていると言うのは満更嘘でもないようだ。

だとしても…… こんな生活耐えられるか。

だがもうそれしかない。ここで生きていくには他に方法がない。


前島に降り立った時は閉じ込められたと最初は思った。

このまま何もないところでずっと暮らすとネガティブになったもの。

訪ねておいてそんな被害妄想に陥るのもどうかと思うが事実そうだった。

しかし中島に来て前島がどれだけ素晴らしい島か分かった。

前島はまだ快適に暮らせる。夢も希望もあった。だが今はどうだろう?

新たな生まれ変わりを見つけ財宝を発掘する夢は確かにある。

しかしこの島に閉じ込められたらお終い。

いくら生まれ変わりがいても財宝があるとは限らない。

そもそも海が汚染されて漁船さえ出せない場所。

それに加え監視だって緩いとはいえあるはず。

もしこのままここに閉じ込められたら? その恐怖から逃れられない。

ついに自分から蟻地獄に嵌った気がする。

それはあまりに彼らにとって失礼な話だがあり得ないことではない。

ここからどう逃げどう進んで行くか不明。


「ナガレさん…… 」

「我慢してくれ。これもこの島の真実だ。南の島がすべて楽園のはずないさ。

君はフィールドワークで嫌と言うほど経験したはずだ」

ナガレはようやく解放されたのか饒舌だ。

でも彼にも疲れが見える。もしかしたら私よりもナガレの方が大変かも。

こんな何もないところに再び足を踏み入れたのだから。

悪夢が蘇ってもおかしくない。

この後のことを聞けたらいいがそれは許されてない。

悲しいことにナガレたちから情報を得ることはないだろう。


コンコン

コンコン

ココが姿を見せる。少し外で話しませんかと積極的だ。

それは構わないがその格好だけでも何とかしてもらえたら。

目の毒と言うか耐えられそうにない。

確かに下はしっかりガードされてるように見える。

それでもついて行くとどうしてもお尻が見える訳で。

振り向くとニュウニュウが見えてしまう仕組み。

見ないようにしても見えてしまう。一体私はこの島で何をしてるんだろう?

もうすべてがどうでもよくなる。


「明日からの案内役を正式に任されました。どうぞよろしくお願いします」

そう言って丁寧なあいさつ。てっきりオヤスが引き続きやるものだとばかり。

当然ココの方が何かとやりやすいのだが。

「へえ…… 君ってどこか特別なの? 」

「そんなことありません。手が空いてるだけです」

オヤスよりもずっと丁寧で親しみやすい。それだけではなくかわいい。


あまり離れないでと注意する。

詳しく聞くとどうやらこの辺りには夜行性のバリバリが出ると言う。

「バリバリって何? 」

「正体不明の化け物です。島の人が何人か攫われました」

ココは遠くの空を見る。どうやら化け物に島民は喰われたのだろう。

どうであれ骨は残る訳で。いや骨ごとか? あまり想像はしたくない。

まさかあの部屋に安置されていた者もバリバリに食われたのか?


「なぜバリバリと? 」

興味があるので聞きたいけど怖いから本当は聞きたくない。

「そんな風に人間を食べてしまうんです」

本当かは分からないが恐ろしい話を聞いてしまった。

これは今夜は眠れないかもしれないな。


「あの一ついいですか? 」

そう言うといきなりキスをする。どう言うことだ?

これってもしかして私の夢なのか?

「ココ? 」

「これは一種の愛情表現です。ご主人様に忠誠を誓う」

そんな風におかしなことばかり言う。


ココはこうしてこの私のしもべとなった。いや言い過ぎか。

ただお金で雇われただけの契約に過ぎない。

ココが我々を案内してその報酬を受け取る。

どこでも誰でもやっていること。チップ制でもないので難しいが。


「もしかしてこっちからもキスすべきかな? 」

情けないことに確認を取る。だがご自由にどうぞとだけ。

いやさすがに悪いよな。ココにもミコトにも。

「ご主人様どうされました? 」

まずい。余計興奮してきたぞ。抑えていたものが解放されそう。


「よろしくココ」

そう言って頬に軽くキス。

しかしココは唇にお願いしますと。

仕方なくやり直してきちんとキスをする。

これでココは完全に支配下に置いた。

まるで私の隠れた願望を満たすかのようでおかしな気分だ。


ココに夜の中島を案内してもらう。

逃げられても困るし逸れられてもダメだからと強引に手を繋ぐ。

いや別にそこまでしなくてもよくないか?

我々はこの島に流された罪人でも悪人でもないよ。

「正直に答えてくれココ。君は指示を受けてないか? 」

どうしても気になる。別にそれならそれでいい。

違ったら違った方がいいに決まってる。

ただ嘘を吐くのだけはやめて欲しい。

「どうしたんですか? ココを疑ってるんですか? 」

ココは純粋だからな。どうしてもこっちが悪者になる。


ふう…… 夜になりココのあれをもう見なくて済むのがありがたい。

だがその中で夜二人っきりになるのはどうだ?

私は紳士だから…… いやまだ傷が癒えてないから消極的だが他の奴なら……


「ココ。お願いだから答えて欲しい! 命令だ! 」

こう言われたらココも黙ってはいられない。

「はい。穴に言われてます。これは大穴からの指示だとも聞かされてます」

素直に教えてくれた。これで少しは信用できるか。

「穴って? 大穴ってのもよく分からない」

疑問を口にする。だが穴は穴だとしか言わない。それが島の者には常識だから。

しかし我々よそ者はその仕組みも用語も分からないのだ。

常識でもなければそれがないと生きていけない訳でもない。

ただのこの中島限定のお話。我々には本来関係ないもの。


                 続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。