ニュウニュウ(たわわ)凝視禁止!
中島・第一洞窟。
入口付近で大勢の島民の出迎えを受ける。
皆笑顔でどうやら噂で聞いた凶暴などと言うことはなさそうだ。
前島南地区でのことが頭にあるからどうしても慎重に構えざるを得ない。
ただ一つ気になることが。前島とも本土とも違うスタイル。
まさか冗談なのか? それともこの出迎え方が流行り? それとも伝統?
頭が混乱するばかり。
「よっと。では遠慮なく」
そう言うとオヤスが何のためらいもなく服を脱ぐ。
うわ…… どう言うことだ? なぜオヤスはそんなおかしな歓迎の仕方をする?
彼女だけではない。これは一体全体どう言うことだ?
「いや疲れた疲れた。案内役も楽じゃない」
そう言うと前を晒すオヤス。いやよく見れば老若男女問わず服を着てない。
彼女のあれは案内役の制服みたいなものだそう。
最初からだと驚かれるし島の外では服を着ないとならないから。
そんな理由でまともな格好をしていたよう。
結局のところ洞窟は家でマナーを守る必要がないからと脱いだらしい。
でも少しはこっちのことも考えてくれないと。
ここ中島は独特だ。人は島の内と外で完全に分けている。
前島に比べてよそ者を歓迎せず存在を認めようとしないかのよう。
その一つとして格好が挙げられる。
マナーを守ったフォーマルな格好は島の外の者に対して。
それ以外の時は上は何も身につけず下は申し訳程度にヤシの葉等で隠している。
前はそれでいいが後ろはほぼ丸見え状態。見なければいいがオヤスは後ろを向く。
ただ結婚前の女性は例外で布をひもで結んだもの。
よくバレエなどで着用するあれに近い。
それを考えるとオヤスは結婚してもう成人しているのだろう。
これだけでも違いが分かる。
「悪いね。ここはもう我が家。今日はここで泊って行ってよ。
そう言う予定になってるからさ」
どうやら正気らしい。しかしいきなりだからもう言葉も出ない。
ナガレたちを見るがただ首を振るだけ。これではお供の意味がない。
「そうだ。明日は三か所回る予定さ。ではこれで。寛いでよっと」
役目を終えたオヤスは寝転がる。大胆で裏表がない。
当然だよな。何も身に着けてないようなものだからな。
「あのオヤスさん…… 」
ダメだ。もう反応しない。
目をつぶって声を抑えては反応するはずもない。
まああいいか。こっちにはナガレたちがいるんだし。
「どうぞ皆さんこちらに」
そう声を掛けてくれたのはまだ幼い少女。下が布だから分かる。
「君名前は? いくつ? かわいいね」
まるで最低なエロ親父だがこれはもう仕方ない。
詳しい話を聞かないとならないから。言葉を選んでられない。
じっと見ないようにする。特に未成年だとあらぬ疑いが掛かる。
一体我々はどんな世界に迷い込んだのだろう?
あのナガレたちも飼いならされてるのか紳士的で大人しい。
島に慣れないのもあるだろうがここまでだと島での役割りがあるようで怖い。
なるべく後ろにも前にならずに横で案内してもらう。それでも意識するとダメだ。
ふう…… 汗が止まらない。それだけでなく下半身も正直だ。
おっと…… 何を考えてる? 違うぞ。
私はこの島に財宝を探しに来たんだ。たかが島娘の色香に惑わされて堪るか。
ここは深呼吸。そして笑顔を無理やり作って対応。
彼女の名前はココ。どうやら我々よそ者に興味津々のよう。
まるでミコトのよう……
まずい。つい思い出してしまった。
あれほど思い出さないよう思い出さないようしてたのにどうやら限界らしい。
「どうしたんですか涙? 」
ココは突然の涙に驚く。確かに変だよな。
「いや…… 昔のことを少し思い出したのさ」
格好をつけてココを見ると笑うからドキッとなって視線を下げる。
そうすると見えてしまう。あれほど見ないようにしていたのに。
チラッとだけにしようと思っていたのにまだ修行が足りない。
どうやら女性には分かるのだとか。本当かな?
この中島ではこれが当たり前だと。
見ないと頑張ったところで一日も持たずに理性を失うだろう。
そうではなくありのままを受け入れて褒めてあげるのがいい。
本当にいいのか若干疑問ではあるが。
「かわいいね。そのお…… 」
ダメだ。何て言えばいいのか分からない。自信がなくなる。
仕方なくナガレを見るがやはりただ首を振るだけ。
だから役に立ってないだろうが。
「ああこれですか? ニュウニュウですね」
そんな風に簡単に教えてくれた。でも少しは恥ずかしがってくれよ。
「ニュウニュウ? 」
と言いながらつい凝視してしまう。
これでも私は一応研究者の端くれなので対象物をどうしても観察してしまう。
職業病って奴だな。ただの助手だけどね。
ナガレを再び見るが今度は首を縦に。それじゃ分からないだろう?
どうして彼らはまるで声を失ったかのように黙るんだ。
本当にどうしてしまったんだろう?
「ニュウニュウ? 」
言ってて恥ずかしいから早くしてくれ。
もちろんこんなおかしな叫びは当然届かない。
「ハイ…… ニュウニュウです。それが何か? 」
この中島では当たり前で常識らしい。
フィールドワークではこのような村に行った経験がある。
だからって受け入れ難い。慣れるまでは苦労しそうだ。
やっぱりただの悪ふざけに思えるのはまだ人間ができてない証拠か?
「嘘を教えてない? からかってない? 」
やっぱりどうしても信用できない。何がニュウニュウだよ。絶対にふざけてる。
「もうよく見てお客さん」
だから見てはダメなんだって。見たら終わってしまう。
理性が吹っ飛んだらどうするんだ?
「これがニュウニュウ? 」
「だからそうですよ。お客さん見たことないの? 」
その言い方だと博士が連れて行ってくれた違う世界。
だからなるべくなら名前で言って欲しいな。
そう言えばまだ自己紹介をしてなかったっけ。
オヤスには本名言ったんだよな。するとここで偽名を使う意味はないか。
「分かりました。ニュウニュウはその胸のことですね」
どうにかオブラートに包む。
ここ中島ではニュウニュウは恥ずかしいことではないようだ。
凝視したって問題ないことも分かった。
だが自分を保つためにもニュウニュウを凝視するのはやめよう。
続く




