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消えたミコト

ミハマ島の一つである前島の最東端に二人でやって来た。

島唯一の観光スポット。

いつの間にかとてもいい雰囲気に。

「どうしたのアキラ? 」

笑顔のミコト。いっそのことこのまま自然なミコトをカメラに収めるか。

でももう少しだけでも…… おかしな見栄とこだわりでつい熱中してしまう。


フィールドワークでは被写体が博士だから適当だった。

もちろん現地の子供たちも。だけど彼らは撮ってもらうことが喜びだからな。

こだわりなどない。博士の場合は確認しないし。

ぼやけたり反射してなければいい。仮に失敗しても予備に何枚か撮ればいいだけ。

楽なものだ。こだわりが出るとおかしな感じになり逆に失敗することにも。

どうしたんだろう? 何だか凄く緊張している。それが解けることはない。


「もう少しだけでも下がって。ゆっくり一歩」

手まで震えて来たぞ。まさか私は変な期待をしてないか?

ここまで来たら二人はもう完全な恋人。

今までそうなったらいいなとだけ…… はっきりとした関係ではなかった。

しかし今日嫉妬に狂ったミコトがキスを求め私は受け入れた。

これはもう進展したと見ていいだろう。


もちろん当初の目的は忘れてない。財宝発見がすべてだ。

しかしミコトを仲間に加えるのは構わない。ミコトだって理解してくれるさ。

だから今こそ彼女に告白するべきではないのか?

あそこまでされてこっちから何もアクション起こさなければ愛想を尽かされるぞ。

いくら天女の生まれ変わりで純粋な島娘でもそこまで慈悲深くも我慢強くもない。

そうちょうど告白向きのスポットでもある訳だし。

まるで二人の背中を押すかのように。そう…… 無理やりね。

今しないでいつすると言うんだ? もうお膳立ては済んでる。

きっとミコトだってそれを望んでいるはず。

それに彼女だってこの崖の恐怖でドキドキしてる違いない。

吊り橋効果があるはずだから普段よりも成功の可能性は高いさ。


「どうしたのアキラ? 」

「ごめんごめん。見惚れていたんだ。もっと大きくほらもう一歩」

ついベストアングルが気になり急かしてしまう。

もうどうでもいいはずなのに変なこだわりがある。

「でも…… 何だかさっきからアキラおかしいよ」

「いいからほら早く! 」

「もうこれが限界だって! 」

「大丈夫。気にせずギリギリまで行こう。そうそうその柵まで」

こうして笑いながらプロのカメラマンごっこを続ける。

ミコトも呆れつつも付き合ってくれる。和やかな雰囲気。

このままずっと続けばいいのに。だがそう簡単ではないのが現実。

バカことを続けた結果どうなるかと言うと……


最東端は島の者にも人気のスポット。

観光客を呼ぶためにミビ茶やマスコット同様観光の目玉にしたかったらしい。

注目を浴びれば世界中から人が押し寄せて来るだろう。

だが結局それがうまく行かずに移住者も観光客も僅か。

元々閉鎖的な島に一時的な起死回生策だからすぐにとん挫。

島は静けさを取り戻した。


やはり一番の要因は飛行機が使えないこと。

島の周りは一年の半分以上がモヤが掛かった状態。

その付近の海域も含め晴れるようには思えない。

そうやって侵略者から守られた歴史があるものだからとにかく観光に不向き。

極めつけは船の便も絶望的に悪いこと。

飛行機もヘリも無理で近くの寂れた山奥の港町からの船以外受け入れてない。

それも一週間に一回だからな。

結局その場の思いつきでの観光政策は失敗。大失敗に終わったと言っていい。

この時の責任を取ってないと言う反対勢力もいて島長も安泰ではないようだ。

すべては学者崩れのナガレの安易な提案に乗っかってしまったのが運の尽き。

そんな風にも噂されている。

それ以降ナガレは籠るように北地区で留まったとされるが実際よく分かってない。


観光客用に用意されたのがこの最東端の地。

ここは最初の移住者が降り立った場所と言われている。

だから島民からも人気がある。この写真は彼らを含めたも観光客用のサービス。

安全対策もしっかりされており崖周りを補強し転落事故が起きないようなってる。

ただ力を思いっきり掛ければ脆く崩れ落ちるだろう。

だから危険を知らせる看板もあるし注意事項もきちんと載せている。


これを守る限り危険ないがふざけて背中を預けそのまま落下しそうになった例も。

ミシミシと言う音がしたので直前で回避できたそう。

もし気が付かずに力を加え続けていたら…… 楽しい旅行が悲劇に早変わりする。

当然島民はこの手のことには敏感だからまずあり得ないが。

ただ他所者はどうか? ふざけて落下しない保証はない。


「ではそこで何枚か。うわ眩しい! 」

突然の強い日差しに目が眩みそうになる。

「大丈夫アキラ…… 」

「ははは…… 問題ない。そこでもう少し頼む。きっと一分もすれば収まるさ」

サングラスを用意しておけばよかった。

でも格好をつけてるみたいで嫌なんだよな。

ただの田舎者とも観光でワクワクしてる旅行初心者とも思われたくない。

「ふふふ…… 早くしてよ」


一分が長く感じられる。見えるようになったらミコトをたくさん撮りたい。

一分待つなんてこれではカップラーメンさ。実際は三分が圧倒的だけど。

もう待ち遠しくて待ち遠しくてどうにもならない。でも焦らないぞ。

ここはゆっくり余裕を持って。


きゃああ!

目が慣れどうにか開けられそうになった瞬間叫び声がした。

まさか…… いやあり得ない。そんなはず……

目が完全に開くようになってすぐにミコトを探すがどこにも見当たらない。

隠れるはずもないし隠れるところだってここには……


何度も確認するがあるのは壊れた転落防止柵の一部。

これはどう言うことだ? まさかミコトは落下したのか?

急いで崖の下を覗く。しかし思った以上の高さに足が竦み震えが止まらない。

ここから落ちれば跡形もなくバラバラだ。人間などただの塊でしかない。

嘘だろう? 嘘だ……


ミコトが落下した。姿を消してしまった。それも私のせいで崖から落下した。

それは紛れもない事実。どうしよう…… どうすればいいんだ!


                 続く

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