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絶望

ミコトが転落。実際はその場面は見てない。音だけ。

叫び声がして姿を消してしまった。

私のせいで崖から落ちた。これは紛れもない事実。

どうしよう? どうすればいいんだ?

二人は今日にでも結ばれるはずだったのに。それがもう叶わない。

辛い…… 辛すぎるよ。どうしてこうなったのか自分ではもうよく分からない。


あと少しだった。写真を撮り終え心の整理ついたら一気に告白するつもりだった。

ミコトもきっと受け入れてくれただろう。

間もなく二人には幸福な未来が訪れるはずだったんだ。

しかし現実は幸せの絶頂からのいきなりの転落。一気に絶望の淵に追い込まれた。


こうなることは多少予想はしていた。決して結ばれないって。

私たちは元々棲む世界も違う。相手は天女様の生まれ変わり。

それに対してこっちはただの博士の助手。そもそも初めから無理があった。

ミコトに黙って財宝発掘しようともしていた。それに博士の件もある。

博士を転落させた罪は消えない。そんな状況では決して幸せにはなれない。

不幸が訪れるのは当たり前だ。でもだからって私ではなくなぜミコトに起きる?

大切な者を失うほど私は罪深いのだろうか?

博士の件もわざとでなく誤って突き落とした。財宝発掘だって当初の目的な訳で。

それなのになぜか呪われてるかのように悲劇が降り掛かる。


おい……

ダメだ。声が出ない。震えてパクパクと口を動かすだけで声にならない。

急いで崖下を覗く。当然見えるはずないがそれでもどうにか見ようとする。

そうすると頭が重くなり危うく転落しそうになる。これでは二の舞だ。

尻餅をついて後ずさりして落下現場から逃れる。

落下したばかりだから柵は当然壊れており手をかけるのも危険。

柵と言っても頑丈ではない。思いっきり力を込めれば音を立て最後には外れ落下。

恐らくミコトは体を預けたことで柵に負荷が掛かり過ぎた。

それに巻き込まれる形で。

想像はしたくないがここから落ちれば即死。仮に助かっても助けようがない。

衰弱して行くのをここから見守るしかない。どっちみち悲惨でしかない。


どうする? どうすればいいんだ? 一体私はどうすればいいんだ?

誰か教えてくれ! 博士! ナガレ! 島長! 天女様! 

ミコトを失ったショックもあり立っていられない。

腰も抜けてもうその場でうずくまるしかない。

ああ私が一体何をしたんだ? ミコトが何をしたんだ? 

こんな仕打ちを受けるためにここに来たのではない。


クソ! 私が代わりに…… いや彼女の名誉ためにもそんな偽善はダメだ。

私は彼女を利用し天女伝説や財宝に迫ろうとしていたじゃないか。

でもここで悲しんでいても仕方がない。急いで知らせなくては。

しかし誰に? 島長もナガレも南地区だ。いるのは区長と紬さんぐらい。

あの夫婦には睨まれてるしな…… でも今はそんなこと言ってられないか。

急いで紬さんに伝えなければ。ミコト救出は一人では到底不可能。

考えてる暇はない。急いで応援を呼ぶべきだろう。


最東端を離れて紬の家に駆けこむ。

はあはあ

はあはあ

「どうしたんですかアキラさん? 

今朝のこと気にしてるんですか? 大丈夫……」

「そうじゃない。そうじゃないんだ! 」

「プニュっとほら力を抜いて」

そんな風に意味不明な紬にイライラしないようどうにか抑える。

だが限界は近い。今はふざけてる時ではない。

「緊急事態です! ご主人は? 」

「はい。水やりをしてると思いますよ」

植物の専門家。この時間は手入れと見回りの時間だとか。

「至急旦那さんを呼んで来て下さい! 助けが必要なんです! 」

こんなこと言えた義理じゃないが無理なお願いをする。緊急事態だと言い続ける。

そうすればのほほんとした彼女だって理解してくれるだろう。


紬が急いで主人を呼んできた。

「どうしましたアキラさん? 何かトラブルでも? 」

血相を変えた主人。彼から見たら私はもっと酷いんだろうな。

もはや人間の顔をしてるかも分かったものじゃない。それほどのこと。

笑顔も取り繕えずに乱暴な物言いになってしまう。緊急事態につき仕方ないこと。

「早く! いいから早く! 」

「だからどうしたと言うんです? 」

「それが…… それがミコトが…… 」

「ミコトさんがどうしたんです? それだけでは分からない! 」

「だからいなくなった…… 」

「突然失踪したと? 」

「違うんです! 目の前から消えたんです! 」

「結局同じでしょう? 」

「だから違う! 目の前で消えた。崖から消えた。恐らく落下したんだと……」


ついに決心する。これで私はもう言い逃れできない。

連れが落ちていながら助けもせず逃げ帰って来たことになる。

最低だよ。ミコトを見放し見捨てた最低男。それがこの私の正体だ。

償えるなら今すぐに償いたい。彼女を復活させたい。

でもそれが無理だと言うのはよく分かっている。

覆水盆に返らずだ。


前島地区を案内してくれたほぼ恋人のミコトが姿を消した。

当然すべて知っている。あの崖から落ちたのだろう。

あれほど気をつけるように言っていたのに口だけ。ただ騒いで楽しんでいた。

ミコトも何も気づかずに崖から真っ逆さま。

恐らくあの木の杭が腐って割れたのだろう。その残骸の一部が落ちずに留まった。

不幸な事故。私のせいではないが責任は重大。

だからって今更どうやっても助けられない。諦めて戻る以外どうにもならない。


「それは…… 分かりました。すぐに島長に連絡を取ります」

どうやらここでは問題が起きたらまず初めに島長に連絡して相談する。

それが徹底されている。でもおかしいな。ここには立派な区長がいるはずだが。

それをすっ飛ばして島長に報告するとはここの区長はただのお飾りか?

「ではいいと言うまでこの家を出ないこと。分かりましたね? 」

こうして軟禁状態で一日を過ごす。


どうやら島長が来ることはなく使いが来るよう。

それまでの間はじっとしてろと。私だってもうどこにも行こうとは思わない。

そんな気持ちも体力も当然ない。できるだけ早くミコトを何とかしたい。

ただそれだけだ。でもきっと難しいんだろうな。


                続く

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