中島へ
危うく串刺しされ掛けたが救世主・ナガレとダイボの活躍でどうにか難を逃れた。
そのまま二人の後について島脱出を図る。
「大丈夫。アキラ君に心配されなくても俺たちは島長を裏切ったりしてない」
「そう。俺もナガレさんも穏健派で島には島長を慕って穏健派が多数を占めてる。
ただそんな彼らも一度よそ者が問題を起こせば一気に反対派に回る。
そこまでの義理はないからよ。我々はあくまで島長を慕っての行動さ」
さすがはダイボだ。ただ自分の立場を表明しただけなのに迫力がある。
仲間をまとめるカリスマ性と体による威圧感。何者も寄せ付けない感じ。
「そうやってアキラ君は島長の音頭で穏健派の元でお世話することに。
それがミコト一家であり区長だったりする」
大体のことは分かった。では今倒れてる男は反対派の命で動いてたことになる。
私を人間扱いしてないと思ってたんだよな。
せっかくなら逃げずに止めを刺せばいいのに。
いやそれでは我々は犯罪者。殺人鬼になるのか。
しかし怒りに任せれば問題ないのでは?
おっと…… つい感情的になっているな。ここは冷静に従うとしよう。
恐らく彼らの言う通り逃げるのがベストだろう。相手は敵でも人間さ。
でもするとおかしいぞ。確か草太朗は村長に連絡を取ったはず。
それとも代わりの者が気を回して島長の耳に入れる前に処分しようとしたのか。
島のことは私にはまだ分からないことが多い。
ナガレだって表面上は知っていても詳しくは知らないのではないか。
地域に入り込めばそこのルールに縛られるのが当然。
私も穏便に済ますためになるべく目立たないようにしていた。
「いいか! 島長はもう庇え切れない。体調も悪く威光も届かなくなっている。
そんな時にミコトを突き落とす暴挙に出るんだから開いた口が塞がらないよ。
島長は相当心を痛められてる様子」
ナガレはズバッと指摘する。しかしその認識は間違ってるぞ。
なぜミコトを突き落とさないといけない?
恋人のミコトに危害を加えるはずがない。
「ナガレさん…… 」
「いいから今は大人しく後について来るんだ。いいね? 」
ナガレはそれ以上は口をつぐむ。ダイボも遠くの空を見つけるのみ。
仕方ない。言い訳はまた後ですればいいだろう。今はとにかく逃げないと。
奴が意識を取り戻して追手でも放たれたら厄介だ。
はあはあ
はあはあ
息を切らしどうにか船着場に到着。と言っても初日に降り立った場所とは違う。
南地区と前島地区の間ぐらいに位置する。
まさかこんなところから船が出てると思いもしなかった。
こうして中島に。
都内某所・研究所近くの総合病院。
「初診ですか? 紹介状がない方は一律一万円の初診料を頂きます」
「ははは…… ただの見舞いさ。二階だったよな? 」
「はい。ですが家族以外の方はご遠慮願っています」
「あーん? 何だって? 聞こえねえな! 」
威圧的な態度の男。マスクもせずサングラスをして受付を困らせる。
「ちょっとそこ勝手に行かないで! 本当に警察呼びますよ! 」
毅然とした態度の病院側。明らかな脅しには屈せず最終的には警察が出動する。
判断はその都度柔軟に。しかしもう限界だろう。
男の後ろには似たような格好の男たち。
お見舞いには相応しくない上にただのサラリーマンにも見えない。
どう考えてもまともじゃない。
「うるせい! 勝手にさせてもらうぜ」
そう言って無謀にも立ち向かう老ガードマンを突き飛ばし看護師を振り払う。
これでもう何のためらいもなく警察が呼ばれることになる。
奴らもその辺は分かり切っておりすぐに入院病棟のある二階へ。
しかし当然セキュリティーロックされて数字を打ち込まないと次には進めない。
それほど防犯意識は徹底してるが当然人間のやることに完璧はない。
看護師を脅し無理やり開錠しようとする暴挙に出る。
これは強要でありもはや安全であるはずの病院としての機能を喪失。非常事態だ。
まだ凶器は見えないが恐らく少なくても一人は携帯していると見て間違いない。
現在危機的状況。コードシルバーと言える。
それにしてもこいつらの目的とは一体何だろうか?
「おい警察が来たら厄介だ。急いで取り掛かるぞ! 」
こうして簡単に防衛ラインが突破される。しかし警察は早くても十分は掛かる。
急がなければとんでもない事態になるぞ。
脱出。
「中島に向かうには目と耳を塞いでもらう。大丈夫。俺たちがサポートするんで」
目の前には小型ボートが。恐らく行きに乗ったボートよりも一回り小さいサイズ。
それに私を含めて四人が乗る。多少苦しいが我慢しろと。
「ちょっと待って! 目は分かるが耳まで? どうやって歩けばいいんだ? 」
ナガレもダイボも文句を言わずに今すぐにしろと言うのみ。
ボートに乗るまでは普通にしていても問題ないはず。それなのに……
「悪いねアキラ君。しかしこれも島長の命令だから。
従わなければ中島には行かせられないんだ」
ナガレは面倒臭くなって適当なことを言ってないか?
「従うってナガレさん! でもボートまではいいでしょう? 関係ないと思うな」
一体私の何を恐れてここから目も耳も隠す必要があるんだ。
常識に照らし合わせてもやり過ぎ。ボートを漕ぎだしてからでいいのに……
もしかしたらどちらへ漕ぎだしたかまで分かってもだめなのか?
しかしそれは考え過ぎだしあまりに用意周到。厳重警戒レベルを遥かに超えてる。
これでは罪人扱いと何ら変わらない。
「頼むよアキラ君。今は一刻も早くここを脱出しよう。
そのためには我がまま言わない」
「そうだぜ。あんたのためさ」
ナガレもダイボもすっかり島人間。私を全然信用してないみたいで悲しくなる。
「だったら早く運んでくれ! 重いだろうけどな」
こうして厳重警戒の元でボートまで行きようやく出発に漕ぎつけた。
まったくどこまで臆病で慎重なんだよ。私を信用してない証拠。
あんな狭いボートに乱雑に投げ込まれ落とされたり転覆でもしたらどうする気だ?
放り込まれたなと思ったららあっと言う間に船が動き出す振動を感じた。
そう。耳が使えなくても目が見えなくてもきちんと感じ取ることができるのさ。
続く




